こっちゃんポイント ★★★★★
鑑賞環境 こっちゃんシアター 上映時間 80分 製作国 アメリカ 公開情報 劇場公開 (ギャガ・コミュニケーションズ) 初公開年月 2004/10/30 ジャンル ドラマ/コメディ
アメリカ中のキッチンで、七面鳥が主役になる感謝祭の日。ニューヨークで恋人のボビー(デレク・ルーク)と暮らすエイプリル(ケイティ・ホームズ)は、生まれて初めての料理と格闘していた。郊外に住むもう何年も会っていない家族をディナーに招待したのだ。仲の悪い母親が、ガンのために余命わずかと知ったエイプリルは、人生最大の勇気を振り絞って母の好きな七面鳥のローストを作ろうと決意するが・・・。
(goo映画より抜粋)
自身の演技よりも、トム・クルーズとのラブラブちゅっちゅぶりの方ですっかり有名になってしまったケイティ・ホームズ。速攻で妊娠。ここまできてまさか!の大どんでん返し破局説(トムさんは否定してますが)などなど...その後もシッカリ世間に話題を提供してくれております。
さてそんなことはともかく、ケイティ・ホームズが主演のこの作を観てみてビックリ!正直、彼女の映画でこれほど良いモノがあるとは知りませんでした!ブログのお友達の間では、にわかに話題になっていたのでズーッっと気にはとめていたのですけどね。
実に良いですね~、これ。
それにしても、ここ最近の映画としては極めて短い80分という上映時間の中に、なんと多くの感情の揺れ動きを盛り込んだのでしょうか!
しかもその一つ一つが「やっつけ」的にならず、とても丁寧に描かれて行きます。
朝の7時。
どう見ても早起きサンには見えない女の子エイプリルは、恋人の黒人男性ボビーに叩き起こされます。
「今日は大切な日。準備しなきゃ。」
そうです。感謝祭のこの日に彼女が計画していたのは、離れて暮らす家族を招待し、七面鳥の手料理で迎えることでした。
生まれてこのかた「手料理」なるものを一度も作ったことのないという彼女が、何故にそんなコトを急に思い立ったか?その奥にある「家族愛」というものがひしひしと伝わってくる映画なんですねぇ。
「なんでわざわざニューヨークに行かなきゃならないの?料理ならわたしが作るわよ!家庭科だって”A”なんだから!」そんな風に無駄な抵抗を見せる妹をはじめ、正直、家族全員乗り気ではないご様子。
そんな空気を察して穏やかに家族に語りかけるパパがなんともイジらしい。優等生ではないエイプリルを必死にかばってマス。
「前は麻薬密売人と付き合っていたが今のボーイフレンドは”パパ似”らしいから大丈夫」など苦しい弁護。
パパの中には「今しかない」という思いもあったんですね。何故ならママはガンに侵されていたから。彼女の心の蟠(わだかま)りを察して、死ぬ前に取り除いてあげたいという優しさの持ち主のようです。
長男は常にカメラを持ち歩き、家族の思い出をその中に”記録”する。妹は家族の前では良い子を装うけども可愛げがない。ボケたバァちゃんは、孫の顔すら分からない状態。そしてママは・・・・自分を曲げず、憎まれ口や家族の笑えないブラックなジョークを平気でその口から吐き捨てる。
こんな家族のニューヨークまでのドライブは初めから一筋縄で行かないわけですよ。途中での買い食い、記念撮影、そして急に航路変更。その上、リスらしき動物を跳ねちゃったりね。うわわ(>ω<)
その一方で、もっとドタバタを繰り広げてるのが主人公の少女エイプリル。
何しろ肝心の七面鳥を焼くオーブンが故障しちゃってる!そんなコトに当日の朝いきなり気がつくという、この致命的なミスに大慌て!
だってね、ムリもないんです。日頃から料理なんかしない彼女が、オーブンの点検なんかしてるわけがない。
七面鳥を焼くために余熱と・・・。おっといけない!その前に、まず中の貯金箱や小物を出して・・・って。
ヾ(・ω・o) ォィォィ、いったいオーブンに何入れとんじゃッ!
まったく、呆れるかぎりです。
せっかく母親や家族のために「生まれて初めて手料理を作るわ!」って思い立ったというのに、肝心のオーブン君は全くの無反応。彼女の心境としては、今働かないでいつ働くのよアンタ!ってカンジなんでしょーね。
ま、そんなことオーブンに言ってもしょうがないんですけど(笑)
実はこのお話の大切な背景として、娘と母親の間の”不仲”があるんですが、それはこの映画を観ていればこちら側にもイヤと言うくらいシッカリ伝わってきます。
とにかく母と娘双方ともに「いい思い出などない」と言い切るほどの悲惨さ。
娘は娘で、恋人ボビーが今日の日のために買ってくれた陶器の調味料入れを見て、母に叱られたイヤな過去を思い出しテンション急降下。
母親に至っては「美しい思い出はひとつしかない」と家族に話せば、それはエイプリルじゃなくて、妹のことだったり。記憶が錯乱しちゃってる。もうサイアクです。
こんな親子が感謝祭のこの日に久しぶりに顔を合わせたとしても、いきなりパパが言うような「楽しい日」になるなんてとても思えませんよね。
それでも、「来るか来ないか分からない」と自分で言いつつも、本当はそれを心のどこかで信じて待ち望み、七面鳥を焼き上げなきゃとアパートを上に行ったり下へ降りたり頑張るエイプリル。
きっと彼女自身も母親の病気を知り大きなショックを受けたのでしょう。心のモヤモヤをこのままには出来ないと思ったのですね。
自分のためにも。そしてママのためにも。
「がんばれ、がんばれ!」
そのあまりに一生懸命な姿を観ているうちに、そんな風にいつしか彼女を心の中で応援していました。
オーブンを貸してくれる人を探し求め、アパート中のドアを叩くエイプリル。そこで出会う他人との触れ合い。自分の悩みを受け入れてくれた”理解”あり。自分自身のしてしまった礼儀知らずの振る舞いに対する”仕打ち”あり。言葉が通じなくても自分を受け入れてもらえた”人情”あり。
たかだか料理、されど料理ですわ。
彼女はこの感謝祭の七面鳥料理を通して、苦悩、失望、怒り、悲しみ、感謝、喜びなどの人間の持てる様々な感情を「舌」ではなく「心」で味わってゆくんですね。
さぁ、家族が来るまでに七面鳥は無事焼けるのか?
いやいや。その前に家族はちゃんと来るのか?
タイムリミットが迫るなか、生焼け七面鳥の誘拐事件まで起きてしまうこの映画。楽しいですよ~♪
エイプリルの恋人ボビーは「愛の力」を強く信じる好青年。しかし彼は肝心な時に近くにいませでした。
実は彼は彼でエイプリルのために「この日」が最高の日になるようにと、別なトコロで頑張っていたんですね。でも、そのお陰で”面倒”にも巻き込まれてしまいます。
やがてニューヨークに着く家族の車。荒んだアパートを前に「ここじゃない」と呆然。そんな時に血を流した黒人男性が現れ車にへばりつく。一家は顔面蒼白・・・そして逃亡。泣きじゃくるエイプリル。
さぁて、感謝祭はハッピー気分で終われるのかな?
それは最後まであなた自身が見守ってあげて下さい。
エイプリルは決して”家族を喜ばせる良い子”ではなかったのかも知れませんが、「家族愛」を忘れずに大切に胸の奥にしまってきた娘です。だから泣きます。いっぱい泣きます。
そして母親もまた、そんな娘の母親だと最後には分かります。
脚本はあの「ギルバート・グレイプ」のピーター・ヘッジズと聞き、大いに納得しました!いかにも彼らしい心に染み渡る名作ですね。
他の何にも代え難い「暖かいラスト」が忘れられません。
《2006.08.15記事一部改訂》