【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

参議院民主党、会期末混乱自ら修復の健全野党ぶり ねじれ解消後、初法律2本あす成立、ともに民主党委員長

2013年11月12日 16時54分53秒 | 第185臨時国会(2013年10~12月)秘密保護法

[画像]自ら農林水産委員会に出席する郡司彰・参議院民主党会長(左)、質疑者は徳永エリ党広報委員長代理=北海道、2013年11月12日(火)、参議院インターネット審議中継から。

 通常国会会期末に法案が参議院で時間切れで廃案になることは以前からありました。

 竹中治堅さんの『参議院とは何か 1947~2010』の110ページの「池田勇人と重宗雄三」によると、半世紀前からこういうことがあり、池田勇人・総理(自民党総裁)と参議院社会党会長の間で、重宗雄三・参議院自民党会長が、会期末の重要法案の処理をめぐって、池田総理総裁をしのぐ権力をみせつける姿が描かれています。

 1961年の第38回通常国会の会期末が近づいた5月2日、池田総裁は重宗会長とじかに会い、「公職選挙法改正法案は成立させてほしい」と懇願。この会談について、重宗会長は「池田総理総裁からは『産業投資特別会計法改正法案を廃案にしてもいい』という話があった」そうです。そして、重宗会長は4日後に参議院社会党の千葉信会長と会い、特会法案は廃案にする(野党に花を持たせる)代わりに公選法改正法案を成立させることで合意。ところが、池田総理総裁は、5月8日の両院議員総会で同僚から廃案に関してつるし上げをくらい、「きょうは池田内閣で最も重要な日だ」「特会法案を廃案にしてほしい、といった覚えはない」との趣旨のことを漏らしたそうです。

 半世紀前から、与党の総裁・代表が、自分の党の参議院議員会長に悩まされることがずっと日本の国会では続いてきています。ところが、参議院を取材している記者が少ないので、報道が会期末に混乱し、永田町経験者までが誤った情報に振り回されることになります。たとえばことしの6月なら「水循環法案と雨水利用法案も、審議未了で廃案になってしまった」との情報がありますが、この2法案は、趣旨説明すらされておらず、会期末に成立させろ、というのは無理な話。これを民主党代表とか、新聞社キャップとか、あげくのはては、参議院の中堅議員まで把握していないのですから、一部の会長・幹事長・国対委員長のいいようになったまま、6年間、12年間で、議員の大半が入れ替わるのが参議院です。というわけで、私ももっといろいろ知っていたのに、そのときの情報はほとんどこのブログに書かずに、体力の温存のために傍観していたことを、白状しましょう。

 とはいえ、野田佳彦代表・総理に対して、2012年2月25日以降の、公職選挙法改正を許さず、伝家の宝刀(総理の解散権)を抜けない状況で、消費税政局を迎えさせた、輿石東・前会長には、この一点を生きている間に謝罪してほしいものです。

 過去のことはいいのです。これからです。

 郡司彰会長のもと、参議院民主党(民主党・新緑風会)が責任野党としてがんばってくる気配です。計算上は、2019年までの第2会派は確定的なので、立法能力がある議員としてはやりがいのあるポジションだと考えます。

 まず、自民党に委員長をとられて、参議院厚生労働委員会では、政府が今国会に出しなおした「生活保護法改正法案」(185閣法5号)と「生活困窮者自立支援法案」)(185閣法6号)が原案通り賛成多数(自民党、民主党、公明党、維新、みんな)で可決しました=参議院先議。

 それぞれに附帯決議が出ましたが、ともに民主党の津田弥太郎さん(元厚生労働政務官、JAM)が出しました。この中で、生活保護については、「大臣は水際作戦があってはならない、と自治体に通達すべし」、自立支援では「自立支援計画は、本人の意思を尊重しながら作成し、計画が途中で不可能になったのならば変更して生活保護に移行すべし」との附帯決議がつきました。

 通常国会会期末で大量に審議未了廃案がでた参議院国土交通委員会は、自民党から民主党に委員長ポストが移り、藤本祐司さんが議事をとりました。海賊多発海域のタンカーの民間人警備員法案(185閣法4号)が原案通り可決しました。

 経済産業委員会も民主党に移り、大久保勉委員長となっていますが、「電気事業法改正法案(電力システム改革プログラム法案)」(185閣法1号)が可決し、民主党の加藤敏幸さんが附帯決議を朗読しました。なお、みんなの党は、参議院で提出した「電力自由化推進法案」(185参法2号)が「委員会付託すらされなかった」と語り、反対しました。

 一方で、自民党が委員長を持つ参・環境委では「JNESを解散し原子力規制庁を強化する法案」(185閣法16号)、外交防衛委では「自衛隊法改正法案」(183閣法63号)、農林水産委では「農村漁村再生エネ法案」(185閣法8号)の趣旨説明だけで散会し、のんびりムード。公明党が委員長を持つところでは、新進党出身の荒木清寛委員長の法務委員会で「自動車運転重過失処罰法案」(183閣法52号)をみっちり審議し、採決はせず、散会。公明党になってから初当選した山本香苗委員長の総務委では「国家公務員配偶者同行休業法案」(185閣法10号)と「地方公務員配偶者同行休業法案」(185閣法11号)の趣旨説明だけで散会しました。

 このため、衆参ねじれ解消後の、制定法律は、特定多発海域のタンカーの民間人警備法と、電力システム改革法の2法律となる見通しで、ともに通常国会会期末に審議未了廃案となった2法案になりました。ともに民主党の委員長が本会議に報告し、可決のうえ、参議院議長が天皇陛下に奏上することになります。

 なお、衆議院では、12日の災害対策特別委員会で、二階俊博さんら自民党・公明党の議員立法「首都直下地震特別措置法案」(183衆法43号)が審議されました。最終的に、自民・民主・維新・公明・みんな・生活の6党提出の法案が起草され、本会議に提出し、可決し、参議院に送られる見通し。これに先立ち、8日(金)の衆・本会議で「東南海・南海トラフ地震の防災対策の推進に関する特措法を改正する法案」(185衆法5号)が可決しています。この2本が、衆参ねじれ解消後の、与党政府外議員提出議員立法の成立(ただし、野党修正)1・2号になる見通し。

 基本的には、民主党が閣法を修正したり、附帯決議をつけながら、どんどん成立させる国会戦術になっています。今後、これによる、修正部分、附則、附帯決議について、とくに見直し規定の時期に関しての情報の集約が求められますが、これはどこでやるのでしょうか。民主党政策調査会にしろ、議院事務局にしろ、政策秘書にしろ、立法補佐機能の充実のためには、目の付け所がいい職員が手間をおしまず自ら労をとれば、より上のステップにいけそうなチャンスを感じる秋の臨時国会です。

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