花追い放浪記

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オオミヤマウズラ コウの花図鑑

2023-09-20 | コウの花図鑑

9月に見つけた野草の花

 

オオミヤマウズラ(深山鶉)

 Goodyera crassifolia

 

ラン科 シュスラン属

花 期 : 9~10月

生育地 : 山地のやや湿り気のある林内

分 布 : 関東~九州

RL指定 : なし

撮影 9月 大分県

 

以前からガクナン(オオミヤマウズラ)として広く認識されており、シュスランとミヤマウズラの雑種とされてきた植物は、2008年に芹沢氏により分類学会で非公式に発表されたが、2010年には韓国からG.× tamnaensisが発表された

通称オオミヤマウズラの学名においてG.tsukamotoi、Goodyera sp、G.crassifoliaが同じ分類群で、韓国で発表された G.× tamnaensisのみが異なる分類となる

G.crassifoliaとミヤマウズラは、形態的差異だけではなく、染色体数が異なり繁殖様式も異なる(G.crassifoliaは無配生殖)

さらにMIG-seqによりG.crassifoliaは、形態学的、生物学的、系統学的種概念の全ての点で、独立種と考えるのが妥当との結論が導かれた

結局、日本国内には2種の通称オオミヤマウズラが存在し、ひとつは独立種のG.crassifoliaで、もうひとつはシュスラン×ミヤマウズラの雑種 G.× tamnaensis(千葉県産)である

 

G.x tamnaensis(雑種)について述べておくと、韓国の済州島で発見され、核ゲノムのITS領域と葉緑体ゲノム配列等によりシュスラン属の新種と提案された Lee et al.(2006)

また、韓国における未発表のシュスラン属分子系統解析により、G.x tamnaensisはミヤマウズラとシュスランの雑種である事が強く示唆された

私個人として特筆すべき形態は、花の色が淡い赤みがかったピンク、苞の色が淡い緑がかった茶色といった点で、それらはG.crassifoliaとは異なっている

もうお分かりでしょうが、私が撮影した個体は、G.crassifoliaで、下図の論文に添付されていた当植物の画像をみると、私が観察した個体と同様なものと考えます

おそらく、大分県のG.crassifoliaは正式に報告されていないのではないかと思います

 

①論文に添付されているG.crassifolia

G.crassifoliaと近縁種の区別点は、ササ科の葉の質感、花序にまばらにつく花、長い花柄子房、あまり開かない大きな花、および側付属体を持つ蕊柱である

※すいません 画像を無断転載しました

 

②私が大分県で観察した個体

葉に入る斑の濃さや模様まで論文の画像とそっくりです

花柄子房は、ミヤマウズラより長いと思います

 

系統の概念図

※私が分子系統解析を参考にして作成しました

引用)

Morphological, ecological, and molecular phylogenetic approaches reveal species boundaries and evolutionary history of Goodyera crassifolia (Orchidaceae, Orchidoideae) and its closely related taxa
Kenji Suetsugu, Shun K. Hirota, Narumi Nakato, Yoshihisa Suyama, Shunsuke Serizawa

 

初版 2023年9月20日

画像アップロード 20230919

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