【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

岡田克也さんの助言を良く守り、田村憲久さんが三つ星大臣に 厚生労働大臣退任

2014年09月04日 16時59分00秒 | 岡田克也、旅の途中

[画像]田村元・元衆議院議長の写真は、国会議員要覧(国政情報センター)1990年2月版から。

 田村憲久さんが2012年12月から務めた厚生労働大臣を、きのう2014年9月3日をもって退任しました。

 もっとも多くの時間答弁した大臣となりました。社会保障制度改革プロフラム法、難病医療法、地域における医療・介護総合法に加えて、議員立法も多く成立しました。危険ドラッグ対策では警察庁の積極的な姿勢に対して、厚労省は法律を守る姿勢をとりました。退任直前には戦後初めて国内でデング熱の発生しましたが、冷静に対応しました。ただ、旧労働省部局では、労働者派遣法案の提出と記載ミス、緊急雇用対策の補正予算をめぐる官製談合の疑いで局長ら更迭という不祥事が続きました。

 田村さんといえば野党・自民党として、3党協議体制をつくりました。震災直後の子ども手当つなぎ法では自民党を代表して議員立法の発議者になりながら、成立と同時に、「これでマニフェスト総崩れだな!」と野次を飛ばしました。社会保障と税の一体改革法でも3党協議実務者になりました。このときの第180回通常国会では、23回議事録に名前が出ています。しかし、衆議院での可決直後には、「解散!、解散!」と野次を飛ばし、実際に年末の「近いうち解散」につながりました。

 その攻撃的野党議員の田村さんが、与党としていきなり厚生労働大臣になりましたが、どの分野にも真摯に答弁する姿勢には、「マイクホールドたむたむ」との愛称もつくなど好感を持たれました。

 田村さんは言うまでもなく、自民党名門派閥、平成研究会の所属で、三重県最大の財界の名家である日本土建の一族です。また滋賀県最大のケーブルテレビ局である「ZTV」の経営一族でもあり、このブログも、ZTVのケーブルテレビサービスを通じてみてくださる方が複数おられ、その存在感を感じます。田村家は、第45回政権交代解散で、小選挙区敗北比例復活となったほかは、戦後一貫して、旧三重1区、小選挙区三重4区で連続当選をしており、田村憲久さんの先代で叔父の田村元(たむら・はじめ)元衆議院議長も経世会中間派で、政界、財界とも、三重県最大の名家といえそうです。

 そのため、政界、財界とも後発でありながら、同じ派閥の出身である、岡田克也さんには複雑な感情があったようです。社会保障と税の一体改革法案の審議では、岡田さんに対していじわるな質問を繰り返していました。3党協議入りの8日前にあたる、2012年6月7日の委員会でも、平成研究会の額賀福志郎会長に対して、防衛庁長官問責決議案を参議院で出したことや、2004年から2007年にかける年金国会で、「年金は破たんした」と主張したことなど、野党時代の民主党をなじりました。

 これに対して、答弁に立った、副総理兼社会保障制度一体改革担当大臣の岡田克也さんから次のようにたしなめられました。

 「結局、田村さんは若いですから期待しておられる有権者の方も多いと思うんですが、あなたの今の発言というのは、また与党になったときに言われてしまいますよ。だから、お互い、そこはやはり踏まえて議論すべきだということを私は申し上げているわけであります」

 とたしなめた後、

 「消えた年金などいろいろな問題もあって、国民の年金不信が高まった。もちろん、我々が、年金が破綻していると、やや言葉が過ぎたこともそれは影響していると思います。しかし、それだけではないんですね。消えた年金など、やはり国民から見たらとんでもないことが起きたわけですから、そういうことも年金不信の原因になっているということです」

 と、野党時代も含めて民主党をフォローしつつ、日本国としての年金制度の健全化に、二大政党が共通して責任を持つことを主張しました。

 一言居士(いちげんこじ)として知られた、タムゲンこと田村元さんのようにびしっと行きました。

 田村さんが大臣退任後にどのような仕事をするか分かりません。ただ、12月には消費税10%引き上げを決めるわけで、そこでもう一度、社会保障と税の3党合意に立ち戻って、消費税増税分を年金など社会保障4分野に充てることを徹底する必要があるのではないでしょうか。

 そんな田村大臣を、朝日新聞は「3つ星大臣」に選びました。当然だと考えます。田村大臣お疲れ様でした。

[国会会議録データベースから引用はじめ] 

第180常会- 衆 - 社会保障と税の一体改革に関する特別委員会- 16号
平成24年06月07日

○田村(憲)委員 まあ、こればかりやっていても仕方がないので。与党になって学んだというふうに一言言っていただければ、我々も少しは。だってそうでしょう、野党のときにはやめろ、やめろと言ったんだから。やめろ、やめろと言って問責を出したんでしょう。そのときはそうだったじゃないですか。問責を出して、やめろと言ったんですよ、皆さん。額賀さんのときでもそうですよ、やめろと言ったんですよ。
 だから、与党になって学んだというふうに言っていただければいいが、そういうごまかしの発言をされるから、我々もついついまた言いたくなっちゃうんです。
 必ずやめろという話じゃないんです。必ずやめていないというところに私は問題があると。誰一人とし辞任していないんですよ。世論調査をすると、やめるべきだというのが圧倒的ですよね。七割以上の方々がやめろと言っている。でも、やめない。それを内閣改造で、誰一人としてやめていないんですから、内閣改造でごまかして、閣内をさらしている。こういうやり方に問題があるということを私は申し上げているのです。
 これ以上この議論をしても仕方がないので、もう御答弁は要りません。
 民主党が与党になっていろいろなことを学ばれたなという意味では、確かに、与党になられて国民は不幸だという議論もありますが、私はきょうの議論も聞いていまして、ああ、大分進歩されたなと思いますのは、年金の議論が、年金がとにかく破綻する、破綻すると今まで言われてきた。我々が同じような答弁をしても、いやいや、年金は破綻しているんですと、民主党の、誰とは言いませんけれども、委員からいろいろと我々は言われ続けてきた。それを今や、民主党の委員の先生方が大臣に向かって、いや、年金は大丈夫ですよね、こうこうこうだから、安心しているから、だから若い人たちにちゃんとメッセージを送ってくださいなんというような議論になっているというのは、これは年金を考える上では非常にいい傾向になってきたなというふうには思っております。
 ただ、それだけすばらしい年金制度、もちろん悪いところは変えなきゃいけませんよ、にもかかわらず、まだ民主党の年金案というものにこだわっておられる。
 何が必要なのか。つまり、民主党の年金案はどの部分が今の年金制度と比べてすぐれていて、だから民主党の年金制度案に変えなきゃいけないんだ、それはどこなんだというのを端的にお答えいただけるとありがたいんですけれども。

http://kokkai.ndl.go.jp/cgi-bin/KENSAKU/swk_dispdoc_text.cgi?SESSION=23091&SAVED_RID=1&SRV_ID=9&DOC_ID=9025&MODE=1&DMY=27848&FRAME=3&PPOS=67#JUMP1


○岡田国務大臣 その前に、今委員が言われたことについて一言。
 結局、田村さんは若いですから期待しておられる有権者の方も多いと思うんですが、あなたの今の発言というのは、また与党になったときに言われてしまいますよ。だから、お互い、そこはやはり踏まえて議論すべきだということを私は申し上げているわけであります。
 それから、年金については、もちろん消えた年金などいろいろな問題もあって、国民の年金不信が高まった。もちろん、我々が、年金が破綻していると、やや言葉が過ぎたこともそれは影響していると思います。しかし、それだけではないんですね。消えた年金など、やはり国民から見たらとんでもないことが起きたわけですから、そういうことも年金不信の原因になっているということです。
 我々が特に問題にしたのは国民年金で、やはり、国民年金というのは、かつては自営業者の方を対象にして、その自営業者も、ある程度資産もあって、しかも定年もない、そういう中でできてきた制度だと思うんです。それが、今や加入者の多くが非正規で働く方、所得の少ない方が多数になって、果たしてこの年金制度で十分かどうか。それから、そもそも、逆に言うと入っていない方もたくさんいらっしゃる。本来は入らなければいけない、つまり、厚生年金や共済年金の対象外で、入らなきゃいけない方で入っていないと思われる方も多い。
 そういう状況をやはりきちんとしないと国民皆年金じゃなくなってしまいますので、そういったところが問題点として残されているというふうに思っております。

http://kokkai.ndl.go.jp/cgi-bin/KENSAKU/swk_dispdoc_text.cgi?SESSION=23091&SAVED_RID=1&SRV_ID=9&DOC_ID=9025&MODE=1&DMY=27848&FRAME=3&PPOS=68#JUMP1

[引用おわり]

以上です。



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