恋、ときどき晴れ

主に『吉祥寺恋色デイズ』の茶倉譲二の妄想小説

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『忍び寄る影』~その5~その8

2015-03-06 08:09:43 | 年上の彼女

 10歳上の女性との恋愛。譲二さんはヒロインからみて年下の若い男性なんだけど、色気のある大人の男性で頼りがいも包容力もあるという、ものすごくおいしい男性になっちゃいました。

☆☆☆☆☆

 譲二ルート以外のどれかのルートの譲二さん。
 本編のヒロインは大学を卒業して就職、クロフネを出ている。


☆☆☆☆☆

『忍び寄る影』~その5

〈奈実〉
伊藤くんからメールが届いた

『こんばんは

奈実さん、その後元旦那さんからは何も無いですか?
ちょっと気になることがあるので、一度会えないでしょうか?
込み合った話なので、メールではしにくいです。

都合のいい日時があれば教えてください。
俺は夕方7時以降ならいつでも大丈夫です。


                伊藤』


気になることってなんだろう?

伊藤くんの携帯にかけてみる。


奈実「もしもし伊藤くん?」

伊藤「あ、先輩。わざわざ電話してくれたんですか? すみません」

奈実「会って話したいことって何かな?」

伊藤「えっと、会うのは無理ですかね?」

奈実「うーん。今住まわせてもらっているところの人にも出歩かないように言われているし、特に夜出るのは無理だと思う」

伊藤「…そうですか。じゃあ、今話しますね。ウチの会社の子で、奈実さんが辞める1年位前に入って来た子がいるんですが、その子のところまで奈実さんの元旦那は聞いて回ったらしいです。
それで、たまたまその子は奈実さんが退職した後に同僚みんなに出した挨拶状をまだ持ってて、ご丁寧に元旦那に奈実さんの住所を教えたそうなんです。
 挨拶状には電話番号は載ってなかったので、一応住所だけだそうですが…」

奈実「…そうなんだ。でも、あっちには伊藤くんのアドバイス通りなるべく行かないようにしているから…たぶん大丈夫だと思う」

伊藤「俺のアドバイスが役に立ったなら良かったです」

奈実「うん。ありがとう」

伊藤「あの…。今住んでるクロフネっていう喫茶店のことですけど、そちらは大丈夫なんですか?」

奈実「そうね、今のところ和成さんには知られてはないんじゃないかな。そういう気配はないし」

伊藤「いえ…そういうことじゃなくて…」

奈実「え?」

伊藤「いえ、何でもないです。奈実さんが無事ならよかったです。じゃあ、また何かあればメールしますね」

奈実「ありがとう。またね」

伊藤「奈実さんも元気で」


 譲二さんにこのことを話すべきだろうか?

 譲二さんは最初から私のことをすごく心配してくれて、この前の家に物を取りに行くときも、りっちゃんをつけてくれたり、気をつけないといけないことを色々とアドバイスしてくれた。

 譲二さんの心配は杞憂ではなかったということだ。

 でも、これ以上譲二さんに私のことで心配をかけたくない。

今だって、充分心配しすぎるくらい心配してくれているのに…。

 だから、和成さんが私の家を突き止めたことは黙っておこう。

 必要な物は既に取って来たし、あのマンションに近寄らないようにすればいいだけだから…。


その6へつづく


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『忍び寄る影』~その6

〈奈実〉
 ポストに入っていた手紙を選り分ける。

 譲二さんと同棲するようになって、すぐに転送届けを出したので、私の元の家宛にきた郵便物もクロフネに届くようになっている。

 その私宛の郵便物の中に差出人が『明石和成』という名を見つけてドキッとした。


譲二「奈実、手紙の中に何かあった?」

奈実「ううん。仕事関係のが何枚か…そうだ、ちょっと仕事でやらないといけないことがあったのを忘れてた。
ちょっと二階に行っててもいい?」

譲二「うん、いいよ。今はお客さんもいないからゆっくりしてくれていいよ」

奈実「ありがとう」


 私は譲二さんに微笑むと二階にゆっくりとあがった。

 百花ちゃんの部屋に入ると急いで和成さんの手紙の封を開けた。


手紙を読んで、青ざめた。

これは…紛れもないラブレターだ…。

寒気がして、自分で自分を抱きしめた。

どうしよう。譲二さんに相談した方がいいかな?

でも、こんな熱烈なラブレター、譲二さんに見せていいものだろうか。

和成さんと会っただけでも、譲二さんは妬いていたのに…。

この手紙の宛先は私のマンションで、このクロフネが突き止められたわけじゃない。

今はまだ譲二さんにいうのはやめよう。

譲二さんを心配させたくない。

 


その7へつづく


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『忍び寄る影』~その7

〈譲二〉
 奥のソファーで奈実はタケとりっちゃん相手におしゃべりをしている。

 相変わらず、若い男に囲まれて楽しそうだ。

 苦笑しながらも、明るい奈実の姿にホッとしている。

 先日の男は今のところあれだけで、姿は現してない。



 チャイムの音と同時にドアが開いてリュウが入って来た。


竜蔵「ジョージ、知ってるか?この間からクロフネのことを根掘り葉ほり聞き回ってる男がいるんだとよ」


 その大声は奥のソファーで談笑していた3人にも届いた。


譲二「それはどんな男だ?」

竜蔵「背広を来て、背は高くもなく、低くもなくというところらしい」


 奈実がひぃっという小さな悲鳴を上げた。

 やはりこの間の男か?


剛史「その男の噂ならうちのばあちゃんも話してた。この辺りでは見かけない顔だって」

理人「それ例のストーカー?」

剛史「奈実さんの旦那?」

理人「タケ兄、旦那じゃなくて元旦那だよ」

竜蔵「なに? 奈実さんが狙われてるのか?」

理人「あれ?リュウ兄知らなかったの?」


 俺は蒼白になった奈実に話しかけた。


譲二「大丈夫?お水でも持って来ようか?」

奈実「大丈夫。ちょっとびっくりしただけだから」

譲二「奈実、実はリュウが言った男はこの間、ハルたちが来た時にクロフネを見ていた男と同じやつだと思う。」

奈実「え?そんなことがあったの? どうして黙ってたの?」

譲二「ごめん。その男はすぐにいなくなったし、その一回だけだったから気のせいかもしれなくて、奈実を怖がらせたくなくて黙ってた。本当にごめん」

奈実「私も…譲二さんに黙っていたことがある」

譲二「何のこと?」

奈実「伊藤くんからメールがあって、会社の子が和成さんに私のマンションの住所を教えたって。
それで、この間、和成さんから手紙がマンション宛に来てた」

譲二「なんで! そんな大事なことを俺に黙ってたの?!」


 ついきつい口調になってしまう。


奈実「ごめんなさい。譲二さんに心配かけたくなくて…」

譲二「そんな大事なこと! 知らなけりゃ何の対策も立てられないじゃないか!」

奈実「本当にごめんなさい。譲二さんには隠し事をするのはやめようと思ってたのに…」

譲二「いや…、奈実が謝ることはないよ。
俺も奈実に不審な男のことを話さなかったんだし…」

奈実「譲二さん…ごめんなさい」


2人でじっと見つめ合う。


理人「2人ともお熱いのはいいけど、僕たちがいること忘れてない?」

剛史「俺は続けてくれていい。観察してるから」

竜蔵「い…いや…譲二と奈実さんはやっぱり恋人同士なんだな…お、俺たちのことは気にしないでくれ」

理人「リュウ兄、真っ赤になってるよ」


 俺は咳払いした。


譲二「とにかく、どうすればいいか、相談しよう。その元旦那の手紙というのは?」

奈実「二階の机の引き出しに置いてある…」

譲二「じゃあ、取って来て」

奈実「でも…」


 奈実は視線をリュウたちに泳がせた。

 手紙にはあいつらには見せられないようなことが書かれているのかもしれない。


譲二「じゃあ、一緒に2階へ行こう。タケ、リュウ、りっちゃん…。すまないけど」

理人「僕たちは勝手にやってるから気にしないで…」

剛史「お構いなく」

竜蔵「俺らは、ここで待ってるから、行って来い」

 


その8へつづく


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『忍び寄る影』~その8

〈譲二〉
 奈実と2人で二階にあがる。

 どうして話してくれなかったのか? それを思うと、奈実に話しかける言葉を思いつかない。

 奈実は百花ちゃんの部屋の方に入り、机の引き出しから白い封筒を取り出した。


奈実「どうしても見なきゃダメ?」

譲二「そんなに俺に見られたくないの…?」

奈実「譲二さんが…嫌な思いをすると思う…」

譲二「それを心配して、黙ってたんだ…」

奈実「うん…」


 俺は奈実を抱き寄せた。


譲二「ありがとう。でも、今は奈実に危険が迫っているんだから、小さなことでも俺に隠さず相談して? その方が俺も安心できる」

奈実「わかった…ごめんなさい」


 奈実の手から封筒を受け取ると、便せんを開いて読んだ。


『愛しい奈実へ


 こんな書き方をしてごめん。

 君は僕のことをもうなんとも思っていないのかもしれないが、僕の気持ちは10年前と全く変わっていない。

 この間、偶然君に会って、10年ぶりに君を見て、やっぱり僕は君のことを愛しているんだと確信した。

 君は10年経っても変わってないね。見た瞬間、すぐに分かった。

 僕はそれなりに老けたと思うけど、君も僕を見てすぐに気づいてくれたね。

 あの時、僕たちの離婚の原因になった僕の誤解については本当に申し訳なかったと思う。

 僕の乱暴な行為のせいで、君を傷つけ、僕らの子供も失ってしまった。

 あれから、僕は悔やんで悔やんで、何度悔し涙を流したことだろう。

 自分の軽率な行為でこんなに愛している君を失ってしまった。

 この年月は取り戻せないものなんだろうか? 僕は今も君を愛しているというのに…。

 この前に君と一緒にいた人、僕らより随分若かったね。あの人は君の新しい恋人なんだろうか?

 あれから僕は嫉妬に狂ってる。あの人が君の恋人なんだろうかと思って…。

 もし、君がまだ1人ならもう一度僕とやり直せないだろうか?

 こんなこと虫のいいお願いだとはよく分かっている。

 でも、僕らが一緒に過ごした8年間のことを思い出して欲しい。

 あんなに愛し合っていたのに。

 君が僕を見つめる潤んだ瞳は今もまぶたに焼き付いてる。

 もう一度あの頃のことを思い出して。

 君の返事を待ってる。

 
                  和成』


譲二「…随分…熱烈なラブレターだな…」


 奈実が俺にしがみついた。


奈実「怖い…」


 彼女の不安を取り除きたくて…奈実をしっかりと抱きしめた。

 


 


 

『忍び寄る影』おわり