【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

新・税制調査会がスタート 代表なくして課税無し

2009年10月10日 15時51分34秒 | 第172特別会(2009年9月)鳩山政権発足

 新・税調が8日、スタートしました。

 「税制調査会(会長・藤井裕久財務相)」は26人の国会議員だけで議論します。会合はネット中継されることになりました。会合は(火)、(木)の午後1時半~3時(国会開催中は午後5時以降)。(金)を予備日とする。11月後半から年末まではほぼ毎日の開催となりそうです。

 内閣府の次のページから、リアルプレイヤーで見ることができます。 
http://www.cao.go.jp/zei-cho/chukei/chukei.html

 これまでの政府税制調査会(香西泰会長)と民主党税制調査会(藤井会長)は廃止されました。

 初会合で、来賓である鳩山由紀夫総理は「これまでは、ややもすると党税調の方が強かった」「議員だけで構成するのは画期的だ」としました。26人の議員に向かって、「税こそが政治家が議論しなければならない最大のテーマだ」とハッパをかけました。

 藤井会長は「(来年度)予算の方は年内編成をするとハッキリ打ち出していますので、その側面である税制についても年内編成である、という認識でよろしくお願いします」と述べました。当たり前のことですが、今までの税制審議ではなあなあになっていた部分なので新鮮さを覚えました。

 国会議員だけで議論することも画期的ですが、国税と地方税を対等の立場で議論することも画期的で、今後の地域主権に大きく影響していくことが予想されます。

 地方税を担当する総務省の原口一博大臣が会長代行、渡辺周副大臣が企画委主査代理、小川淳也政務官が企画委事務局長代理とそれぞれ、財務省政務三役とコンビを組みます。

 原口総務相が「この歴史的な一瞬に鳩山総理、(民主党の)同志のみなさんと立ち会えたことを誇りに思います」というあいさつは、まったく大袈裟ではない。

 税制の企画については、国税を財務省主税局、地方税は総務省自治税務局が分け合っています。この国税と地方税をめぐる綱引きは、旧大蔵省・旧自治省時代から“50年戦争”と呼ばれてきましたが、やはり財務省の方が強く、国税の偏重を招きました。

 一つの例があります。自治官僚出身者でただ一人、大蔵大臣になった人がいます。村山自社さ内閣の武村蔵相です。霞が関の“掟破り”の人事の果てに、どこの雑誌だか知りませんが、横文字の雑誌で、「今年の“世界大蔵大臣ランキング”で日本のタケムラがワースト1位になった」ことがあります。各新聞に囲み記事がりましたが、これは大蔵省の官僚が記者にリークしたに違いないでしょう。この年以降に「世界大蔵大臣ランキング」なんて聞いたことありませんからね。

 話を戻しますと、国が税金を徴収し、地方にお金を配る今の“国のかたち”では、中央集権も天下りも無くなりません。会合で、原口総務相は「まさに税というものは、国と地方のあり方、国のかたちを決める根幹であります」と言いました。

 税調の企画委主査の峰崎直樹・財務副大臣は事務連絡で、

 ①議論は全員が参加するが、運営など重要事項は企画委員会が議論する
 ②司会は、国税の案件は峰崎財務副大臣、地方税の案件は渡辺総務副大臣。
 ③各府省の国会提出法案で、税制が関係する場合は事前に税調に連絡する。
 ④税制改正要望は各府省の副大臣が10月30日までに税調に提出する。
 ⑤粗特見直しについて、各府省は11月中旬までに論点をまとめて提出する。

 と連絡しました。

 この後の、質疑応答で、さっそく面白いやりとりが出ました。

 「税調に属する議員以外への情報の周知徹底はどうするのか?」と質問が出ました。峰崎主査は「各府省の政策会議で説明して欲しい」としながらも、「財務・総務副大臣から全議員にこういう方針で進めますよ、という周知徹底の場は必要かなと思っている」と付け加えました。

 すかさず、原口総務相が発言を求め、「かつての『依存と分配の政治』では党税調が重要だった。党の議員のみなさんにつまびらかに説明するということと税調で議論することはまったく別だと思っています。自民党税調のようなものをつくってはいけない」と念を押しました。

 増子輝彦・経産副大臣は「そうしますと、この税調にかかわっていない議員のみなさんの考え方や意見というのは、各省の政策会議をそれぞれ通して、まとめてこい、という理解でよろしいでしょうか」と確認すると、峰崎主査は「その通りです」と応じました。

 さて、イギリス国民たちは、国王が身勝手に税金を課さないよう、国民の代表が議論する権利を国王に認めさせました。これが国会の誕生であり、議会の発明です。

 「代表なくして課税無し」は税制の基本であるばかりか、国会および政治にとって、最大の存在意義です。

 新・税調は、まずは粗特(租税特別措置法)の透明化や、これも粗特法で定められているガソリン税(揮発油税)の暫定税率の撤廃、中小企業減税などを議論していくことになります。

 ◇

【税制調査会委員名簿】

会長
 財務大臣 藤井裕久○

会長代行
 総務大臣 原口一博○
会長代行
 国家戦略担当大臣 菅直人○

企画委主査
 財務副大臣 峰崎直樹○
企画委主査代理
 総務副大臣 渡辺周○

企画委事務局長
 財務大臣政務官 古本伸一郎○
企画委事務局長代理
 総務大臣政務官 小川淳也○

委員
 財務副大臣   野田佳彦○
 総務副大臣   内藤正光○
 財務大臣政務官 大串博志○
 総務大臣政務官 階 猛○
 内閣府副大臣  古川元久○
 内閣府副大臣  大塚耕平
 内閣府副大臣  大島 敦
 法務副大臣   加藤公一
 外務副大臣  武正公一
 文科副大臣 中川正春
 厚労副大臣 長浜博行
 農水副大臣 山田正彦
 経産副大臣 増子輝彦
 国交副大臣 馬淵澄夫
 環境副大臣 田島一成
 防衛副大臣 榛葉賀津也
 国家公安委員長 中井 洽

オブザーバー
 社民党政審会長 阿部知子○
 国民新党政調会長 下地幹郎○

(注)○は企画委員会のメンバー。



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