加藤敏春ブログ:21世紀の経済評論を語る!

2000年度東洋経済・高橋亀吉最優秀賞等を受賞。地域通貨「エコマネー」提唱者。

「愛・地球博」のテーマ「自然の叡智」の真の意味を考える(その3):もののあわれの感性

2005-08-28 00:45:18 | Weblog
 日本人の「もののあわれ」の感性は、『古今和歌集』を編纂した紀貫之において成立し、『源氏物語』の紫式部によって発展され、『新古今和歌集』を編纂した藤原定家によって完成された伝統的な美意識ですが、江戸時代においては近世流に消化され、絆の感情、すなわち連帯感情としての「もののあわれ」となりました。ここに世界大交流の場である「愛・地球博」のテーマである「自然の叡智」との共通性があります。
 「愛・地球博」のテーマである「自然の叡智」は、21世紀における最大の課題である「持続可能な社会」(sustainable society)の形成にいかに世界が連帯して取り組むかという問題設定でテーマとして取り上げられました。EXPOエコマネーは、一人一人ごとの努力では達成困難なライフスタイルの変革、それによるCO2排出削減という課題に「連帯」(solidality)による解決という有効な回答を提示するものです。
 日本の近世における「もののあわれ」を昇華させたのが、井原西鶴の『好色一代男』、『西鶴置土産』、近松門左衛門の『出世景清』、『曽根崎心中』などの作品です。
 この江戸時代に培われた「もののあわれ」の感性は、明治以降も森鷗外、泉鏡花を経て、谷崎潤一郎、川端康成、三島由紀夫らへと受け継がれてきました。

そして今、自然との共生を目指す新しいライフスタイルの模索が始まり、21世紀の扉が開かれました。そこで21世紀初の万博として開催されているのが「愛・地球博」なのです。ここで『奥の細道』での芭蕉の感性を追い、日本人の「もののあわれ」の感性の変遷をご紹介したのは、それが「愛・地球博」のテーマである「自然の叡智」の真の意味を考える上で大きなヒントを与えるものだと考えたからです。
 私は、自然との「共生」のほか「連帯」という2つの要素を融合化させた日本人の「もののあわれの感性」を世界にアピールすべきだと思っています。ちょうど、ワンガリ・マータイさんが「MOTTAINAI」(もったいない)を資源を大切にする言葉として世界共通言語として普及させようと努力し、それが内外で浸透し始めているのと同じように・・・・。 
 ただし、このことは日本の江戸時代=近世の「もののあわれ」の感性をそのまま復活させることを主張しているのではありません。私たち人類は「近代」という時代を経て、その「近代」の遺産を引き継いでいます。近代が目指したのは自立する人間像です。自然を克服するという自然観も一体となっています。
 21世紀においては、個人の自由の確立を前提として、自然との「共生」と世界市民の「連帯」を実現していかなければなりません。「愛・地球博」のテーマである「自然の叡智」は、このような問題設定でなされたものと理解しています。
 江戸時代で私たち祖先が実現した純が他社会、エコライフを21世紀においてよみがえらせ、自立した個人を形成するとともに、新しい色彩を帯びて光り輝く文化を創造していくために、どのように「持続可能な社会」(sustainable society)を形成していくか。また、エコライフの実現を支える新しい連帯をどのように設計するのか。こうした課題に答えることを求められているのが「愛・地球博」なのです。