虹の国へ-日々を楽しんだり嘆いたりしちゃったりして-

平成21年度3次隊青年海外協力隊として
南アフリカ共和国での活動記録

異分母分数のたし算-Gr.7-

2011-11-08 23:49:54 | 南ア-算数-

今週は、Schoemansdal地区の小学校。

今日は、Gr.7で「異分母分数のたし算」です。

実は、この単元は、毎年年度の初めに行うもので、
いまの時期にこれを行うのは、本当は違うのですが、
たまにそういったカリキュラム通りに教えない教師がいます。

前にも書いたとおり、週案を書く習慣のない南アの教師にとって、
指導内容が漏れる可能性が高まるこのやり方は、お勧めできません。

あらかじめ書いておきますが、
今日の話は、算数のちょっと専門的な話なので、興味のある方のみご覧ください。

南アの算数科教育の課題を紹介したいもので。

さっそくですが、今日の問題。

1/3+2/7 (分数のたし算)

これを子どもたちはこのように回答しました。

答えはあっています。

ただし過程は間違っています。お気づきでしょうか?

1/3と2/7を通分するとき、
分母の3と7の最小公倍数である21に揃えます。

そのとき、1/3=1×7/3×7=7/21ですが、上記の回答では、6/21になっています。
(2/7の通分が先にきているからですが‥)

こちらの教師は、答えが合っているので、過程はどちらでもいいと教えていますが、
これを認めると、すぐにうまくいかなくなります。

というわけで私が次の問題を出しました。

4/5-1/4(分数のひき算)

この問題を先のやり方で解くと、次のようになります。

どうでしょうか。
あり得ない順番になったせいで、ひき算ができず、無理やり逆に引いています。

これも答えが合っているので、OKとできますか?

もちろんできませんね。

そこで、何故このような解き方になったかを吟味してみると、
またまた子どものノートから次のような回答を見つけました。

そうです。彼らはクロスして答えを出しているのです。

そのため、最小公倍数として答えを出しているのではなく、
単純に分母同士をかけて答えを出しているわけです。

したがって、クロスを重視するあまり、単純に順番が逆になってしまったと考えられます。

そう考えると、先ほどの回答も納得できます。(再掲)

本当なら分数のたし算をする際に、何故通分するのかなどを分かりやすく教えたいのですが、
こちらの現場の教師の多くが、
答えがあっていればそれでいい的な安易な思いで教えています。

これを何とかできないか、私は未だに悩んでいます。

先日、理数科教師としてFET(職業訓練校)で数学を教えている隊員から、
現地の教師は、途中式は書いてなくても(合ってなくても)
答えがあっていれば点を与えていると聞きましたが、
これも結果のみで過程を重視しない南ア人の性格を顕著に表しているような気がします。

最後に、子どもたちのノートは、
教師がどんな教え方をしたか、その結果どの程度理解したかを図る指標です。

今回も子どものノートが
教師の教え方の未熟さを指摘してくれました。

こういうなぞ解きは、私は結構好きです。

現地の先生たちにもぜひ子どもたちのノートから学んでほしいものですね。


南アの学校教育の課題-5-

2011-11-08 12:03:45 | 南ア-その他-

先日、私と同じ任地に配属される予定の後輩隊員の方から、
当ブログを見ていただいているとの報告を受けました。

現在、福島県の二本松訓練所で派遣前訓練を行っているようなので、
無事に訓練を終えられることを祈ると同時に、
ちょうど2年前に私もその場にいたのだなと懐かしく思います。

さて、昨日に引き続き、
南アの学校教育の課題について書きたいと思います。

今日のテーマは、「強すぎる教職員組合」です。

はじめに日本ですが、日本の教職員組合といえば、
「日教組」と「全教」、「全日教連」等があります。
(日教組‥日本教職員組合、全教‥全日本教職員組合、全日教連‥全日本教職員連盟)

日本の公務員にはストライキ権がありません。(国家公務員法第98条、地方公務員法第37条)

では南アの教職員組合はどうでしょうか。

南アの教職員組合といえば、「SADTU」や「PEU」があります。
特に、「SADTU」は、全国でもたくさんの教師が参加している大所帯です。

また、当ブログでも何回か触れたとおり、
南アの教職員組合は、ストライキ権を持っています。

しかも日本の組合に比べて、かなり強い権限を持っています。

以下、その例を挙げてみます。
・賃上げのストライキを行う
→賃上げのためのストライキを行います。それも結構な頻度で。
(昨年の賃上げ交渉のストライキは、約1ヶ月間強続きました。)

・教育委員会が主催するワークショップへの参加を拒否
→今ターム、教育委員会ともめたせいで、
教育委員会主催のワークショップを行うことができません。(リンク)

・一日実質6時間しか働かない
→午前7時から午後2時までの7時間が勤務時間(途中1時間休憩)なので、
実質6時間しか働かない。他の南アの公務員は8時間労働が基本なのにです。

・どんなに大事な会議でも時間が来ると帰宅する
→これは、本当に多い。ワークショップの途中でも平気で帰る教師がとても多いです。

・簡単に首を切られない
→上記のように組合がかなり力を持っているので、
教員が多少問題を起こしても、首を切られないという意識が高い。

このように、教職員組合が強い南アの学校教育は、健全ではありますが、
アパルトヘイト以降、政府による統制が弱体化して、
相対的に組合が強くなりすぎている現状は、やはり厳しいと言わざるをえません。