1.防衛三文書による防衛予算
いよいよ自由民主党は「伸るか、反るか」の大博打に打って出る以外に方法はなくなってしまった。そもそも、日本政府は2022年に起きたロシアによるウクライナ侵攻を、軍事増強する絶好の機会ととらえ、中国が台湾に侵攻すると同時に尖閣諸島にも侵攻が起こるという相関関係を恰も因果関係と錯覚させるイメージ操作を行ったうえで「防衛三文書」を作成し、莫大な防衛予算を獲得することに成功した。
そして、防衛力を安定的に維持拡充する目的で『我が国の防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保に関する特別措置法』を制定し、万全な体制をめざした。
その実際については、財務省「新たな国家安全保障戦略等の策定と 令和5年度防衛関係予算について」[1]でつぎの様に述べている。
『……
令和9年度には防衛費とそれを補完する取組を合わせ、現在の国内総生産(GDP)の2パーセントに達するよう予算措置を講じます。
抜本的に強化された防衛力は、令和9年度以降も将来にわたり維持強化していく必要があり、国家の責任としてこれを安定的に支えるためのしっかりした財源措置が不可欠です。令和9年度以降、防衛力を安定的に維持するためには毎年度約4兆円の追加財源の確保が必要となります。
抜本的に強化された防衛力は、令和9年度以降も将来にわたり維持強化していく必要があり、国家の責任としてこれを安定的に支えるためのしっかりした財源措置が不可欠です。令和9年度以降、防衛力を安定的に維持するためには毎年度約4兆円の追加財源の確保が必要となります。
…
令和9年度の整備計画対象経費を8.9兆円としている中、令和4年度の同経費5.2兆円との差額である約4兆円に対して、裏付けとなるしっかりとした財源が毎年度必要となる。
その財源確保に当たっては、国民のご負担をできるだけ抑えるため、あらゆる工夫を検討した結果、(1)歳出改革、(2)決算剰余金の活用、そして、(3)様々な取組により確保した税外収入等を防衛力整備に計画的・安定的に充てるための新たな資金制度「防衛力強化資金」の創設により、必要な財源の約4分の3を確保することとしている。
それでも足りない約4分の1については、総理から、「将来世代に先送りすることなく、令和9年度に向けて、今を生きる我々の将来世代への責任として対応すべきもの」として、「税制措置での協力をお願いしたい」旨表明された*3。(図表5:令和9年度に向けて新たに必要となる防衛費をまかなう財源)
その上で、令和4年度の中期防対象経費(5.2兆円)から令和5年度の整備計画対象経費(6.6兆円)への増額(1.4兆円程度)の財源については、歳出改革(0.2兆円程度)と税外収入(1.2兆円程度)により確保している。
また、令和5年度に防衛力強化のための財源として確保した税外収入の総額は4.6兆円程度であり、このうち、前述の1.2兆円程度を超える分(3.4兆円程度)は防衛力強化資金に繰り入れ、令和6年度以降の財源として活用することとしている。
その財源確保に当たっては、国民のご負担をできるだけ抑えるため、あらゆる工夫を検討した結果、(1)歳出改革、(2)決算剰余金の活用、そして、(3)様々な取組により確保した税外収入等を防衛力整備に計画的・安定的に充てるための新たな資金制度「防衛力強化資金」の創設により、必要な財源の約4分の3を確保することとしている。
それでも足りない約4分の1については、総理から、「将来世代に先送りすることなく、令和9年度に向けて、今を生きる我々の将来世代への責任として対応すべきもの」として、「税制措置での協力をお願いしたい」旨表明された*3。(図表5:令和9年度に向けて新たに必要となる防衛費をまかなう財源)
その上で、令和4年度の中期防対象経費(5.2兆円)から令和5年度の整備計画対象経費(6.6兆円)への増額(1.4兆円程度)の財源については、歳出改革(0.2兆円程度)と税外収入(1.2兆円程度)により確保している。
また、令和5年度に防衛力強化のための財源として確保した税外収入の総額は4.6兆円程度であり、このうち、前述の1.2兆円程度を超える分(3.4兆円程度)は防衛力強化資金に繰り入れ、令和6年度以降の財源として活用することとしている。
…
与党税制調査会では防衛力強化に係る財源確保のための税制措置に関する議論が行われ、最終的に取りまとめられた与党税制改正大綱では、税制措置について、令和9年度に向けて複数年かけて段階的に実施することとし、令和9年度においては1兆円強を確保することとされた。具体的な税目については、法人税、所得税、たばこ税が対象とされ、措置の施行時期は、令和6年以降の適切な時期とされた。
……』
つまり、令和6年度予算からは、法人税、所得税、たばこ税を中心に、令和9年度までに1兆円強に達するまで段階的に増税を行うと言っているのだ。ただし令和5年度は、新設した防衛力強化資金に3.4兆円があり、毎年1.2兆円ずつ取り崩しても約3年分は手当済であることから令和9年度に本格的な増税を行うと間に合うように制度設計されている。
また、令和9年度においては1兆円強を財源確保策は、復興特別所得税とたばこ税でそれぞれ2000億円程度、法人税で7000億~8000億円を想定している[2]。
軍備拡張を、法人税で賄うのはドイツが19世紀末に採用した方法である。
1897(明治30)年4月、ヴィルヘルムⅡ世が「世界の至るところで、我々はドイツの市民を保護しなければならず、また、世界の至るところでドイツの名誉を守らなければならない」と制海権確保を最優先するという演説を行ったことから始まった海軍拡張計画があった。この時の財源は、クルップなど重工業を中核とする会員数2万名を誇る「ドイツ植民地協会」であった。同協会が、海軍に協力したのは、戦艦建造という長い時間と莫大な費用を必要とする政策が動き出すことで会員企業は大きな受注を獲得できるためであった。
本年、日本政府が防衛費確保のためには法人税により確保しようとすることは、正しいし、経団連(日本経済団体連合会)も大賛成であるに違いない。
2.経団連が唱える不思議な消費増税
2023年9月12日、朝日新聞デジタル『財源「消費増税も」 経団連、少子化対策で提言』に次のような記事が掲載されている。
『……
経団連は11日、2024年度税制改正に向けた提言をまとめ、発表した。岸田政権が進める「異次元の少子化対策」など社会保障政策の財源をめぐって消費税を取り上げ、「中長期的な視点からは、引き上げは有力な選択肢の一つ」とした。景気への影響などを考慮しながら、政府に幅広く議論するよう求めた。
……』
この発言の趣旨から、経団連は、法人税による増税は認めるものの、GDPの50%以上をしめる消費に課税すべきであると言っているのである。
消費税は、平成元(1989)年4月1日、日本ではじめて消費税が導入されました。その後、国民の反発を受けながらも、1997年に5%、2014年に8%と段階的に引き上げられ、2019年10月には10%(飲食料品や新聞は軽減税率適用で8%のまま)まで引き上げられた。そうである。日本が失われた30年と云われるのは消費税の歴史でもある。
日本経済の中心的な存在である経団連は、日本のGDPが拡大することを抑制する政策を提言しているのだ。変わった経済団体である。
そもそも、経団連が発足することになったのは、昭和20年8月に軍需省がアメリカ軍の接収を避けるため椎名悦三郎が岸信介の命を受けて商工省(後の経産省)に移管したことから始まる。これに伴い、昭和21(1946)年8月に、軍需省から商工省へ移管した電力や鉄鋼を中心とする民間企業団体が設立した経済団体連合会(経団連)を起源とするものであり、もともとが岸信介を中心とする満洲人脈による組織なのだ。
3.消費税のからくり
消費税のカラクリに付いては湖東京至『輸出大企業の還付金・上位20社 湖東レポート』[3]が、その本質を突いている。
『……
消費税の4分の1が輸出大企業に還付されている。売上金が落ちても、還付金は増大している
元静岡大学教授で税理士の湖東 京至先生のレポート
ウクライナ侵攻やコロナ禍のあおりを受けた物価高で、材料費や生活必需品の高騰が続き、中小企業者や国民の生活はひっ迫し続けています。
コロナ禍による給付金や支援金もなく、赤字のため所得税や法人税の負担は少ないのに、消費税だけは納税しなければなりません。
消費税は、赤字でも納めなくてはならない「第二所得税」「第二法人税」といわれるように、中小業者いじめの酷税です。
そのため、消費税の滞納発生額は一番多くなっています。
ところが、トヨタなど輸出大企業は円安のおかげで輸出売上が伸び、消費税の還付金が軒並み増えています。
上記の表1は、2021年4月から2022年3月期の各社の還付金を推計したものです。
我が国の製造業上位20社の還付金合計は1兆7千億円を超えています。
トヨタの売上高はそれほど伸びていないのに、円安で輸出割合が高くなっているため、還付金は6千億円になっています。
コロナ禍による給付金や支援金もなく、赤字のため所得税や法人税の負担は少ないのに、消費税だけは納税しなければなりません。
消費税は、赤字でも納めなくてはならない「第二所得税」「第二法人税」といわれるように、中小業者いじめの酷税です。
そのため、消費税の滞納発生額は一番多くなっています。
ところが、トヨタなど輸出大企業は円安のおかげで輸出売上が伸び、消費税の還付金が軒並み増えています。
上記の表1は、2021年4月から2022年3月期の各社の還付金を推計したものです。
我が国の製造業上位20社の還付金合計は1兆7千億円を超えています。
トヨタの売上高はそれほど伸びていないのに、円安で輸出割合が高くなっているため、還付金は6千億円になっています。
税収が赤字の税務署の管内には、輸出大企業がある
2022年3月期の輸出還付金の合計額は、政府統計がまだ出ていませんが、筆者(湖東先生)が推定するとおよそ6兆6千億円になります(国税分と地方消費税の合計)。
これは、政府の消費税収予算26兆円(国税・地方消費税の合計)の25.4%に相当します。つまり、消費税の4分の1が輸出大企業に還付されていることになります。
各社の還付金額を国税庁・税務署は公表しませんし、企業も発表しません。
上記の表に示した還付金額は、筆者が各社の決算書などから推定計算したものです。ただ、国税庁は毎年、税務署ごとの還付金額を公表しています。消費税の還付金額のほうが、徴収税額を上回る税務署が全国で11カ所ありました。
これは、政府の消費税収予算26兆円(国税・地方消費税の合計)の25.4%に相当します。つまり、消費税の4分の1が輸出大企業に還付されていることになります。
各社の還付金額を国税庁・税務署は公表しませんし、企業も発表しません。
上記の表に示した還付金額は、筆者が各社の決算書などから推定計算したものです。ただ、国税庁は毎年、税務署ごとの還付金額を公表しています。消費税の還付金額のほうが、徴収税額を上回る税務署が全国で11カ所ありました。
……』
そうなのである。消費税の4分の1は輸出大企業に還付されているのだ。その総額は2021年度1兆7074億円である。
ここで、岸田内閣が消費税を10%から15%に引き上げた場合に、還付を受けている大企業が受け取る総額はいくらになるのか。
2兆5611億円である。
その差額は8537億円となる。
この8000億円という数字は、どこかで見覚えのある数字である。
そうである。防衛費増額に伴う法人税を増税して確保する7000億~8000億円なのである。
岸田政権は、経団連と談合して、防衛費増額に伴う法人税徴収分に見合う消費税還付をおこなおうとしているのだ。つまり防衛費増額は、消費者が賄うことになるのだ。
岸田、汚いぞ。
経団連、汚いぞ。
経団連を中心とする経済界が防衛費負担増を受入れるふりをして、消費税還付でそっくりそのまま日本政府から返してもらうのである。
4.岸田政権の大嘘
2023年9月26日、自由民主党はホームページに「税収増の成果を国民に還元 岸田総理が経済対策の方向性示す」とするコメントを掲載した。
『……
岸田文雄総理は9月25日、記者団に対して政府与党が来月中に取りまとめる経済対策の方向性について説明し、「成長の成果である税収増等を国民に適切に還元する」として、成長力強化に向けて賃上げ税制の減税制度を強化し、持続的な賃上げを実現する考えを強調しました。
岸田総理は経済対策の目的について「物価高に苦しむ国民に成長の成果を適切に還元し、日本経済が長年続いていた『コストカット型経済』からの転換を図る」と表明。各種の給付措置に加え、税制や社会保障負担の軽減等を行い「熱量あふれる新たな経済ステージへ移行する方向感を明確かつ確実にする」と決意を示しました。
岸田総理は経済対策の目的について「物価高に苦しむ国民に成長の成果を適切に還元し、日本経済が長年続いていた『コストカット型経済』からの転換を図る」と表明。各種の給付措置に加え、税制や社会保障負担の軽減等を行い「熱量あふれる新たな経済ステージへ移行する方向感を明確かつ確実にする」と決意を示しました。
……』
白々しい嘘である。
国民が長く続く物価高に苦しむなか、即効性のある「所得税減税」や「消費税減税」「ガソリン税減税(トリガー条項発動)」などは見られない。ネット上では「偽減税」という言葉も飛び交っている。
全くその通りである。
やはり、自由民主党は、自衛隊指揮権、電波権、航空管制権という日本の主権をアメリカに売渡すことで、70年の長きに渡り国内政治を牛耳ってきた。そのうえ、さらに莫大な防衛利権を手に入れるため、無理やりに周辺諸国を仮想敵国に仕立て上げて、まんまと、国民を騙したうえに、今度は、その予算を、少子化対策のため消費税を15%にするという虚言を弄して、またまた国民を騙して賄おうとしているのだ。
自由民主党は、もはや狂気の沙汰である。
さらに、自由民主党の分身である犯罪者集団統一教会に対して解散命令を裁判所に求めることにしたが、本当に統一教会を解散するときは自由民主党もなくなるときである。
単なる裁判の長期化を狙ったものでしかない。
最後に前述の湖東京至先生の極めつけの至言を一つ[4]。
『……
大企業が「フランスの最高傑作品」と「消費税」を褒め称える理由。それは企業に還付金を与えられるから
湖東―― フランス政府が自国の輸出企業を応援するために、「直接税」だった付加価値税を、無理やり消費税という「間接税」にしたことで、錯覚を起こしやすい税金にしてしまった。
フランスは輸入が多くて、輸出が少ない。クルマのルノーもなかなか売れない。それで悩んで考えた末に、「一生懸命やっている輸出企業を応援しようじゃないか」となった。応援するにはどうしたらいいかというと「税金をまけること」ですよね。
でも、「GATT(関税及び貿易に関する一般協定)」という協定で法人税を下げることが禁止されている。「じゃあ、間接税ならいいんじゃないか」ということで、本来、シャウプ博士が考えた「直接税」であった付加価値税を「間接税」として導入したんです。
これは「大企業に還付金を与えるために考え出したもの」です。
フランスは輸入が多くて、輸出が少ない。クルマのルノーもなかなか売れない。それで悩んで考えた末に、「一生懸命やっている輸出企業を応援しようじゃないか」となった。応援するにはどうしたらいいかというと「税金をまけること」ですよね。
でも、「GATT(関税及び貿易に関する一般協定)」という協定で法人税を下げることが禁止されている。「じゃあ、間接税ならいいんじゃないか」ということで、本来、シャウプ博士が考えた「直接税」であった付加価値税を「間接税」として導入したんです。
これは「大企業に還付金を与えるために考え出したもの」です。
……』
以上(寄稿:近藤雄三)
[2] 読売新聞オンライン『自衛隊施設の整備費、建設国債1・6兆円充当へ』https://www.yomiuri.co.jp/politics/20221212-OYT1T50207/
[4]『絶対におかしい消費税!【2】」税の基本理念が破綻している!「消費税は、弱い者いじめ税!」この“悪税”を廃止にしなければ国民の“幸せ”はない!」