報道によると、野田佳彦首相=国会指名済み、天皇陛下の任命後に就任=の秘書官7人が内定したそうです。
筆頭秘書官である政務秘書官には、松下政経塾2期生で、野田議員の政策担当秘書や、蓮舫大臣の政務秘書官も務めた、河井淳一さん。政経塾2期生ということですから、民主党と自民党双方に広がる議員ネットワークを活用し、総理とのアポ取りなどでも手腕を発揮できるのではないでしょうか。
注目は、財務省が主計局次長(3人いる)の一人、太田充さん(昭和58年、1983年入省)を送り出しています。主計局次長は3人いますが、局長および局総務課長、主計官と比べると、時間的などに余裕があり、機動的に動けるようで、財務大臣の総理昇格にともない、サッと入ります。やはり歳出の徹底した削減のうえでの消費税増税などで手腕をふるいそうです。
警察庁から、山下史雄・官房総務課長ということで、こちらも太田さんと同じ、昭和58年入庁。岩手県警本部長の経験もあるので、復興の方での感覚もあるのでしょうか。
そんななか、経産省からは昭和59年入省の寺沢達也さん、厚労省からは同じく59年入省の吉田学さんということで、財務・警察両省庁よりも年次が下の人を派遣してくるというのは、やはり、権力欲がないというか、おとなしい省庁なのかなあと感じます。
ですから、財務省系の太田秘書官と旧内務省系の山下秘書官で、なにか火花が散らなければいいのですか。この辺の総理秘書官室の緊張感というのは、私はあまり好きではありませんが、秘書官当人たちにとっては何でもないようです。むしろ、野田首相をはじめとする、民主党議員から官邸入りするメンバーが気後れしなければいいのですが、たぶん気後れするでしょう。
外務省からは寺沢達也さんで、ちょっと年次は分かりません。菅直人首相・北澤俊美防衛大臣時代に、念願の防衛省出身の首相事務秘書官が誕生しました。これまでは警察庁出身の秘書官(防衛庁出向経験ありの場合も)が兼ねるという、霞が関の常識・世界の非常識で、総理の近くに防衛省出身者がいませんでしたが、この前田哲・秘書官は続投と言うことで、官邸での足場を固めたいようです。
麻生内閣のときには総務省出身秘書官がいましたが、今はいません。ただし瀧野欣也・官房副長官(事務)は、元総務事務次官です。
なるべく出身省でなく、総理に仕えて欲しいと願います。
このほか、初入閣の民主党議員事務所には、すさまじい勢いで各府省の役人や警視庁(護衛官)などがやってきます。摩訶不思議なことに、総理事務秘書官から「総理のご下命でお電話しました。官邸にお越し下さい」と言われ、国会議員が会館を出た直後に、「私、このたび、大臣の事務秘書官になりました○○です」という人物がやってきます。このほか、数十人の官僚や警視庁護衛官らがやってきて、廊下にならびます。
このときに、秘書が「センセイが入閣した!」という高揚感と極度の忙しさのなか、次々やってくる役所の人の質問にドンドン答えると、1年後にセンセイは、大臣として何もできなかったといわれながら、事務所にさびしく帰ってきます。
これは、もう民主党としては組閣や内閣改造は4回経験していますから、その経験のある秘書や先輩に、体験談を聞いておいた方が懸命だと思います。何事も初めが肝腎。機先を制すのはムリでも、十分に注意してください。
総理や、大臣の事務秘書官の制度の根本的な制度改革を求めます。
【追記 2011年9月3日 午前1時】
驚きべきことに、内閣官房副長官(事務)は、総務省(自治省)出身の瀧野欣也さんにかえて、通常国会中国交事務次官だった竹歳誠さん(昭和47年建設省・国交省入省)が就任しました。厚生省(厚労省)・警察庁・自治省(総務省)の指定席で、旧財務官僚を起用した安倍内閣は参院選に負けて、福田内閣でその前任の二橋正弘さんを1年ぶりに復活させたことがあります。二橋さんは自治省(総務省)で、旧内務官僚の指定席であることを強調する狙いがあったと思います。今回、建設省出身者が起用されたのは、国交省が4省庁(建設省、運輸省、国土庁、北海道開発庁)の合併によってできた官庁なので、天下りポストが渋滞しているからではないか、と勘ぐってしまいます。それも「大震災があったから国交省」というと、いかにも納得いくような話ですが、それは本質とは遠い話。諸課題を考えれば、自治体のことが分かる自治省出身者の方がいいでしょう。要は、組閣の前から「野田首相は2日、官房副長官に竹歳氏の起用を決めた」という断定調の記事がどこが発信源となって出ているかということです。党内バランスに配慮した組閣に手間取っていた首相に、事務の官房副長官を建設省に切り替えるという判断を自分でする余裕があるとは、推測では考えられません。残念なことです。新聞も記事にしないで欲しいと願います。
【追記終わり】
首相秘書官:河井淳一氏ら7人が内定 - 毎日jp(毎日新聞)
野田佳彦新首相は1日、秘書官7人を内定した。政務担当には野田氏と同じ松下政経塾出身で、財務相当時に政務秘書官を務めた河井淳一氏を起用。事務秘書官は6人で、菅内閣と同数を維持する。
外務省から金杉憲治アジア大洋州局兼南部アジア部参事官、財務省から太田充主計局次長、厚生労働省から吉田学保険局総務課長、経済産業省から寺沢達也通商政策局通商機構部長、警察庁から山下史雄総務課長を起用。防衛省出身の前田哲氏は再任する。
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