かやのなか

あれやこれやと考える

バードマンの雑な感想

2016-05-02 22:58:39 | 
バードマンを見たので感想。

テーマ的には特に目新しさは感じなかった。シークエンスの畳み掛け方は面白かった。バードマンが初日前のここぞという場面でしか出て来ない、あの出し惜しみ感は良かったし、その後の戦闘シーンも要点だけ見せてすぐ終っちゃうのがよかった。
だから全体的には面白かったんだけども、途中、「?」が浮かんで仕方なかったのが、Twitterとかyoutubeとかネット関連の台詞のシーン。いくつか感想ブログとか批評サイトとか回ってみた感じあんまり違和感を感じてるような人がいなかったけど、スマホ依存症やネット依存症の人間が登場人物に一人もいない健全でアナログな世界観において、ときどき唐突に出てくる「みんなRT数を伸ばしたいのよ!」とか「何万回再生よ!」みたいな台詞に、びっくりするというか思わず「そうですね、21世紀ですね」と画面に言い返したくなった。主人公が文明の利器に触るのって冒頭でのMacBookProだけだし、なんならそれ関連を一手に引き受けても良さそうなドラッグ娘は、トイレットペーパーに地球の歴史をペンで刻むという筋金入りのアナログ人間。要所要所でしかスマホに触らないので絶対に依存症ではない。むしろスマートに使いこなしていそう。
プレビューのシーン、基本的にスマホやyoutube世代じゃなさそうな白髪のジジババが客席に並んでるのが映っているけど、話の設定上彼らはわりとミーハーなはずなのに、と思うとこれも違和感。ただし、この点はわかりません。ブロードウェイの平常時の客層を知らないので。
初日の一幕目がはけたあとの幕間で客が劇場の外に出てくるシーンでは、誰もケータイやスマホいじったりせず「やはり彼は素晴らしい」とか「こんなにできるなんて思わなかったわ」とか口々に直接言葉に出して主人公を褒め称えるのですが、それ自体はまぁいいんだけど、誰か感想をTwitterに書き込んだらいいのに、スタッフもそれチェックして感想RT合戦とかしたらいいのに、とか思えてしまって。いや、やらなくてもいいんだけど、しないんだったら、なんならネット関連の台詞はごっそり削っても良かったんじゃないかってくらいです。スマホもネットも登場人物の扱う小道具として出て来ないというストイックな設定のもとに本筋の話は進んでいくし、なのにときどき思い出したように「再生数が!」とか言い出す登場人物がどこの時代を生きている人なのかよくわからないのです。愛されたい=認められたい=ほめられたい=ここにいたい、みたいな欲求との闘いは、普遍的なものですし、ネット関連を全削りしても今回伝えようとしていた部分までは伝わったんじゃないかと思います。
しかし結局、プレビュー公演の記事や、批評家のコラムが乗る新聞の影響力が一番(主人公の中でも)高かった。つまり今も昔も新聞が一番、アナログバンザイ、古典最高、血で血を洗え、とハリウッドは言いたいのか。