先週風邪で寝込んでいたので、読もうと思いつつほっておいた本を一気に読みました。
忘れないうちにメモ
「花腐し(はなくたし)」松浦寿輝 著
世の中全てを腐らせていく五月の雨のイメージの中、過去の女の記憶と疲れ果てた現在を織り交ぜて描いた幻想的な作品。芥川賞受賞作。
こういう終末思想を超えた、全てに対する諦めをテーマにした小説は多いと思いますが、「雨」をキーワードにしているところに好感です。
単に雨が好きだからなんですが、同じ大きさの傘をさしても必ず一人だけずぶ濡れになる主人公ってのがいいですよね。
傘の下から雨に引き寄せられてしまう、水の引力に魅力を感じます。
全体的には、まあ、あるよねっていう構成だと思うけど。
「ビタミンF」重松清 著
大衆向け直木賞。
この作家の小説を初めて読むので、よくわかりませんが、
「つまらないことを、つまらない言い方で伝えた」
という中年のお父さんの独白がこの作品の存在全てを語ると思います。
「犬婿入り」多和田葉子 著
これは芥川賞。
別に過去の受賞作を読み漁ろうという気はないのですが、人に勧められたり自分で気になったりして、でもすぐには読まない本というのが基本的に芥川賞、直木賞なんじゃないかと勝手に定義する訳で、一気に過去受賞作を三冊も読んだことに言い訳をつけなくてもいいと思いますが、まあそんな訳なんです。
私はこの作品が一番読み易くて、良いなあ、と思わせられました。
板東眞砂子の「狗神」を思い出しましたが、単に犬にまつわる伝承がかぶっているだけ、まんますぎる連想で情けないっす。
最初に「団地の描写」という近代社会のマジョリティの表現、続いてそれに対比させるように一風変わった自由人、個としての主人公が登場します。
ところがそれを上回る強烈に異質的なもの、太郎が登場。
太郎を巡る人々や環境は、社会を飛び越えて、常識や現実からも逸脱しており、不思議なオーラをまとって登場した主人公がだんだんと普通の女性に見えてきました。
読み進むうちに、わくわくするのと同じく、少しずつ自分の感覚も日常から逸脱して、気がつくと引き返せないところまで行ってしまうのではないかという不思議な、でもイヤではない不安を抱きました。
三冊の中では一番好きです。
「漫画原論」四方田犬彦
丸尾末広と共に、名前だけで読んでみたいと思っていた作家。
一番読み易そうなものを選んでみました。
内容は、漫画の構造を人文科学系インテリが小難しく解説するふりをして凡夫どもを惑わす、というミラクルなもの。
と言いつつ、結構面白いです。
キャラクターの鼻の表現と時代の変遷を重ねて評論、はギャグだか本気だか凡夫にはわかりませんが、意外とそういうものかもなあ、と思わせられます。
映画や絵画と並べての分析はとても面白かったです。
マイブリッジの写真と漫画のコマ割りとか、言われて初めて「!」
と漫画的に驚き。
旅行記も出しているようなので、読んでみようかと思います。
一日一冊のペースで読んでいたんですね。
正しくは四冊並行して読んでましたが。
学生、しかも病人にしかできないしょぼくれた贅沢だなあ、としみじみ。
そして凡人の読書感想なんか人目に晒すもんじゃない、としみじみ。
忘れないうちにメモ
「花腐し(はなくたし)」松浦寿輝 著
世の中全てを腐らせていく五月の雨のイメージの中、過去の女の記憶と疲れ果てた現在を織り交ぜて描いた幻想的な作品。芥川賞受賞作。
こういう終末思想を超えた、全てに対する諦めをテーマにした小説は多いと思いますが、「雨」をキーワードにしているところに好感です。
単に雨が好きだからなんですが、同じ大きさの傘をさしても必ず一人だけずぶ濡れになる主人公ってのがいいですよね。
傘の下から雨に引き寄せられてしまう、水の引力に魅力を感じます。
全体的には、まあ、あるよねっていう構成だと思うけど。
「ビタミンF」重松清 著
大衆向け直木賞。
この作家の小説を初めて読むので、よくわかりませんが、
「つまらないことを、つまらない言い方で伝えた」
という中年のお父さんの独白がこの作品の存在全てを語ると思います。
「犬婿入り」多和田葉子 著
これは芥川賞。
別に過去の受賞作を読み漁ろうという気はないのですが、人に勧められたり自分で気になったりして、でもすぐには読まない本というのが基本的に芥川賞、直木賞なんじゃないかと勝手に定義する訳で、一気に過去受賞作を三冊も読んだことに言い訳をつけなくてもいいと思いますが、まあそんな訳なんです。
私はこの作品が一番読み易くて、良いなあ、と思わせられました。
板東眞砂子の「狗神」を思い出しましたが、単に犬にまつわる伝承がかぶっているだけ、まんますぎる連想で情けないっす。
最初に「団地の描写」という近代社会のマジョリティの表現、続いてそれに対比させるように一風変わった自由人、個としての主人公が登場します。
ところがそれを上回る強烈に異質的なもの、太郎が登場。
太郎を巡る人々や環境は、社会を飛び越えて、常識や現実からも逸脱しており、不思議なオーラをまとって登場した主人公がだんだんと普通の女性に見えてきました。
読み進むうちに、わくわくするのと同じく、少しずつ自分の感覚も日常から逸脱して、気がつくと引き返せないところまで行ってしまうのではないかという不思議な、でもイヤではない不安を抱きました。
三冊の中では一番好きです。
「漫画原論」四方田犬彦
丸尾末広と共に、名前だけで読んでみたいと思っていた作家。
一番読み易そうなものを選んでみました。
内容は、漫画の構造を人文科学系インテリが小難しく解説するふりをして凡夫どもを惑わす、というミラクルなもの。
と言いつつ、結構面白いです。
キャラクターの鼻の表現と時代の変遷を重ねて評論、はギャグだか本気だか凡夫にはわかりませんが、意外とそういうものかもなあ、と思わせられます。
映画や絵画と並べての分析はとても面白かったです。
マイブリッジの写真と漫画のコマ割りとか、言われて初めて「!」
と漫画的に驚き。
旅行記も出しているようなので、読んでみようかと思います。
一日一冊のペースで読んでいたんですね。
正しくは四冊並行して読んでましたが。
学生、しかも病人にしかできないしょぼくれた贅沢だなあ、としみじみ。
そして凡人の読書感想なんか人目に晒すもんじゃない、としみじみ。
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