【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

「民事的殺人」とは何か?権利を行使できないまで人を壊すブラック企業ー今野晴貴さんの指摘に賛同

2017年08月20日 19時56分13秒 | その他

 gooから来る無料サービス「1年前の記事」で、次のような2本が来ました。



働き方改革関連法案(同一労働同一賃金法案)の提出が後半国会にずれ込む見通し、当初会期内成立微妙に

 今月、平成28年2016年8月に発足した、第3次安倍第2次改造内閣は、「同一労働同一賃金などを実現する、働き方改革」をスローガンにあげ、担当大臣を設けました。 さっそく、「内閣官......
 



 「働き方改革関連法案(同一労働同一賃金法案)の提出が後半国会にずれ込む見通し、当初会期内成立微妙に


1年前の記事ですが、労働者派遣改悪法「1日施行」を「31日施行」に追い込んだ死闘、意外と同僚議員も知りません

 労働者派遣法改悪法案「9月1日施行」延期の方向性、参議院野党共闘で壮絶な闘い続く【平成27年2015年8月20日(木)参議院厚生労働委員会】 「労働者派遣法改革法......
 




1年前の記事ですが、労働者派遣改悪法「1日施行」を「31日施行」に追い込んだ死闘、意外と同僚議員も知りません

 ということになります。

 これは1年前の記事と、1年前の「そのまた1年前の記事」になりますので、インターネット社会の無限の情報のなかで、訳が分からなくなります。まとめると、「2015年8月に、安保法制に隠れて労働者派遣法改正をめぐって参議院野党が死闘を繰り広げていたことを忘れるな」という話と、「安倍内閣は2016年8月の改造で働き方改革を打ち上げたが、その法案の提出は2017年4月以降に遅れそうだ」ということを、1年前の言っていたということです。

 ようやく、1か月後からの秋の臨時国会に法案が出るはこびとなりました。官邸主導だけに、厚労省側から、理念法案を出したいという情報も出てきています。

 私自身、失われた20年が始まった1997年からの、ブラック企業の被害者だけに、働き方改革には積極的に取り組みたいところです。労働者派遣法改悪では、ガイドライン戦争法(平和安全法制)との2本建てを迫られながらも、我ながら健闘したと考えております。

 ところが、なかなか気乗りしたい面もあります。ブラック企業対策の先陣を切ってきた、NPO「POSSE」の代表、今野晴貴さんの主張が、私の気持ちを代弁してくれていると考えます。なお、ブラック企業の厚労省の定義は「若者の使い捨てが疑われる企業」ですが、私の場合は「長時間労働企業」の定義が自分自身の経験になります。

 今野著「ブラック企業日本を食いつぶす妖怪」(文藝春秋、2012年)はその112ページで、ブラック企業の怖さとして「民事的殺人」ということを説明しています。今野さんによると、民事的殺人とは、被害者が権利行使の主体としてはあたかも「殺され」てしまっているかのような状態である。職場のことを思い出すだけで、過呼吸になる、涙が止まらなくなる、声が出せなくなる。徹底的に追い詰められた恐怖の経験が、彼らから法的な権利の主体であることを奪い去る。ブラック企業からの側とすれば、この状態こそが「完全にリスクをヘッジした状態」なのである。今野さんは、このように書いています。

 電通正社員だった、高橋まつりさんという女性が、4月に入社し、12月に自殺しました。私の経験からすると、ほぼ鬱病発症前のタイムスケジュールだったと考えます。一つ疑問なのは、仏教への帰依があつい私としては、「12月24日」を特別な日と扱うのは、電通が押し付けた恋愛消費主義の特徴であり、高橋さんの行動にはジレンマを感じます。また、高橋さんのように能弁な母親を、私は持ちませんが、私は先祖代々の土地資本家であることから、自分は今生きながられているという自覚があります。

 過酷なブラック企業の被害者から、今、本来の、使用者階級に戻った私は、働き方改革関連法案には、アイデンティティークライシス(自分の立場が分からなくなること)を起こしそうです。もちろんそれ以前に、今野さんが指摘する、民事的殺人(未遂)の恐怖が筆を重くするかもしれません。

 「なぜ辞めなかったのか」という疑問を抱く方々には驚きましたが、どうやらそれは本音のようです。ただまあ、閉鎖的な陰湿な日本社会、土地が限られた大量破壊大量消費経済の象徴である働き方改革関連法案については、それなりにしっかりにらみを利かせていきたいと考えています。

このエントリーの本文記事は以上です。

(C)2017年、宮崎信行。

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