【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

民主党の本予算基本的質疑スタート、麻生財務相「大蔵省」、安倍首相「結社は認められない」

2014年02月10日 17時49分33秒 | 第186通常国会(2014年1月)好循環実現国会

 平成26年度本予算(案)の基本的質疑が2014年2月10日(月)から始まりました。

 午後2時に、民主党の海江田万里代表がトップバッター、切り込み隊長として、質問。

 平成25年度(第1次)補正予算で、昨年秋の「レビュー」で平成26年度当初予算(案)に盛り込まないと決めた4600億円のうち、3600億円が前倒し計上されていることに対して、安倍首相は「秋のレビューとてらして、あきらかにおかしいものは執行しない」と答弁しました。この後、麻生さんが本予算審議の最初の答弁で、「大蔵省からそれぞれの省に~~」と答弁。ここで、指摘があり、財務省と言い直しました。出だしから大きくつまづきました。

 財務省主計局など2階3階フロアでは、「大蔵省」と自分たちの組織を呼ぶ考え方があるとされています。麻生大臣が就任してから1年以上たち、官僚との距離が近くなりすぎているのかもしれません。

 民主党の大島敦さんの質問に対して麻生さんは「リーマンショックのときに私たちは対応を間違えた」と語りました。リーマンショックのころ、麻生内閣で、そのときも大島さんは野党の予算委員でした。麻生元首相がやり残したことをやりたくて、財務相を買って出たのかもしれません。あるいは、当時の日本銀行白川方明総裁が日銀券をあまり刷らなかったことや、「初代財務事務次官である武藤敏郎さんの日銀総裁案」の国会同意人事を退けた民主党を批判しているのかもしれません。

 岡田克也さんは集団的自衛権に絞って質問。安倍首相は「公海上の(アメリカの)イージス艦が攻撃を受けたときに、日本のイージス艦が攻撃から守ることができるのか」といった議論を安保法制懇談会(座長・柳井元外務事務次官)に任せていると答弁。この後、「海や空はそれぞれの国の公共財であり、それを守るにはどうすればいいか」と語りました。これは、我が国がPKOで派遣された国で、陸だけでなく、海や空で武力攻撃があったときに、我が国も武器を使って警護することがあるうるのかという議論につながりかねず、マイナー自衛権をめぐる議論に歯止めがかからなくなる総理答弁のようにも思えました。

 長妻昭さんが「自民党憲法改正草案」について。集会・結社・表現の自由(21条)について、第2項に「公益及び公の秩序に反するもの」は規制するとの条文を挿入する改正案について、安倍首相は「私は議論はに参加していないが、オウム真理教のような結社が認められないのは当然だ」としました。なお、安倍さんはこの草案に「顧問」として名を連ねています。安倍さんは「結社が認められない」と答弁しましたが、オウム真理教は「国が解散させる権限を持つ破壊活動防止法」を適用できず、現在もオウム新法により「規制」されている状態です。

 では、「公益および公共の秩序」は誰が判断し、誰が決定するのでしょうか。例えば、そのときの政府が、宗教法人オウム真理教、宗教法人靖国神社、宗教法人創価学会のそれぞれの「公益および公共の秩序」をどう判断し、安倍答弁によれば「結社が認められない」という決定できるというのでしょうか。

 私は、特定秘密保護法は「平成の治安維持法」ではなく、一部の幹部公務員に、一般の公務員が規制される法律だととらえています。しかし、一部の幹部公務員に、総理や財務大臣がのっとられているのではないかとの気配を感じた平成26年度本予算(案)審議の初日でした。十分な審議日程をとり、しっかりと精査することが必要だ、と感じました。

 長妻さんは質問の最後を、「空気ができると政治がとめられなくなるようなことがゆめゆめないように、野党の立場で言うべきことはしっかりと言っていく」とまとめました。

 ◇

 【追記 2014年2月11日午後4時】 自民党は政調会長がトップバッターという与党期には典型的なパターン。高市政調会長の国土強靭化対策について、古屋圭司・国家公安委員長が答弁。「あれ」と思いましたが、国土強靭化担当大臣ということで、古屋さんが答弁することになるようです。ここで、古屋国土強靭化相は「バラマキだと批判する人がいるが、『ばらまく』とは、広辞苑で(2)に、金銭などを多くの人に見さかいなく与えることだ」と答弁。私は、見さかいなくでなく、自民党支援者に限って発注するという意味ではないか、とツッコミを入れたくなりました。昔の与野党とは違うとはいえ、「イメージ戦略」「レッテル張り」という要素も、選挙が遠い今だからこそ、必要だと私は考えます。【追記おわり】

 なお、きょうの官報に次のような記事が載っています。

 

 「国会において議決した次の予算を内閣に送付した」との記事。法律や政令は天皇陛下が公布するのに、なぜ予算は国会の議決だけなのでしょうか。税制改正法や赤字国債発行法は天皇陛下が公布するのに、なぜ予算は天皇陛下が公布しないのでしょうか。

 予算も「日本国の象徴である日本国民統合の象徴である」天皇陛下が公布し、内閣に従わせればいいのではないでしょうか。立憲主義にもとづく天皇は、政府の一部ではないはずです。これはもちろん、明治憲法では、立法府は「予算に協賛する」だけであり、国会が予算を議決する権利を持ったのは現行憲法からですからいたしかたないとして、次の憲法改正に向けて、こういった統治機構に関する観点も付け加えてほしいところです。



   


岡田克也さん「修行僧になる」 平成26年度本予算(案)審議きょうスタート

2014年02月10日 07時32分09秒 | 岡田克也、旅の途中

[写真]修行僧。フリー写真素材から。

 平成26(2014)年度本予算(案)はすでに1月30日(木)に衆参両院の予算委員会で趣旨説明がありましたが、きょうから衆院予算委で基本的質疑がスタート。国会の一番凛として充実した1カ月間が始まります。

 民主党の岡田克也予算委員はブログで、「2月いっぱいは「修行僧」のような生活になる」と宣言しました。

 自民党の切り込み隊長は、高市早苗さん。政調会長が切り込み隊長になるのは与党期・自民党の典型的なパターン。その後、元厚生労働副大臣の鴨下一郎さん、元農林水産副大臣の宮越光寛さんが続きます。

 公明党の切り込み隊長は国政復帰した上田勇さんで、党女性委員長で厚労委員の古屋範子さんが続きます。

 民主党は午後2時ごろから登場の見通し。

 海江田万里代表が切り込み隊長となり、大島敦・政調会長代行(政調会長は参院議員)が続きます。

 続いて、岡田克也さん、長妻昭筆頭理事となります。

 平成26年度本予算審議が、現時点では、消費税増税による史上初の50兆50億円の歳入を何に使うか、という「歳出国会」になると予想されます。とくに2年前の「社会保障と税の一体改革3党合意」の順守の確認になりますが、法的拘束力がないなかで、どこまで与党を追い詰めるか「力技」が必要になります。

 ◇

岡田克也さんの質問通告
http://www.katsuya.net/yosan140207.html

 衆議院予算委員会質問
   
  日時: 2014年2月10日(月)15:40~16:20

【質問要旨】

 1.集団的自衛権と日本国憲法

  1) 憲法9条の意義と集団的自衛権

  2) 集団安全保障と憲法9条


 2.衆議院選挙制度改革
 
  1) 1票の格差

  2) 小選挙区における定数削減

 ◇

 平成26年度予算書は次のページでみることができます。

http://www.bb.mof.go.jp/hdocs/bxss010bh26.html 

 ◇

 ところで、きょうの朝日新聞経済面に興味深い記事がありました。イオン名誉会長・岡田卓也さんのインタビューで、オイルショックのときに、トイレットペーパーの値段をジャスコが吊り上げているのではないか、として国会に呼ばれ突き上げられたときに、「先生はスーッときて、パーッと消えるような店のことを言っているんじゃないですか」と反論したそうです。これは「スーパー」を揶揄する言葉を使った反論したようです。その後、カップ麺をめぐって日清食品が@100円から130円に値上げする」と一方的に通知したので取引を停止したそうです。そこで、ジャスコのカップ麺「Jカップ」を85円で売り出したそうです。これがイオンのプライベートブランド第1号になるわけです。その後、三菱商事が仲裁に入り、2年後に日清の安藤百福社長と和解したそうです。

 岡田卓也さんと安藤百福さんは次男同士が高校の同級生という関係にあります。

 2007年12月、JTフーズが中国・天洋食品から輸入した冷凍ギョーザから猛毒メタミドホスが発見。このとき、イチバン激高した記者会見を開いたのは、天才安藤百福さんの次男、安藤宏基・日清食品社長。何に激怒したのかというと、猛毒が発見されているのに、「まず回収してそれから何があったか調べようとしなかったJTフーズはDNAが違う」として合併合意を破棄しました。それから2年後、外務大臣になった岡田克也さんは、中国外相に対して、「ギョーザは日本では子供の弁当のおかずだ」と禅問答のような理論で、ちゃんと捜査するよう要求。中国公安当局は2010年3月、呂月庭容疑者を逮捕。3週間前、2014年1月20日(月)、呂月庭被告は、無期懲役の実刑判決を受けました。

 偉大過ぎる父を持っているという面では、安藤宏基社長の方がたいへんだと思います。アフリカなど飢餓を、インスタントラーメン、とくにチキンラーメンは水で戻しても食べられますから、安藤百福さんは史上最も世界的に偉大な日本人だと思います。

 麻生太郎財務大臣は首相就任・リーマンショック直後の2010年10月28日、テレビ入り国会中継で、カップラーメン(日清カップヌードル)の値段を「 最近買ったことがないんでよく知りませんけれども、昔最初に出たのが、最初に出たときは、日清が出したときに、たしかえらい安く出たなというのがあるんですが、あのとき何十円かで、今四百円ぐらいします。」との大失言をしてしまい、政権を失いました。この答弁を引き出した牧山弘恵(牧山ひろえ)参院議員は、昨夏の厳しい選挙でもしっかり再選しました。

 このくらいの力技が必要です。とはいえ、選挙はまだ先だし、予算には、優越規定があります。民主党大会で、「きょうの天気は変えられないが、あすの政治は変えられる」という印象的な言葉がありました。しかし、私は、いつになっても、その日の天気は変えられない、という謙虚さが民主党に必要だと考えます。

 ところで、都知事選の報道が盛り上がらなかったというような論調があるようです。しかし私は当然だと考えます。都知事選は民選になって以来、統一地方選前半戦で行われてきました。これが前回から統一外地方選になりましたが、これは衆院選とダブルでした。今回統一外、衆院選別日になりました。これまでも都知事選は統一地方選前半戦の目玉として報道されてきましたが、都知事選に限定した報道量は今回よりもむしろ少なかったと思います。そもそも、日本語人口のうち、都民は1割に過ぎないので、インターネットでの関心は国政選の1割。さらに、東京都は県域放送が以前で言うUHF局の東京MXテレビしかなく、県紙は一つもありません(東京新聞はブロック紙)。

 テレビというものは落ちていく人の生きざまを映しますが、都知事選に先立つ、猪瀬直樹知事の記者会見・議会でのうろたえぶりは、古賀潤一郎元民主党衆院議員の学歴詐称事件以来。そして地上波デジタル放送が始まってからは最大の人生劇場になりました。このため、Twitterとの親和性が高く、都民以外の日本人が「じぇじぇじぇ」になったので、錯覚が生じたと考えられます。都知事選なんてものはこのていどのものです。

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