二胡工房 光舜堂

二胡を愛する全ての人へ

3月25日(日) 自分好みの音色を選べば良いと思います   11:00~17:00

2018-03-30 22:06:56 | ○営業日の報告日記
皆様のお住まいの地域は桜が開きましたか?
工房界隈は『花咲か爺』を彷彿させるように一晩で満開になりまして、
花の下で桜餅など楽しみたいところですが、現実は花粉症最盛期。
うっかり何かを頬張るなんて、命懸けの行為なのでした。。。

二胡を愛する皆様こんばんは、鞄持ち、改め、鼻炎持ち ほぉです。
効き目が薄れることを恐れて日曜日しか薬を服用しないでいるのですが、
営業中に尋常ではない睡魔が襲ってくるのは、
鼻炎薬のせいでしょうか? うららかな春のせいでしょうか?
東京は花いっぱいの春が到来しましたよ!
それでは、今週も遠くから近くからお越しいただきました報告をば。


それにしても日々思いますが、
難しいですね、二胡という楽器の扱いは。

ものすごく安く入手しても二胡、
ものすごく高額を払っても二胡。。。
そこには持ち主さんの想いが加算されると大逆転が生じたり、
気持ちが高まったり離れたりの変動の振り幅が、非常に大きい気がします。

それから音色に対する想い入れも人それぞれで、
雑味だらけの音を”二胡の音色”とする人もいれば、
澄んだ、透明感のある音色を本場で弾く人もいる。
そういう多様な音色を楽しめる楽器であると同時に、
完成度の低い民族楽器ならではのダメージの受けやすさで、
あちこちに音色に多大な影響が出る不具合が生じていながらも
自分が聴いた音色を”二胡の本当の音色”と定めてしまうのも、
二胡の良さでもあり、残念なところでもあると思います。
ハイポジションは曲演奏に支障が出ようとも
第一ポジションで出る籠った音色を好む人もいるし、
寿命の尽きる直前の、いびつに緩みきった蛇皮のたるんだ音こそ
二胡の音色なんだと思い込んでいる人も結構います。
また、かなり不具合があったとしても、演奏技術が高ければ
音色を自分色にも出来たりしますし、
長く弾いて来て耳馴染になった音色に愛着がある人もいるでしょう。

そんなわけで、この日曜日にいらした或るお客様の二胡は、
あちこちに不具合がたくさん出ていましたが、
現状の音色がお好きとのことだったので調整はしませんでした。
メインの楽器ではないので至急直す必要が無いことと、
中途半端にお金をかけて直せるレベルではないほどの不具合と、
皮がもう限界な状況だったのです。
「このまま好きな音色で弾いて、いよいよ音が出なくなったら、
その時にどうするか考えると良いですよ」
そんな風に、今の音がお客様の気に入っていらっしゃる音色なら、
あえて何もしない事も時にはあるのでした。

しかしすぐ後に次のお客様がいらしたので、
先のお客様にも、調整するとどうなるかを見ていただく事も出来ました。
調整は全体のバランスを見るので、部分的に駒だけ、とか、
単に千斤だけを巻く事ではないのを解っていただけたんじゃないかと思います。

(かと言って、全体のバランスだからと、
或る楽器店の調整のように全分解して組み立てても、
その分解した事で緩んで後から光舜堂に来るはめになる人もいるので、
どこの誰にお願いするかは、もう自己責任で判断するしかないでしょう。。。)

ちなみに弦は、光舜堂では店主が金属の状態を読めるので、
どれもこれも取り換えてしまうようなことはしません。
「弦を替えて欲しい」とのご依頼で診てみると、
まだまだ今これから音が出てくる状態の弦もたくさんあります。
演奏会に照準を前もって合わせて替えておきたい方以外は、
状態の良い弦はやたらに替えたりしないんですよ。
また駒も、確かに光舜堂の有料駒は高額ですが、
やたらに売りつけたりしません。
欲しいという方には効力が大きいからこそ使って調整しますが、
ご予算的に厳しい方には、お手持ちの駒を加工して調整に使います。

さて、この日のこの2番目のお客様Kさんは、
二胡姫さんの通販で光舜堂の『彪駒』を入手していて下さったので、
それを使おうとしましたが皮が変化して駒の高さが足りませんでした。
そういう時はまた加工したりするのですが、
この楽器の場合は、、、と『モドウッド駒』に替えてみました。
すると良い音!

「どうしますか?この音で良ければ替えますからタダですが」
「え?!」
「駒、使わないなら2つはいらないでしょう。長く使わないと育ちませんよ。
どちらの音が好きですか?」
「え?え?え?取り換えた方ですが。。。???」
店主の話にお客様がちょっと混乱されたようなので、ワタクシが補足説明。
「二胡姫さんで買ってもウチの駒ですから、
こっちの駒の音色が良ければ交換で済むんですよ。
どちらも捨て難く両方欲しい場合は新たに駒代がかかっちゃいますが、
Kさんは取り換えた方をお好きなようだから、駒の代金は要らないんですよ」
「そんな事でいいのですか?!」

いやー、ねぇ?他のお店ならまさしく”稼ぎどころ”だと思うのですよ?
しかし光舜堂では、店主がその方針を決して変えようとしないので、
光舜堂では交換駒にはお金取らないんです。
1つ1つ値段は高めかもしれないけれど効果があるからで、
でも弦も駒も、必要無い物には無駄な出費はさせないのです。
弓はなるべく福音弓をお勧めしたいけれど、
それも高いし直ぐに提供出来ないから、お客様の弓が直せそうなら直しちゃう。
この日も、2本お持ちのうちの1本目が不良品だったお客様の弓、
使いづらくて仕方なくもっと高いのを買ったという2本目より
最初の弓の方がワタクシが試しても使いやすく
全体に質が良かったので、それを直しました。
まぁ結局その方は福音弓をご注文されましたが。
でも、福音弓が来るまでの間の、より良い弓がゲット出来ました。


さて午後は賑やかで、CDM改造退院のSさんハイテンション!
今までも調整にいらした時はニコニコされてましたが
どちらかといえばおとなしいタイプのSさん。
なのに、音が全然出なかった楽器が甦ったら、初対面のお客様にも
「私のこの楽器、この音が出てなかったんですよ!!」と、
キラキラの笑顔で自慢して本当に嬉しそうでした。
そんな誇らしげなSさんに、まわりの方々も
「CDM、いいなぁ、私もやりたくなっちゃうなぁ」と羨ましそう。

CDMに改造した方が二胡を持って行って弾いた先では、
見た目で判断して音色をあれこれ言う人もいるようですが、
それは蛇皮でないことを”見ているから”で、そういう人ほど
ブラインドで聴いたら聴き分けられないんですよね。
あるプロの音響の方がCDMを本格的な機材でデータを取ったら、
その結果は蛇皮と酷似していました。
残念ながら光舜堂直依頼での実験ではないので、結果データは
申請しないと公に出せず、ここではお見せ出来ませんが。
(そもそも店主は機材であれこれ音色計測するのを好きではないので
あまり重要視してないですし)
でもまぁ、だから、CDMに改造した方々、
音色に関して誰がどんな事言って来ようが自信を持って下さいね。
自分の耳に心地良い音であれば良いではないですか♪

ご来店の皆様、ありがとうございました!
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