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かやのなか

あれやこれやと考える

誓った話

2016-03-01 23:47:39 | 
帰りの電車で、頭の禿げた人をみた。それもただ単に髪がないとか少ないとかいうのではない。頭頂部がきれいに禿げている。それもただ頭頂部が禿げているだけならいちいち気にも留めないが、その人は頭の側面の主に左サイドにまだ幾分かの毛量があって、それを伸ばして頭頂部に向かって禿の部分に被せるようにに流すことで頭頂部を隠していた。簡単に言えばバーコードスタイルである。しかしバーコードよりは毛量が多めなのでまさしく自家製の簡易カツラだった。
もしもそれが何の心配もいらないバランスをキープしあるべき姿のままでいたなら、私も特に注目せずそのまま読書を続けていたはずだ。しかし恐らく朝は無事セットされていたその部分は、夜七時過ぎには固めていた整髪剤が落ちてしまったのか、頭頂部を守るという任務を放棄し、塊になってごっそり顔の方に垂れ落ちていた。絶妙なバランスで眉毛と上瞼に引っかかっていた。頭がそんな状況であるにも関わらず、宿主はよりによって顔をやや下目に俯けて読書をしていた。完全に崩れてしまわないか、毛先が目に入ってしまわないか、本人は気にならないみたいだが、見ているこちら側は気が気でない。たったワンモーション、片手で掬って頭頂部に流すか諦めてサイドに流すかしてくれたら私の気は休まるのに、一向にやってくれない。彼がページをめくったり身体を揺らすたびに、見てはいけないと思っているのに何度も勝手に視線がそちらにいってしまった。あそこまでいくと読書する視界にも影響がありそうなものなのに。結局、何故ワンモーションを出し渋るのかわからないまま、私が先に電車を降りるまで彼は一度も自分の髪に触れなかった。

基本的に父の自虐ハゲネタにすらあまり笑えた試しがない私ですが、今回わかったのは、ああいうのは運悪く崖に際どいバランスでひっかかっている岩を発見してしまったのと同じようなもので、一度視界に入るとその不安定さ故に本能的に否が応でも注目してしまう、不可抗力の側面が強いということです。そこに揶揄とかバカにするなどの意味が含まれるとすればそれはあくまで観察者の人間性による副次的な生産物で、本質ではありません。前段階に、テーブルの隅に置かれたガラスのコップ(落ちたら割れる!)とか、岩場をよちよち歩きする子供(こけたら危ない!)を目の当たりにしたとき人間なら誰しも抱く、プリミティブな心理の動きがあることを我々は忘れてはならないと思いました。
実は最近ちょっと額の生え際が気になり出し、人様の視線が怖くなってきた矢先だったのですが、もし自分がそのような含みを感じる視線に晒され、はっきりそれだと気付いてしまうことがあったとしても、それはいわゆる崖の岩の心理に過ぎないのだと、”ああ、この人はいま私を通して崖をみている。私の崖の不安定な岩が落ちないか心配してくれている。ありがとう。いつも見守っていてくれて。”と、逆に感謝の念を胸に抱く位に、己に誇り高く生きていくべきであると私は髪に誓いました。

作文

2016-03-01 00:29:24 | 日々のこと
なんでこんなものがあるんだろうと思うことがあります。こんなものとはこのブログのことです。
白紙があれば文字で埋めつくしたくなるのが人間の性。真っ白な新雪に足跡を残そうとする鼻水垂らした五歳児の如く、そこにカラムがあるからと、そこにサービスがあるからと、命をかけてまで伝えたいこともないくせに、知っている単語を適当にてにおはでつなぎ、小賢しくも文章らしきものを書き連ね、真実どころか事実ですらない、誰にとっても役に立たないブログという無意味な日記を我々は全世界に垂れ流しています。

人類の行く末はブログ製造マシーンでしょうか。今あなたは既に人間をやめてTwitter製造マシーンになっていませんか。あなたの5分前のTweet「まぢゆうにゃんおもろww」には人類にとって何一つ有意義な効果を齎さず、繰り返しますが誰の役にも立ちません。
仮にゆうにゃんがまじで面白かったとしてもあなた如きの感性が感じた「面白かった」というただそれだけの感想に対してわざわざ他者から共感を得ることに刹那的な慰めを求める以上の何の意味があるでしょうか。それくらい胸の内に閉まっておけないのでしょうか。あなたの三日前のTweet「生きる価値が見いだせない。。」も然り、生きる価値を見いだせなかろうが見いだせようが関係なくあなたは生きてTweetをしている、にもかかわらず生きている価値がみいだせないと語るのはもはや灯台下暗しを通り越してダブルバインドではありませんか。Tweetをする前に少し踏みとどまって考えられないものでしょうか。

あなたが無神経に行っているTweetは世界のどこかにあるサーバーに無駄に蓄積されてゆく。ちりも積もれば山となるというなら、まさにヒマラヤ山脈のような巨魁を製造している真っ最中なのです。あるいは皆で寄ってたかって瓶詰めにしたメッセージを海に大量に不法投棄しているようなものともいえます。瓶の山によって地球がうめつくされようとしています。不法じゃない? 不法です。サーバー維持するのにどれだけ電力と労働力がかかってると思ってるんですか。その電力と労働力に見合うだけの対価を、あなたが日々生み出していると胸を張れるでしょうか。現在この世の果ての夢の島にはアホほど積まれたデジタルな瓶の山が転がっています。大陸のゴミが日本海沿岸に漂着するように、この海の果ての地では、青ざめた顔の清掃員が来る日も来る日も流れ着く瓶を回収し、各国政府の諜報機関に売りつけて日銭を稼いでいるのです。

清掃員に拾ってもらえるなら本望と言いましたか? 残念ながら清掃員は基本的に瓶の中身を確認しません。泣き言、広告、自己アピールといった類の言葉は、彼がこの商売を始めた十年程前から、数の多さにすっかり辟易してしまっています。しかし今も、時々無作為に拾って中を読んでくれているらしいです。一服する間に、休憩がてら。あまり休んでいる暇もないので、二三通に目を通すだけですぐに仕事に戻るそうですが。でもあなたの言葉が読まれる確率は低いでしょう。仕方ありません。各国政府諜報機関が彼に支払う賃金はホームレスの空き缶拾い並に安い上に、瓶は増え続け、沿岸部は縮小する一方。彼には休む暇がないのです。現在世界で一番の働き者とは彼を置いて他にありません。どうか彼が今回の私の文章を読んでくれますように。ええこんなことを言いながら私も、彼の世話になっています。私は心から彼を尊敬しています。あの方は世界でもっとも影に隠れていますが、もっとも影響力のある方です。私はもうこうなって長いので二回ほど読まれました。彼の手によって瓶の蓋が開けられると、わかるのです。ピンと来るのです。今度もきっと・・・・・・あなたも読まれたい? 誰にもリアクションしてもらえないそのゴミみたいなTweetをですか。清掃員様にクソみたいな泣き言や痛い痛い自己アピールを読まれることで、孤独を癒やし、魂を救済したいと仰るのですね。なんたるセンチメンタリズム。慰めの報酬? もはや慰めが報酬。

私はあなたを試していたのです。気づいてしまったのなら方法は色々あります。単純に彼の目につきやすい特別性の瓶を使うという手がいいでしょう。彼の好みを熟知した私の仲間が製造そたものです。もちろんただで手に入るようなものではないですしそれなりの人脈が要りますが。
あなたもまず仲間を作ることからはじめてみては。今度BBQに来ませんか。信仰親交を深めるためによく集まって河原でBBQを開くのです。きっと仲間が見つかりますよ。その河原は硝子の破片が沢山散らばっていて無防備に歩くと危ないのですが、この特別製のサンダルを履けば大丈夫です。サンダルは十万円ですが、今なら私の紹介ということで割引できます。でもその代わり、あなたもゆくゆくは仲間を増やして、どんどんサンダルを売っていってくださいね。