なぜ「蝶」は접と読むのか?
日本語の漢字の発音は,年月とともにどんどんと変わっていき,極めて単純化されてしまったが,明治から戦前(太平洋戦争終結前)に,公文書や学校教育においては,「蝶々」を「てふてふ」と書くような「歴史的仮名遣い」という表記が用いられていた。
「歴史的仮名遣い」で書いたときに音読みが「ふ」で終わる漢字は,韓国語ではㅂで終わるなど,「歴史的仮名遣い」をひも解くと,韓国語の漢字音がある程度類推される。日本に漢字が伝わった当時と比較すると,現代の中国語(北京語)は,発音が大きく変化してしまっているが,韓国語(朝鮮語)には,生きた化石のように当時の歴史がそのまま残っている。
●法則1
現代音の「オ段+う」のうち,歴史的仮名遣いで書いたときに「ア段の音+ふ」になるものは韓国語ではㅂで終わる。
現代音 | 字音 | 漢字の例 | 備考 |
おう | あふ | 押[압] | |
こう | かふ | 甲[갑] | |
ごう | がふ | 合[합] | |
そう | さふ | 挿[삽] | |
ぞう | ざふ | 雑[잡] | |
とう | たふ | 答[답] 塔[탑] | |
のう | なふ | 納[납] | |
ぼう | ぼふ | 乏[빕] | *밥ではなく빕になる |
ろう | らふ | 蝋[랍] |
●法則2
現代音の「イ段+ゅう」のうち,歴史的仮名遣いで書いたときに「イ段の音+ふ」になるものは韓国語ではㅂで終わる。
現代音 | 字音 | 漢字の例 | 備考 |
ゆう | いふ | 邑[읍] | 拗音ではない |
きゅう | きふ | 急,給,及,級[급] 泣[읍] 吸[흡] | |
しゅう | しふ | 習,襲,拾[습] 集,執[집] | |
じゅう | じふ | 渋[삽] 十[십] 汁[즙] | |
にゅう | にふ | 入[입] | |
りゅう | りふ | 立,粒[립] |
●法則3
現代音の「イ段+ょう」のうち,歴史的仮名遣いで書いたときに「エ段の音+ふ」になるものは韓国語ではㅂで終わる。
現代音 | 字音 | 漢字の例 | 備考 |
よう | えふ | 葉[엽] | 拗音ではない |
きょう | けふ | 怯[겁] 協,脅,峡,狭,夾,頰[협] | |
ぎょう | げふ | 業[업] | |
しょう | せふ | 渉[섭] 妾,捷,睫[첩] | |
ちょう | てふ | 蝶[접] 貼,諜,牒[첩] | |
じょう | でふ | 畳,帖[첩] | |
りょう | れふ | 猟[렵] |
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