人生ブンダバー

読書と音楽を中心に綴っていきます。
現在は、暇に飽かして、日々更新。

金森久雄『男の選択』(S62) 日本エッセイスト・クラブ賞 NHK「英雄たちの選択」

2020-05-14 05:00:00 | 読書

日本エッセイスト・クラブというものがある(→こちら)。

日本エッセイスト・クラブでは、毎年、「文芸作品等創作を除く一
切の評論、随筆等の中より各方面の推薦を受け」、日本エッセイス
ト・クラブ賞を選定している。

私が日本エッセイスト・クラブ賞を知ったのは、平成19(2007)年
に、畑中良輔先生が『オペラ歌手誕生物語』で受賞された時だ(第
55回)。→こちらをご参照。


先日、金森久雄『わたしの戦後経済史』をブログで取り上げた時、
金森久雄が『男の選択』という本で、昭和62(1987)年の第35回日
本エッセイスト・クラブ賞を受賞していることが分かった。

日本エッセイスト・クラブ賞受賞作品一覧は、おもしろい作品の宝
庫だ(→こちら)。


前置きが長くなったが、というわけで、amazonの中古本で、金森久
雄『男の選択』を取り寄せて読んだ。

さすが受賞作品!どのページもユーモアがあふれていて、おもしろい。

三つ、四つ、例をあげると、
 「大正十三年生まれ」
 私は大正十三年生れである。・・・・・・
兵隊から解放されて大学に戻ってみると驚い
 た。戦争中の西田哲学の先生は、マルクス主義の唯物弁証法論者に変身していた。
 ナチス流の国際法の先生は、平和主義の使徒となっていた。・・・・・・僅かだが時流
 に流されず、戦中、戦後少しも説を変えない人も居た。歴史学者の津田左右吉氏、
 憲法学者の美濃部達吉氏などだ。津田氏や美濃部氏は、戦争中は、時局をわきま
 えない自由主義者、戦後は、民主主義に反抗する保守主義者に見えた。人間は変
 わらないが、世間の方が左右に大きくゆれるのだ。


 「ソ連という国」
 ソ連は嫌いだという人が多い。最近私は、那須聖の「ソ連崩壊」という本を読ん
 だ。ソ連の経済はうまくいっていない。軍事費の重圧は強まっている。国民の生
 活水準は元来低かった上にさらに低下し、食糧事情も質量ともに悪化した。
 ・・・・・・個別の記述については、私も同感する点が少なくない。政治体制、経済体
 制には多くの欠陥があらわれている。那須氏が書いているのは妥当な点が多い。
 しかし、結論はあやまりであると思う。ソ連は崩壊しない。

(注)念のために補足すると、本書が昭和62(1987)年1月に発刊
 された4年後の12月にソ連は崩壊した。
 現在、那須聖の『ソ連崩壊』もamazonで注文中だ。

 「工場長に敬服」
 私は仕事の関係で時々工場見学をするが、工場長の知識や能力に敬服することが
 多い。自動車の工場でもVTRの工場でも、大てい工場長は、生産工程のしみから
 すみまで熟知している。工員の数をきいても、平均年齢をきいても知らないこと
 はない。・・・・・・見学を終わった後で、それじゃ一杯飲んでいきましょうかと、背
 広にきがえて、工場の横の小料理屋へでもいくと、これがあの精密機械の如き工
 場長と同一人物かと疑うように支離滅裂な愉快な話をする人も居る。・・・・・・人間の
 複雑さに驚くのである。

 「パーティーの進歩」
 ホテルのパーティーが多い。・・・・・・改良がどうしても必要だと思うのは、あいさ
 つや祝辞である。これが多すぎるパーティーがある。アルコールが入ると会場が
 ざわざわして話はきこえない。話す方にも失礼である。・・・・・・食べるのにもなか
 なか技術がいる。どのパーティーでも、ローストビーフや、お寿司には人が群が
 っている。人をかきわけていけばいいのだが、はしたないと見られないだろうか。
 そうかといって食べないで家に帰ると、家ではパーティーだから食事はいらない
 と思って夕食の用意をしていない。絶食ということになり兼ねない。


金森さんって、おもしろい人だったんですね~。


金森久雄『男の選択』(日本経済新聞社)★×5

 -----------------------------------------

5/13(水)、NHK 英雄たちの選択「明治維新最後の攻防~西郷・
大久保“革命”への賭け」(王政復古のクーデターから鳥羽・伏見の
戦いまで緊迫の25日間)(再放送)を視聴。

このあたりは、大学受験に際して「日本史」でもさんざん学習した
が、「一寸先は闇」の動きがややこしくて、「木を見て森を見ず」
ではないが、なかなか整理できないところだ(--いまだに整理で
きない[笑])。
基本的な点だが、「大政奉還」=「王政復古」ではなかった。
--昭和史も幕末史も森の中?

参考までに「年表」を整理すると、
1864(元治1)7月蛤御門の変。8月長州征討。11月長州藩謝罪。
1865(慶應1)4月長州再征を令す。(翌年6月出兵)
1866(慶應2)1月薩長連合の盟約。7月家茂死去、長州再征軍を解
 く。
1867(慶應3)10月14日討幕の密勅、薩長に下る。徳川慶喜、大政
 奉還。12月19日王政復古のクーデター。
1868(明治1)1月鳥羽・伏見の戦い。3月五箇条のご誓文。4月江
 戸城明渡し。9月明治改元。10月江戸を東京と改める。
1869(明治2)版籍奉還
1871(明治4)廃藩置県

これらの項目をバラバラにして、時系列順に並べられたら大したも
の?

司会:磯田道史、杉浦友紀アナ
出演:家近良樹、大澤真幸、大竹文雄
語り:松重豊

まことにおもしろかった。
「辞官納地」は初めて知った?忘れていた?
もう一度復習しておきたい。






杉浦アナと磯田さん




大竹先生のお顔を初めて拝見。


三谷博先生(東京大学名誉教授)もビデオ出演。
三谷先生も家近先生も私とほぼ同世代。「学者は一種の天才」であ
る。


まったく余談で恐縮だが、NHK「おはよう日本」の気象キャスター
山神さんは元小学校の先生だとか。ご出身は香川県のまんのう町。



〇今出ている検察官の定年延長法案は、施行が2022年4月というこ
 とだ。黒川氏とは関係なく、なぜ大騒ぎするのか、依然としてよ
 く分からない。
 反対のツィート数にはもしかしたら大組織票も含まれている?


コメント (9)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 内田健三『派閥』(S58) | トップ | 5/13 すすき野へ散歩に行っ... »
最新の画像もっと見る

9 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (関学BのМより)
2020-05-14 10:02:59
「英雄たちの選択」私も大好きで見ています。
西郷の「小刀1つあれば、済みもんそう」が頭にこびりついています。また、「木を見て森を見ず」を思わず読書家のブンダバーさんが書かれたので「本を見て森を見ず?」と勘違いしました(笑)
返信する
Unknown (katsura1125)
2020-05-14 14:15:59
関学BのMさん、さっそくのコメント有難うございます。

小御所会議ですネ~。明治維新あたりの歴史の見直しもあり、あらためて勉強したいと思いますが、私のペースだと1年くらいかかるでしょうか(笑)。

司馬遼太郎の小説がいいかしらん。また教えてください。
返信する
追伸 (katsura1125)
2020-05-14 14:19:35
家近先生の関西弁の響きに魅了されました。
『西郷隆盛維新150年目の真実』がおもろそうです。
返信する
Unknown (関学OBのMより)
2020-05-14 14:52:50
関西弁の話になると、今から47~48年前の某D志社の会館でのブンダバーさんのスピーチを、思い出しました♪「関西では、語尾を省略することが多いですねェ、烏丸と書いてカラスマルと言わずに、これもカラスマ、、、になるんですね」と、私は大笑いしてしまいました(笑)
返信する
Unknown (katsura1125)
2020-05-14 16:08:26
関学OBのMさん、そんなことがありました。
忘れないうちにブログに書いておきました。
https://blog.goo.ne.jp/katsura1125/e/6a2666545edda8145805afae6fb128ee
(2018/8/30付)
返信する
Unknown (tkgmzt2902)
2020-05-14 17:13:35
私も「英雄たちの選択」ファンです。
参考書代わりに録画しています。
図表で説明されたり、素人にはとても為になります。
見るだけで批判できないのが現場ですが。
磯田先生のフランクな人柄が、日本史ファンの裾野を広げた気がします。
返信する
Unknown (katsura1125)
2020-05-14 19:04:28
ちゃぐママさま、早速のコメントを有難うございます。
「英雄たちの選択」--視聴率はおそらく10%未満かもしれませんが、NHKらしくていいですよね~。
返信する
薩長連合 (TM)
2020-05-16 12:02:12
(家近先生によれば。当初)
薩長連合は、討幕を目指していない。一橋、会津、桑名を駆逐し京都政局の主導を取ろうとしていたに過ぎぬ。
西南雄藩は、幕府に立ち向う藩論をまとめられていなかった。
返信する
Re;薩長連合 (katsura1125)
2020-05-16 16:03:04
TMさん、コメントありがとうございます。
ますます家近先生を読んでみたくなりました。amazonであたってみます。
返信する

コメントを投稿

読書」カテゴリの最新記事