福井県立大学水産経営学研究室のブログ(教員)

福井県立大学の水産経営学研究室(小浜キャンパス)のブログです。

原発のコストと便益

2011-04-26 18:43:46 | Weblog
福島原子力発電所の事故は、その安全性への信頼を失墜させ、
制御不能になった場合の、被害の大きさをみせつけている。
これまで、電力会社も国も安全性を前提にして原子力政策を
進めてきたから、その前提がくずれてしまった事態の収拾は
いちじるしく困難で、高い代償を支払わなければならないだ
ろう。原発の安全神話が崩壊したといわれても当然だろう。

それどころか、「原子力発電は環境にもよい」として、
電力会社も国も原子力発電を過去50年にわたって進めてきた
のであった。
立地している自治体も安全を前提に協力してきた。
「東京のためになぜ福島県民が犠牲に?」
という今回の事態は、
いったん大事故がおきれば、被害が大きく環境にも大きな
マイナスになるということを忘れていたためといえる。

長期的な原子力政策を変更するためには、
冷静になって原子力のコストと便益をかんがえなおしてみる
必要があるだろう。
大事故を想定することにより、原発のコストは上昇し、
利益のほうも被害が大きな分だけ大きく減少することになる。
これまでの火力の半分程度だという原子力優位のコスト計算が、
大事故を想定すると逆転する可能性も十分ある。
少なくとも今回のような被害が想定されるとすれば、
まったく採算があわないだろう。

それでも原子力発電を進めることが、なお必要だとするならば、
大事故をおこさないような対策が低コストで可能なのか、
どれだけ大事故のリスクを小さくできるか、
また被害額を小さくできるかを再計算しなければならない。
経済学的に考えるならば、そういうことになる。(T・K)