福井県立大学水産経営学研究室のブログ(教員)

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食品の風評被害

2011-04-18 11:25:16 | Weblog
東日本大震災から1ヶ月以上が経過し、ようやく復興にむけての動きがでてきたように思います。


しかし、原子力発電所の被害のほうは、いまだに先行きが読めず、
放射能汚染が長期化することが明らかになってきています。
今回の原発事故は、直接の死亡者がでていないとはいうものの、
放射能汚染の収束に1年ほどもかかり、
被害が広範囲に及ぶことが明らかになりつつあります。
政府は最近になってレベル7に引き上げましたが、これは予想外でした。
もちろん発電所は廃炉になり、直接的な被害をうけた周辺市町村の問題は深刻であり、
風評被害と言われる間接的な被害も福島県をこえて日本全体に及んできました。
甘い想定のもとにあった原子力政策は当然見直すべきでしょう。
日本の他の原発も、世界の原発も、想定のレベルは同じようなものだとすると、
原子力への信頼が失われて世界のエネルギー需給さえも変更されかねません。

これまでも、原子力発電の事故のたびに風評被害がありました。
風評被害はまちがった情報によって発生するとされ、
政府が正確な情報を発表しないからだなどと批判されていますが、
実際には、誤った情報によるだけではなく、
放射能汚染の場合には特に、イメージダウンや消費者の不安によって
引き起こされる部分がかなり大きいと思われます。
後者の場合には、たとえ正確な情報を提供しても解消できるものではありません。
たとえば、今、福島県産の米や野菜、関東の魚がうれません。
今流通している米は昨年産の米だから、汚染されていないことが明らかなのに、
茨城や千葉の魚は問題のあるものは出荷されていないのに、すべての魚が売れません。
食品の安全性にかかわるような商品のイメージダウンや不安感が強いとき、
いかに正確な情報を提供しても、正常な価格で取引することは不可能でしょう。


福井県でもかつて事故がありましたし、風評被害も発生しました。
その時は発電所外部への放射能汚染がないことが明らかなのに風評被害が発生したのです。
今度は外部環境が汚染されたのだから、
同じことがもっと大規模に今おきていると考えられます。
被害をうけた農林水産業については、
このことを考慮して被害額を算定し、保障すべきだと思います。
ここまで読んでくれる学生がいるかどうかはわかりませんが、
当研究室の研究課題の一つにしてもよいのではないかと思います。(T・K)





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