こっちゃんと映画をみまちょ♪

レビューと呼ぶほど中身なし。しかし中身が無いのも中身のウチよのぅ。・・・なんちって。

砂と霧の家 (2003)

2005年11月15日 | いかすMovie
こっちゃんポイント ★★★★
鑑賞環境  こっちゃんシアター 
上映時間 126分
製作国 アメリカ
公開情報 劇場公開 (ギャガ=ヒューマックス)
初公開年月 2004/11/06
ジャンル ドラマ

亡き父が残した海辺の一軒家に住んでいるキャシー・ニコロ(ジェニファー・コネリー)。結婚生活に失敗し、夫に去られた彼女は、仕事もなく一人失意の日々を送っている。遠くに住んでいる母には、そのことを言えず、「幸せにしている」と電話で嘘をつくキャシー 。そんなとき彼女は、たった数万円程度の税金未払いから、家を差し押さえられてしまうことになってしまう。後に、それが行政の手違いであったことが判明するが、すでに家は他人の手に渡っていた。(作品資料より抜粋)

 

観終わった後、実に複雑な心境に襲われてしまう 重い重い映画。

意外にもこの映画を、心温まるホームドラマとして鑑賞にのぞんだ方が他には多かったと聞きます。何故?と思いましたが、どうやら公開当時のこの映画のキャッチ・コピーに謎が秘密があったようですね。

【失って、初めて気付いた。求めていたのは家(ハウス)ではなく家庭(ホーム)だったと・・・。】

これでは間違えても無理はないか?

しかし、このポスターの色使いの暗さは とてもとてもそんな映画ではないことをにわかに感じさせます。 観終わった感想は心温まるどころか想像以上に悲惨な話。キツイです。

一軒の家を巡って起こる争いと悲劇。

一人は離婚によるショックから立ち直れないアメリカ人女性
そして、もう一方は亡命したイラン人の家族

この映画の悩ましいところは、観いていると
正直どちらに感情移入にしてよいものか迷ってしまう点。

事の発端と言えば、キャシーが郵便物を見なかったがために、持ち家の差し押さえに至ってしまったのが原因。そして、競売でその家を手に入れたイラン人は、転売目的であったがためにお金にこだわってしまった。結果として、それがこんな風に事態を悪化させてしまったのです。
とは言え、『行政上の誤りによる被害者』という点では、双方同じでどちらにも同情の余地があるし・・・・・。とまぁ、色々考えさせられてしまうのですネ。

この物語の主人公、家を追われた者も、また家を手に入れた者もどちらも弱かった。
だからこそ、この家にすがるしかなかったのですね。

しかし、気がついたときには歯車はすっかり狂ってしまっていました。
もう後戻りは出来ない。

これは余談ですが、自分にも実家があり そこでは今でも父と母が元気で暮らしています。
その家は当時大工であった父が自分の腕ひとつで建てたという家。
何十年もの風雪に耐え 今でも傾きもせずに建っています。
例えば、例えばですよ、どんな事情にせよ父がその家を手放すことになったら・・・・・。
父は果たしてその時どう思うのだろう?そんな事をふと考えてみました。

こっちゃんには持ち家がありませんから、父の心境で考えてみたわけです。

父が初めて一人立ちして建てた家。当時、決して豊かとは言えなかったその生活とは釣りあわぬほど大きな借金を作り、母と汗水流しながらこの家を守ってきたと聞きました。それを聞けば父がこの家をそう簡単に手放すわけがないのは想像に難くありません。

もしこの映画のような状況に陥ったら、ショック状態になってしまうかもしれませんね。『家』というもの。そこには、アカの他人などが到底理解出来ない心理が同居しているのですね

そんな視点で観ちゃうと、この映画は実にがく~んときます。人事ではなく、かなりの勢いで深刻な映画になってきます。映画を既にご覧になった方々の中には、やり切れない想いだけが残ってしまった方も多かったのではないでしょうか?

この映画の結末をもってしては、「彼女も違った頼み方があるだろ?」とか、「ハゲ親父も意地の張りすぎ!」などと、そんなコトを言っても仕方の無いこと。
どちらもただ、幸せになりたかっただけなんですもの。
「普通」の暮らしを望む「普通」の人でしかなかったように見えます。

しかし、時として「普通」というものが牙をむく。そして悲劇が生まれる。
世の中にはこういう「普通」の人同士が、
己の幸せを求めて傷つけあってしまうことが意外と多いのかも知れません。

この映画の場合、それぞれの暮らしが家を巡って交差し 争いになってしまっただけなのだ、と。

片や「父の想いを人に手渡すことなど出来ない」アメリカ人。
片や「ここを出たら行き場などない」イラン人。

互いが求める家がたまたま同じ家だっただけ。
こっちゃんは、最後までどちらが悪いと言えませんでした。

「この家はあなたの家ですか?」最初と最後に登場するこのシーン。
その問いに対してのキャシーの答えに、虚しさの全てが押し込まれていました。
重いです。

心に深く突き刺さるという表現がピッタリの映画でした 。後を引きます。

《2006.08.01記事一部改訂》

 

【作品】砂と霧の家  

砂と霧の家 特別版

ジェネオン エンタテインメント

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