恋、ときどき晴れ

主に『吉祥寺恋色デイズ』の茶倉譲二の妄想小説

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『転がるダイス』~その1~その4

2015-03-20 08:19:08 | 年上の彼女

 10歳上の女性との恋愛。譲二さんはヒロインからみて年下の若い男性なんだけど、色気のある大人の男性で頼りがいも包容力もあるという、ものすごくおいしい男性になっちゃいました。

☆☆☆☆☆

ダイス(英:dice):サイコロを意味する単語(複数形。単数形はdie)。

 譲二ルート以外のどれかのルートの譲二さん。
 本編のヒロインは大学を卒業して就職、クロフネを出ている。


 9歳年上の恋人、奈実に元夫から手紙が来た。
 しかもクロフネを探っている怪しい男も現れて…。

☆☆☆☆☆

『転がるダイス』~その1

〈譲二〉
 怯える奈実を寝かしつけた。

 暗い部屋で横になったまま、今の状況を頭の中で整理する。



・クロフネを見張り、商店街でクロフネのことを聞き回っている男がいる。

・その男は中肉中背で背広を着ていた。

・その男が手に入れた情報は
 …クロフネは俺が1人で切り盛りしていること。
 …最近女性が一緒に住むようになって、店を手伝っていること。
 …その女性はマスターの恋人らしいという噂があること。

・奈実の元旦那が奈実のマンションの住所を手に入れた。

・そのマンション宛に奈実へのラブレターを送って来た。

・その手紙には奈実と偶然あった時に一緒にいた俺のことが書かれている。

・また、奈実が1人であればもう一度やり直したいと書いてある。

・クロフネのことを嗅ぎ回っている男と奈実の元旦那が同一人物かどうかはわからない。

 これぐらいかな…。

 最後の1行、クロフネを嗅ぎ回っている男と奈実の元旦那が同一人物かどうかだが…別な人間と考えた方が自然ではないだろうか?

 もし、奈実がクロフネに住んでいることを知っていたら、元の住所に手紙をだすだろうか?

 いやいや、決めつけるのは危険だな…。

 わざと、クロフネに移ったことを知らないフリをして、相手を油断させてクロフネのことを嗅ぎ回っているということも考えられる。

 ただ、同一人物と決めつけるのも止めた方がいいだろう。

 探偵を雇っているのかもしれないし…、奈実とは関係なく俺のことを何らかの理由で調べている人間ということも考えられる。

 ストーカーと決めつけることで、相手を攻撃的にしたり、こちらが恐怖にかられて判断を誤ることもあるだろう。


 悔やむのは、一護とハルが不審な男を見つけた時、俺があの男の顔を確かめておけばよかったということだ。

 奈実の元旦那の顔の記憶はあやふやだが、本人をもう一度みれば同一人物かどうかはわかっただろう。

 クロフネを嗅ぎ回っている男と奈実の元旦那が同一人物か別な人間かで対処は全く違って来るのにな…。

 別な人間だとしたら、元旦那はただ奈実に手紙を出しただけで、別に違法なことをしたわけではない。

 怯える奈実を元旦那と会わせたくはないが…、手紙には返事を書いた方がいいかも知れないな…。奈実は嫌がるかもしれないが…。

その2へつづく

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『転がるダイス』~その2

 

〈奈実〉
 目を覚ました時、譲二さんは既に起きて、パソコンに向かっていた。

奈実「おはようございます」


譲二「あ、目が覚めた? おはよう」

奈実「昨日はごめんなさい。なんだか取り乱してしまってて…」

譲二「奈実にしがみつかれて、俺は嬉しかったよ」


 譲二さんはベッドに腰をおろすと私を抱きしめてくれた。


譲二「すぐ朝食の用意はできるから、一緒に下に降りる?」

奈実「昨日の夜はあまり食べられなかったから、お腹が空いたかも…」

譲二「じゃあ、朝食はたっぷり用意しないとね」


 そういいながらも、譲二さんは私を1人にしないために私の着替えを部屋で待っていてくれた。


☆☆☆☆☆

 


 朝食の後、コーヒーを入れてくれる。


譲二「ねえ、奈実。ちょっと嫌なことを頼んでもいい?」

奈実「なに? 大抵のことは大丈夫だよ」

譲二「奈実の元旦那の手紙はいつ届いたの?」

奈実「3日くらい前かな…」

譲二「そうか、それなら相手はそろそろ返事が来るかもと思っているかな…」

奈実「返事?」

譲二「うん、手紙を出したということはその返事を期待しているってことだよね」

奈実「…」

譲二「だから、今頃奈実の手紙を待っていると思うんだ」

奈実「それは…、和成さんに返事を書いた方がいいってこと?」

譲二「ああ、昨夜色々考えてみたんだけど、クロフネを探っている男とその和成さんが同一人物かどうかわからない。
和成さんは手紙を出しただけだとしたら、違法でもストーカーでもないと思うんだ」

奈実「でも…」

譲二「奈実が過去でしかない元旦那に手紙なんか書きたくないのは分かってる。
でも、和成さんの方はどうだろう?
 久しぶりに奈実にあって、自分がまだ奈実のことを好きなことを確認して、自分勝手だとは思うけど…奈実も自分をまだ好きかもしれないと思っていたとしたら…。
手紙を出して確かめようと思うのはそう不自然なことじゃないだろう?」


 私は離婚の調停で何度も和成さんに「あなたのことはもう好きじゃない」と態度で示していたつもりだった。

でも、和成さんはそうは取らなかったのだろうか?

 偶然久しぶりにあった時、和成さんはとても懐かしそうに話しかけて来た。

まるで、ドロドロした離婚の話し合いのことは忘れてしまったかのように…。


奈実「でも、私はもう和成さんのことをなんとも思っていないし…。
結婚生活の最後はとても辛かったからなるべく考えないようにしていた」

譲二「うん。だから、それを和成さんに手紙で書いたらどうだろう。
今の奈実の気持ちを…。
気をつけて、きつい言葉ではなくいたわりを込めて、でもはっきりと相手にわかってもらえるように…」

奈実「…」

譲二「好きな人に拒絶されても、それを受け入れるには時間がかかる。
相手が求めているのは自分ではないと頭で分かっていても、それを心が受け入れるには時間がかかる。
前はああ言っていたけど、今は思い返してくれたんじゃないかって、自分の都合のいいように思ってしまうものなんだ…」

奈実「譲二さんも…そんな経験をしたの?」

譲二「ああ、だから今の和成さんの気持ちは何となくわかる気がする。
和成さんが前に進むためには今の奈実の気持ちをはっきり伝えた方がいい。
ただし、相手を追いつめてしまわないように気をつける必要はあるけど」

奈実「そんなにうまく書けるかな?」

譲二「難しいけど…、俺と一緒に考えよう」


譲二さんは優しく微笑んだ。

 

その3へつづく

 

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『転がるダイス』~その3

〈奈実〉
譲二さんと一緒に和成さんへの手紙を書いた。

今も思ってくれるのはうれしいが、私にとって和成さんへの気持ちは冷めてしまっていること。

だから、ずっと私を思ってくれても、応えられないし、私にはそれが負担になっていくだろうこと。

今は2人ともそれぞれの人生を前向きに生きて行きましょうということ。

譲二さんという恋人がいることはあえて、書かないことにした。


譲二「あの手紙の感じだと奈実に恋人がいることは受け入れられない可能性が高いし、嫉妬で逆上してこちらの言うことを聞かなくなる可能性もある。
…それに和成さんがクロフネを見張っている人物と同一人物だとしたら、すでに俺が恋人だってことは掴んでいるはずだからね。
だから、第一弾としてはこれ位の内容でいいかな」

奈実「第一弾ということは、手紙をまだやり取りするの?」

譲二「ああ。少しずつ相手することで、クールダウンしてもらう」

奈実「また、書かないといけないんだ」

譲二「次の返事はまた一緒に考えよう。」


譲二さんは私を抱きしめる。


譲二「辛いのに手紙を書くの頑張ったね」



こんな風に慰めてもらっていると、9歳も年下とは思えない。

私は…本当に譲二さんに頼り切っている。


奈実「譲二さん…」

譲二「…なに?」

奈実「愛してる…」

譲二「…俺もだよ」


どちらともなくキスを求めあい、濃厚な一夜を過ごした。


その4へつづく

 

☆☆☆☆☆

『転がるダイス』~その4

〈奈実〉
伊藤くんからメールが来た。

『大丈夫ですか?

あれから連絡ないけど大丈夫ですか?
俺で役立つことがあったら、いつでも相談してください。
ところで、今度の日曜日ですけど、休みが取れたので一緒にランチでもしませんか?
いい店があるんです。

                                                 伊藤』

これはもしかしてデートのお誘い?和成さんといい、この頃急にモテてる気がする。

もちろん、4つも上の女に本気でモーションをかけてくるとも思えないが、譲二さんの例もあることだし。


『ごめんなさい

この日曜日は予定があって…。お誘いありがとう。

                                                 奈実』

これでよし。

一応譲二さんにも報告しておこう。

ヤキモチ妬くかもだけど、隠してばれた時の方が怖そうだし。



譲二さんはメールの文面を見てじっと考えこんでいる。


奈実「単に心配してくれているだけだと思うんだけど」

譲二「この人は独身?」


ほら来た。


奈実「10年前は独身だった。その後結婚したという挨拶状は来てないから…」

譲二「どんな外見?」

奈実「うーん。特に特徴は無いかな…。身長も普通くらいだし、太っても痩せてもいないし」


譲二さんはさらに考えこんだ。


譲二「もしかして、この人にクロフネにいることを話した?」

奈実「えっとどうだったかな?ちょっと待って」


私は送信済みのメールを探した。


奈実「あ、クロフネという喫茶店の二階に間借りしてますって、メールしてた」


譲二さんは大きく溜め息をついた。


譲二「この間からクロフネを探っているのはこの伊藤さんという人かもしれない」

奈実「え?うそ!」

譲二「あくまでも推測だけど、クロフネを見張る男が現れたのはこのメールの発信日より後だし、特に特徴の無い中肉中背というのも同じだ。」

奈実「確かにそうだけど…」

譲二「伊藤さんから会おうという誘いがあったのは今回だけ?」

奈実「ううん。前に一度会えないかって誘われたけど、夜の7時以降でってことで、夜は怖いし、住まわせてもらっている人にも出歩かないように言われているからって断った」

譲二「その二回だけ?」

奈実「そうだと思う」

譲二「奈実に会って話をするだけなら、クロフネに訪ねて来てもいいんだし、なんだか奈実を誘い出そうとしているように感じるんだよね」

奈実「考え過ぎだよ」

譲二「今は得体のしれない相手と対しているんだから、考えすぎるくらいでちょうどいいと思うよ。
とにかく、しばらく1人では出歩かないように…。
それとその伊藤という人から連絡があったら、返事をする前に必ず俺に話してね」

奈実「うん。そうする」


何だか考えすぎのような気もするけど…。

譲二さんは私の事になると色々と心配してくれてるんだ。


その5へつづく