加藤敏春ブログ:21世紀の経済評論を語る!

2000年度東洋経済・高橋亀吉最優秀賞等を受賞。地域通貨「エコマネー」提唱者。

中心市街地再生の鍵は何か(その14):加入促進条例にエコポイントの明示を!

2005-12-28 00:08:30 | Weblog
 私が唱えるエコポイント導入事業は、単にエコポイント単体を商店街活性化のツールとして導入するものではありません。
 以前指摘したように、「地域でのポイント循環→地域のマネー循環」の構築を目指すものなので、まず地域でのポイント循環を構築することが必要となります。エコポイントは、商店・チェーン店、商店・チェーン店への納入事業者、自治体などが原資負担をして発行する共通ポイントですので、マネーに裏付けられていることになります。
 そこで私の構想は、エコポイントのほか、地域で発行されている商店街のスタンプ・ポイント、そしてチェーン店(ドラッグストア、家電量販店など)や百貨店のポイントなどとの相互互換(クリアリング)を活発にすることにより、地域でのポイント循環を確立することがまず必要となります。
 エコポイントと商店街のスタンプ・ポイントの相互互換は進みやすい環境にありますが、これから必要となるのは、チェーン店や百貨店とのポイントとも相互互換していく環境を整備していくことです。
 エコポイントとチェーン店や百貨店とのポイントとの相互互換に関しては、後者は顧客の囲い込みのために発行されているもので、一見すると難しいように思われますが、私は決してそうではないと思っています。
 まず、そのことを促進する要因として、企業のCSRの浸透があります。CSRの構成要素としては環境がありますが、これから都市計画法により大型店の郊外出店が規制され、以前ご紹介したような福島県の条例のようなケースも増えてくると考えられますので、大型店としても地域貢献型CSRとしてエコポイントと自己のポイントとの相互互換を進めるようになると思います。地元としては、そのことを要求するということも出てくるでしょう。
 より具体的には、加入促進条例にエコポイントとチェーン店・百貨店のポイントの相互互換が含まれていると解釈されることです。現在商店街振興組合、商店会などに加入していないチェーン店・百貨店の加入を自治体が奨励する加入促進条例が東京都の各地を始め全国の自治体で制定されようとしていますが、加入促進条例の第2番目の要素に「共同イベントなどの経費に関して応分の費用負担に応ずること」ということがあります。
 この「応分の費用負担」の一つの形態がチェーン店・百貨店が自己のポイントとエコポイントとの相互互換に応ずることなのです。今後の加入促進条例には、確認の意味を含めて「応分の費用負担(ポイントとエコポイントとの相互互換を含む)」と規定することが望ましいと思います。

中心市街地再生の鍵は何か(その13):ミニ公募債の活用とエコボンド

2005-12-27 00:22:18 | Weblog
 財政状況が厳しくなる地方で、中心市街地の再生にあたり行政と市民との協働の資金調達方式として注目されるのがミニ公募債です。しかも、そのミニ公募債を発展させて永久債(コンソル債)化するエコボンドを従来より私は提案しています。
 ミニ公募債とは、調達した資金の使用目的を事前に明示して市民に債券を買ってもらい資金調達する仕組みです。ミニ公募債に関しては、自治体は国よりも信用度が少ないため、国債よりも利率を高く設定するのが通常でした。
 この点で画期的な試みであったのは、2005年に行われた千葉県我孫子市の「オオバンあびこ市民債」というミニ公募債の発行です。これは、我孫子市が昔の利根川の風情をそのまま残している「古利根沼」の開発を抑えるため、水面16ヘクタールを4億円で購入するに当たり、うち2億円をミニ公募債で調達したものです。
 我孫子市は、このとき従来のミニ公募債発行の”常識”を破り、満期など条件が同じ国債の利率0.80%より低い年利0.58%としたのです。
 市民債は銀行からの借り入れに比べて、債券の発行に関する事務経費がかかります。同じ利率ならば、市としては銀行から借りたほうが有利になるのです。しかし、我孫子市の福島市長は、沼が市民の世論により守られてきたことに鑑み、銀行ではなく市民から出資を募ることを決断し、利率も国債より低いものを発行することを決断したのです。
 福島市長によると、どの証券会社も「国債より利率の低い市民債なんて金融商品としては成り立たない」と言って取り扱いを拒否したそうです。千葉銀行が何とか扱ってくれたが「市民が買ってくれないのでは」と心配したそうです(2005年7月29日付朝日新聞朝刊『私の視点』)。
 ところが結果は驚くべきものでした。発行額2億円に対して、1260件、10億3150万円もの応募があり、公開抽選で当選者を決めることとなったのです。これは、沼を守ろうとする市民債の目的が多くの市民から支持されたことを示すものです。同時に、そもそも何に使われるかわからない国債よりも、使途が明確な市民債は市民に身近で信頼できる商品だったと考えられます。
 06年度から自治体は国からの許可なしに地方債を発行できるようになります。そうすると、この我孫子市のようなミニ公募債の発行が増加していくのではないでしょうか。中心市街地再生もPPP(公民パートナーシップ)により行われるのであれば、大いにその対象になりうると考えられます。
 私の提案は、このミニ公募債を発展させて、利子は払うが元本は償還しない永久債(コンソル債)を発行するというものです。上述した我孫子市のミニ公募債のケースを考えると、PPPが徹底された中心市街地の再生に当たり、このことは不可能ではないはずです。永久債(コンソル債)に関しては、現在国の厳しい財政状況への対処として一部の経済学者から提唱されていますが、私は市民と近い距離にある自治体のほうが購入主体からの協力が得られやすいものと考えています。
 この点に関する詳細に関しては、エコミュニティ・ネットワークのウェブ「エコクーポンとエコボンド」(http://www.ecommunity.or.jp/em05-002.html)のうちエコボンドに関する記述を参照下さい。

中心市街地再生の鍵は何か(その12):まちづくりファンドの活用とエコポイント

2005-12-26 00:06:44 | Weblog
 今回は中心市街地の再生と各地で盛んになっている「まちづくりファンド」とについて考えてみたいと思います。
 まちづくりファンドとは、住民や企業の寄付、出資などで集めた資金を基に景観保全、観光振興などの活動に助成するファンドで、9月末に京都に設立された「京町屋まちづくりファンド」など最近各地で創設されるようになってきています。 「京町屋まちづくりファンド」は、町屋の再生・改修に取り組む持ち主に対して修繕額の半額(上限500万円)を支援しようというものです。その背景には、京都市中心部では、1996年から2004年までに13%、約900件もの町屋が消失しているという事情があります。
 その他、主要なものを挙げると次の通りです。
 ファンド名    ファンド設定額       概要
横浜野毛地区
まちづくりトラスト  15億円   東急電鉄からの寄付。道路整備、イベント
神戸まちづくり六甲
アイランド基金    1.7億円   P&Gと積水ハウスの出資。
高知市まちづくり
ファンド      3000万円  市が設定
 こうした中で、老舗ファンドも低金利時代において助成のあり方の見直しを行うようになっています。例えば、1992年の設定以来全国のファンドが参考にしてきた公益信託「世田谷まちづくりファンド」(世田谷区都市整備公社まちづくりセンター)は、広く浅く助成するという方針を転換し、助成対象の重点化を図ろうとしています。また、寄付を増やすためあらかじめ使い道を指定した上での寄付の募集も行う方向です。
 こうした中で、ファンドの形式はとらないものの継続的にまちづくり活動の支援ができるスキームを構築しているものも登場しています。例えば東京都千代田区の外郭団体、まちみらい千代田が行っている「千代田まちづくりサポート事業」がそれで、地元企業に賛助会員となってもらい、毎年の会費からまちづくりグループへ助成するというスキームとなっています。
 こうした動きに対して国も支援策を強化しています。国土交通省は2005年度から民間都市開発推進機構を通じて資金拠出する制度(1件あたり最大5000万円まで)を設けて支援しています。06年度からは公共施設の中心市街地立地や空きビル再生支援なども対象にすることになっています。
 今後ソフトなまちづくり事業への支援も機動的に行えるスキームも構築していくべきでしょう。このような観点から、従来より私はまちづくりファンドを含む「コミュニティ・ファンド」とエコポイントの活用方策に関して具体的な提案をしています。詳しくは、エコミュニティネットワークのウェブの「コミュニティファンドの創設」(http://www.ecommunity.or.jp/ct04-001.htm)を参照下さい。 

中心市街地再生の鍵は何か(その11):地域ブランドの活用も

2005-12-22 00:22:19 | Weblog
 来年度以降、各地で「日本型コンパクトシティ」づくりが新しい法的フレームワークの下で進みますが、そこでは商店街が農家などと連携して地産地消を目指す動きとリンクするところもでてくるでしょう。そこではエコマネー、エコポイントなどの活用が促進されることになると思われます。
 さらに注目したいのが、2005年6月に国会で改正され、06年4月より施行となる新しい商標法に基づく「地域ブランド」です。現行の商標法では、①全国的な知名度を獲得したことで特定の事業者の商品と識別できるようになった場合(夕張メロン、富士宮やきそばなど)、②図形などと組み合わせた場合(草加せんべい、小田原蒲鉾など)に地域ブランドの取得が制限されていますが、新しい制度においては要件が緩和され、①隣接する都道府県程度で知名度がある場合、②法人格を持つ組合が登録する場合、③地域と密接な関連性を持つ商品である場合の3要件を満たす場合は、商標登録できるようになります。
 商店街サイドでは、こうした商標法改正のインパクトはあまり考慮されていないと思われますが、今後新しいまちづくりに当たって考慮すべき大きなポイントとなります。

中心市街地再生の鍵は何か(その10):公共交通機関利用促進につながるエコポイント

2005-12-21 00:00:01 | Weblog
 エコポイントには、①まちづくりエコポイントと②環境エコポイントの2類型がありますが、今回は「日本型コンパクトシティ」を構築する上においては、公共交通機関の利用促進などの環境エコポイントも重要な役割を演ずることを指摘したいと思います。 
 新たしいまちづくり政策により推進される「日本型コンパクトシティ」においては、公共交通機関の利用促進が重要な構成要素の一つとなっていますが、80年代以降進んだモータリゼーションにより、すでに人口50万人以下の都市圏の多くは自動車依存型になっており、これを公共交通ベースの都市に作り直すには、ハード、ソフトを含めた都市システム全体の取組みが必要となります。すでに富山市においては国土交通省の「まちづくり交付金」、環境省の「まほろば交付金」などを活用した取組みが開始されています。
 さらに必要となるのは、住民の協力を得るための仕組みづくりです。その仕組みとしてはアメとムチの両者が必要となるでしょう。この場合ムチとなるのは、欧米の都市において実践されている中心市街地への自動車の乗り入れ規制やロードプライシングなどです。
 また、アメに関しては、それを経済学的に言えば、郊外大型店が出店できなくなることによる住民の利便性低下を上回る社会的便益を計算し、住民への説得と協力に際に使うことが必要になります。しかし、いまだ経済学においてはこのようなモデル計算方式が確立されているわけではありません。また住民にとっては、仮にモデル計算方式によるデータが提示されたとしても、自分の生活に身近なインセンティブとなるものでなければ、反応することにはならないでしょう。
 そこで効果を発揮するのが環境エコポイントです。これは公共交通機関を利用して中心市街地に来街し、購買活動を行った人々に対しエコポイントを付与して(原資負担者は商店街、自治体など)、運賃の一定割合を還元するものです。すでに京都市、横浜市などでも実施に向けた取組みが開始されています。

中心市街地再生の鍵は何か(その9):中小店とエコポイントは地域の資金循環に貢献する

2005-12-20 00:11:30 | Weblog
 今まで指摘してきたように、これからの中小商店は周囲の生活者との信頼・連帯関係を重視するとともに、大きくビジネスモデルを転換させる必要がありますが、そうした中小商店は、地域の資金循環に大きく貢献することになります。現在の中心市街地の衰退は、これをマネーベースで見ると、地域内の資金循環が機能しなくなったことといえます。
 中小商店のコペルニクス的転回とそれに伴う中心市街地の活性化は、機能不全に陥っている地域の資金循環を回復させるという大きな効果があるのです。エコポイントは、地域のポイント循環を構築することにより、さらに地域の資金循環を促進する効果を発揮します。
 これを簡単なモデルを使って解説してみましょう。
 今ある地域で中小商店と大型店の2つがあり、それぞれ月に100万円の売り上げをあげたとします。中小商店はこの100万円を周辺事業者の決済などに使用し、月当たり平均4回回転させます(これは実証研究から得られる数字です)。年間にすると、その12倍ということになります。そのうち商店街に流入した売上金がすべて商圏内にとどまることは現実的ではないので、2分の1が圏外に流出したとします。そうすると、この中小商店が生み出す年間の資金循環は、次のようになります。
 100万円×4回転×12ヶ月×2分の1=2400万円
 これに対し、同じ地域で100万円の売り上げを上げる大型店の場合はどうでしょうか。全国レベルのチェーン型の場合は、売り上げは即日金融機関を通して本部会計に全額集中されます。地方税と店舗で働く地元のパートタイマーの賃金だけが地元に還元されるだけです。還元額は5%程度です(これも実証研究から得られる数字です)。その他は前述した中小商店の場合と同じとすると、この大型店が生み出す年間の資金循環は、次のようになります。
 100万円×5%×4回転×12ヶ月×2分の1=120万円
 以上は簡単なモデルで解説したものですが、資金循環において実に20倍もの開きがあるのです(森靖雄著『中小企業が日本経済を救う』(2004)参照)。
 このような中小商店がエコポイントを活用して地域の生活者との信頼・連帯関係を強化したとき、エコポイントとポイント・スタンプとの相互互換が地域のポイント循環を構築することにより、さらに地域の資金循環が促進されることになります。このことは、世田谷区の千歳烏山商店街において2003年2月より100万円を原資とするエコポイントを住民に対して発行し、年間1400万円もの売り上げ増につながっていることなどによりすでに実証されています。

中心市街地再生の鍵は何か(その8):商業集積のマネージメントを担う団塊の世代

2005-12-19 00:00:35 | Weblog
 個性ある個店が「この指とまれ方式」により集積されれば、そのシナジー効果は大きなものとなります。ここで必要なのは、こうした方式をコーディネートし、商業集積をマネージメントする人材です。
 ここで期待されるのは、2007年から09年にかけて大量に退職する団塊の世代です。彼ら(彼女ら)の長年培ってきた経営、経理、会計、組織管理などの知識・ノウハウとともに、人脈を有効に活用することが必要となります。堺屋太一の小説『エクスペリエンス7』は、こうした団塊の世代がエコマネー、地域通貨をも活用しながら、商店街再生にサポートするストーリーを見事に描写しています。
 さらに「日本型コンパクトシティ」においては、高齢化が進む生活者の日常の生活を支える食料品、その中でも生鮮3品といわれる食肉、鮮魚、野菜小売店を入れた店舗のベストミックス、管理が必要となります。
 ただ、このことはそう容易なことではありません。91年と02年の商業統計を比べると、食肉、生鮮、野菜小売の個人営業店は、それぞれ44%、42%、40%減少しています。食肉、鮮魚、野菜小売店の仕入れや販売には独特のノウハウが欠かせません。食肉店や鮮魚店は冷凍・冷蔵などへの設備投資も必要です。
 中小商店サイドだけからの対応だけでは限界があります。新しいまちづくり政策により目指されるフレームワークの下では、中心市街地にGMS(総合スーパー)や食品スーパー、生協などの立地も促進されることになります。したがって、ここでマネージメントのために必要とされる人材は、生鮮3品のマーチャンダイジングやマーケティングにも精通している大手流通業(GMS、百貨店など)から輩出される団塊の世代です。
 団塊の世代は約700万人ですが、そのうちの22%は流通関係者です。以前、本年度における経済産業省からの委託事業として「大手流通OB人材マッチング業」を推進していることをご紹介したことがありますが、それはこうした必要性に鑑みたものなのです。

中心市街地再生の鍵は何か(その7):必要となる個性ある個店のビジネスモデル

2005-12-16 00:23:12 | Weblog
 いままでの「商店街」という発想自体も見直しが必要でしょう。これからの中小商店のビジネスモデルは、商店街の中にあるから成り立つというのではなく、単独でも成り立ちうる個性のある商店が集積し、さらにそれが全体としてマネージメントされることで、生活者にとって魅力のある商業集積が形成されるというように発想を切り換える必要があります。
 網の目のように巡らされた公共交通機関の発達や自動車交通網により、各都市の潜在的商圏人口は拡大しています。この潜在的商圏人口を顕在化させるに当たり、大型店の場合は商圏の5~10%の客を集めないとビジネスモデルが成立しませんが、中小商店の場合は、専門性を高めニッチに特化する一方、0.1%の客のリピート率を高めることにより収益性のあるビジネスモデルを構築することが可能になります。5%の人の心をつかむよりも、0.1%の人の心をつかむことの方がはるかに簡単なことのはずです。
 このような個性ある個店のビジネスモデルを例示してみましょう。
・一味違うパン屋、ケーキ屋
・特徴のある味のラーメン屋
・コミック本や文庫本だけを集めた書店
・ダブルリード楽器(オーボエなど)だけを扱う楽器店
・店主のセンスを出したセレクトショップ
 このような個性ある個店が「この指とまれ方式」により集積されれば、そのシナジー効果は大きなものとなります。

中心市街地再生の鍵は何か(その6):アーケードはいらない

2005-12-15 00:43:20 | Weblog
 今回は、商店街のコペルニクス的転回として「アーケード型商店街からの決別」ということを指摘してみたいと思います。
 「日本型コンパクトシティ」の特徴の一つに市街地に商店街のみならず、住居、公共施設、職場などが混在していることが上げられますが、このような構造の中心市街地にあっては、もはや商店街をアーケードで覆って周りの生活空間から隔絶するのではなく、商・住・職・公が一体となったまちづくりを目指すべきです。アーケードはその妨げになる可能性すらあります。
 しかも、このシリーズのその4で指摘したやる気のある中小商店による「この指とまれ方式」による活性化に当たっては、中小商店の多くが専門性を強化し、ネットワークを張る形態により地域の生活者のニーズに柔軟に応えていくことがポイントになります。宅配や家庭へのサービス出張、そして情報ネットワークを活用した決めの細かいコンシェルジェ・サービスなどを展開すべきです。
 このような中小商店が集積され全体としてのマネージメントがなされれば、さらに集積の効果が上がるようにすることが必要なのですが、まずアーケード街を何が何でも守らなければいけないということではないのです。物理的なアーケードよりも、ソフトを重視するマネージメントが必要となるのです。

中心市街地再生の鍵は何か(その5):商店街の起死回生策となるエコポイント

2005-12-14 00:03:11 | Weblog
 商店街が大型店に対抗できるコア・コンピタンスは何でしょうか。今回は、それはきめ細かなサービスと地域の信頼や地域との連帯であり、経済学の「継続的取引の理論」からもいえること、エコポイントはそれを実現する起死回生策であることを簡単に論証してみたいと思います。
 まず、参考になる事例を挙げて見ましょう。最近大手家電メーカーの地域における販売ネットワークであるまちの中小電気店の中に売り上げを増やし、活性化している事例が多く見られるようになっています。家電製品の設置、修理、点検などのサービスを中心に売り上げを伸ばしているのです。その背景には、人口の高齢化が進み、家電製品がますます複雑になる中で、まちの生活者はそのような決めの細かいサービスを求めていることがあります。大型家電量販店ではこうしたサービスをきちっと提供することは容易ではありません。地域に根付いた中商店だからこそ対応できるのです。
 経済学ではこのような現象を「継続的取引の理論」で説明しようとします。地域で常に客と顔をつき合わせながら継続的取引を続けようとする事業者は、顧客をだますようなことはしない。顧客もそれをよく知っているので、そうした事業者を信頼する。そこに信頼関係が生まれるのです。こうした信頼関係は地域の生活者に継続反復した購買活動を中小店に対して行わせるように作用し、中小店の顧客チェアが拡大し、売り上げや利益が増大することになります。
 今、こうした中小小売店の原点とも言うべきサービスを前面に出してビジネスモデルを再構築しようという動きが見られます。御用聞きを復活させようとしている地域の酒屋や食料品店などもそのような例です。都会で牛乳配達が復活しているのも同様です。最近では、こうした中小小売店が高齢者の安否確認やいざというときの医療機関などへの通報サービスを行うところもでてきました。
 こうした信頼関係より強い関係が連帯関係です。エコポイントは商店街のまちづくり活動に対して地域の生活者が参加する様々な活動(環境、安全・安心パトロール、イベントへの参加など)に対して交付されるもので、商店街と生活者との一体感、連帯感を醸成します。連帯関係にあればこそ、地域の生活者は従来購買活動を行わなかった商店街で購買活動を行いようになり、それが継続反復して行われる頻度が高まっていきます。以前世田谷区の千歳烏山商店街が100万円分のエコポイントを発行して年間1400万円もの売り上げ増を確保しているケースをご紹介しましたが、それはこうした連帯関係の賜物なのです。
 近年の消費動向を見ると、消費者がモノに支払う金額は頭打ちとなっています。消費者はサービスにより多くのお金を払おうとしています。中小小売店、商店街にとってこうした消費者の動きはまたとないチャンスであるのです。個々の消費者、生活者と顔の見える立場にある中小小売店、商店街が、エコポイントを活用することによりコミュニティとの信頼関係、さらには連帯関係を強めることが起死回生策であるといえます。

「三位一体改革」は地方自治の拡大にはつながらない

2005-12-12 00:06:46 | Weblog
 今回は12月上旬に基本ラインが決着した「三位一体改革」に関するコメントです。
 「三位一体改革」の基本ラインが決着しました。2003年6月に閣議決定された「3年間で国の補助金の4兆円程度の削減、代わりに行われる税源移譲に関しては、義務的経費に関しては全額を移譲するが、それ以外は8割を移譲。地方交付税に関しては、その財源保証機能を縮小する」という方針は実行されることとなりましたが、問題は、その内容に2つの大きな問題があり、地方自治につながるものとなっていないということです。
 第1の問題点は、4兆円の補助金の削減に関して、地方が求めた公共事業関連にはほとんど手が付けられず、義務教育国庫負担金、児童手当などの補助率の引き下げ、(小中学校の教員給与の負担率を2分の1から3分の1にすることなど。全体の6割)、国民健康保険における国に負担の削減などで行うこととなったことです。
 しかし、これでは単なる補助率、負担率の引き下げにすぎず、義務教育、国民健康保険とも制度の枠組みは決まっているので、自治体の裁量が拡大するわけではありません。
 第2の問題点は、所得税から住民税への切り替えが税源移譲されていることです。住民税は、確かに地方公共団体が所管する地方税です。しかしその制度の根幹は地方税法によって定められており、地方公共団体が自由に動かせる余地は少なくなっています。しかも、住民税の徴税は、所得税におんぶしているのが実態で、地方公共団体が独自に徴収している税とはなかなか言えないものとなっています。税源移譲に関して私は、基本的には地域間格差が小さい消費税を地方税とし、法人関係税を国税とする案が検討に値すると考えています。
 今回の決着は、「地域のニーズに応える行政サービスを地方自らの責任で実施する」といううたい文句からは、だいぶ離れたものとなってしまったといわざるを得ないでしょう。
 今後の焦点は、94%の自治体が依存している地方交付税制度の改革です。2005年度から自治体の経営努力が交付税算定に反映されることとなりましたが、努力しない場合の反映はないのであまり変わりません。今月末に向けて、抜本的な改革が行われるか注視していく必要があるでしょう。

中心市街地再生の鍵は何か(その4):商店街もコペルニクス的転回を

2005-12-08 00:00:13 | Weblog
 今回は、必要となるニ正面作戦のうち、商店街サイドの対応について考えてみたいと思います。
 まず商店街に必要なのは、国や地方自治体で広がっている大型店の郊外立地規制の動きに安住する姿勢を排除することです。他人任せのまちづくりでは到底蘇生はありえないところまで現在の商店街は追い込まれています。これからはまちづくりうを積極的に担う当事者でなければなりません。その危機感を持つことが出発点です。
 といっても、それだけでは商店街のコペルニクス的転回はなしえません。商店街の衰退は著しく、意識変革を具体的なコペルニクス的転回のためのアクションにつなげていくことが必要です。そのためにはこれから必要とされる顧客指向の商業活動と密接な関係にある住民と一体になった社会関係資本の活用です。商店街と住民が一体となったまちづくり、商店街活性化を行っていくという新しいアプローチが必要となります。
 石原武政・加藤司編著『まちづくりネットワーク』(2005)は、詳細なフィールドワークを踏まえ、利潤原理だけではなく地域原理により商店街に参入する個性的な小売業の存在形態が出現していることを明らかにしています。この地域原理というのは、私が主張する協働原理とほぼ同様なものといってよいでしょう。
 この地域原理ないし協働原理は、地域コミュニティの存在を前提にして成立します。商店街を取り巻く地域コミュニティには多元で多様な構成主体があり、一括りの活性化は容易ではありません。また、従来の商店街の合意形成メカニズムが環境の変化についていけなくなっていることも事実です。
 そこで仲間型組織で出発する「この指とまれ」方式が有効となります。商店街と住民との間で共通の目標や志を持つメンバーを集め行動に移すことで、合意形成の困難性が軽減されます。「管理」ではなく「自立」という新しい発想に基づいた商店街・住民一体型のまちづくりが今後の基本的方向ではないでしょうか。
 しかも、今般の中心市街地活性化法や都市計画法の改正により、政策対象が商店街から中心市街地に拡大され、中心市街地に公共施設も含めた都市機能の集約化が図られるようになります。そうすると、まちづくりの主役は(覚醒した)商店街、住民、NPO、行政、大学などのパートナーシップにより進めていくということになるでしょう。
 そのような動きをいち早く見せているのが世田谷区の千歳烏山商店街です。現在千歳烏山商店街では、商店街、住民、NPO、行政、大学などのパートナーシップによりまちづくりを進めて行く場として「地域協議会」が組織されようとしており、新しいまちづくりのツールとしてまちづくりエコポイントの積極的活用(06年度よりICカードを5万枚導入する予定)、商店街と住民等の共同出資による「コミュニティ・カンパニー」(株式会社の形態をとるが、利益は配当ではなく再投資に回す)の設立などのアクションが実行に移されようとしています。

中心市街地再生の鍵は何か(その3):大型店の郊外立地規制のあり方

2005-12-06 00:03:51 | Weblog
 前々回述べたように、今回のまちづくり三法の見直しに当たっては、大店法は改正されない方向ですが、都市計画法が大型店の郊外立地に関しても各自治体が対応できるように改正される方向です。
 さらに日本においてもアメリカの自治体に見られるような動きが出てきたことが注目されます。それは、本年10月13日福島県が「福島県商業まちづくり」を可決・成立させたことです。この条例は店舗面積6000平方メートル以上の小売商業施設を対象とし、県による基本方針の策定、市町村による基本方針をうけた基本構想の策定、事業者による新設届出書の提出、立地市町村等での説明、県による審議会の意見を聞いた上での立地に関する広域の見地からの意見、県の意見が適切に反映されない場合における審議会の意見を聞いた上での勧告・公表という内容になっています。
 福島県としては「一人一人の住民が主役となる地方分権の実現を目指しており、まちづくりを行う際には、住民の『自分たちのためなら』という『地域への思い』の高まりが重要なポイントになると考えている」としており、今後市町村の基本構想の策定の際に、市町村と住民との間で「本気」の議論が行われることを期待しているとしています。
 このような福島県の動きは北海道など他の都道府県にも拡大しようとしており、ようやく日本においても、地方自治の観点から商業立地とまちづくりがリンクされて真剣に検討される時代が到来しようとしています。 

中心市街地再生の鍵は何か(その2):必要となる2正面作戦

2005-12-04 00:03:59 | Weblog
 前回の郊外店に関する都市計画法による対処を前提とすると、中心市街地再生のために必要なのは、①大型店へのゾーニング等の観点からの規制と②商店街サイドの対応を根本的に見直すことの2つを同時並行的に展開することです。
 今回は、①大型店へのゾーニング等の観点からの規制のあり方に関して考えてみたいと思います。この点に関して参考となるのは、アメリカの動きです。
 アメリカでは日本に先んじて郊外に大型店が出店し、小さな街の中心市街地が崩壊しました。しかし現在では、大型店問題を単なる商業問題としてではなく、環境の問題や経済社会全体の問題として都市再生を進めています。
 環境とコミュニティを重視したまちづくりを提唱するニーアーバニスムの旗手たちが書いた『Suburban Nation;The Rise of Sprawl and the Decline of the American Dream』は、スプロール型開発が高い元凶を5つ列挙していますが、その一つに郊外のショッピングセンターを上げています。カリフォルニア州に本拠を置く環境NGOであるシエラ・クラブも活発な批判を展開しています。そこでは、交通渋滞や大気汚染のみならず、開発による生態系への影響も問題とされています。さらに、ショッピングセンターの郊外出店に伴って道路、河川などに関する自治体の公共投資が大きな財政負担となっていることも問題とされています。
 こうした状況下で、アメリカの自治体ではショッピングセンターの郊外出店に伴って生ずる社会的費用に関する影響調査(Impact Review)を導入しようという動きが拡大しています。例えば、ロサンゼルス市では2004年に条例を制定し、店舗面積9000平方メートル超で、その10%超を食品売り場にしている大型店に対して、環境を含めた出店影響調査を義務付けるようにしています。
 このようなアメリカの商業立地規制の背景にあるのは、地方自治の精神です。コミュニティにことはコミュニティに属するものが自己決定し、外部にゆだねることは良しとしない、自己決定・自己管理の考え方です。 

中心市街地再生の鍵は何か(その1):問題の構図と大店立地法の機能

2005-12-02 00:37:24 | Weblog
 今回からは「日本型コンパクトシティ」が有すべき商業機能のあり方について数回にわたり考えてみたいと思います。最初の切り口は、中心市街地再生の鍵は何か、ということに関してです。
 経済産業省の産業構造審議会流通部会と中小企業政策審議会商業部会の合同会議は、本年7月8日に「コンパクトでにぎわいにあふれるまちづくりを目指して」と題する「中間とりまとめ(案)」を公表し、現在各方面から出されたパブリックコメントに対する対応を整理し、早ければ12月12日に開催される会議において答申のとりまとめを行う予定です。
 そこにおける問題の構図は、従来の「大型店VS中小店」から「中心市街地VS郊外」へと転換しています。この観点からまずその機能のあり方を問われるのは、「まちづくり三法」のうち大店立地法です。大店立地法の5年間の運用の実績を見ると、新設大型店への変更勧告が一件にとどまっています。
 この間、大型店の方はどのような店舗立地の出来店を行ったのでしょうか。経済地理学者である荒井良雄・笹本健二編『日本の流通と都市空間』(2004)は百貨店、、大型総合スーパー、食料品スーパー、ホームセンター、家電量販店、コンビニエンスストアなどの出退店の動向を丹念に点検しています。
 それによると、いずれも物流センターを軸とする最小費用立地戦略と地域的な集中出店のドミナント戦略が組み合わされている実態が浮き彫りにされています。優先立地条件はバイパスなどの自動車交通の利便性と低価格でまとまった面積の確保です。農業所得を十分の稼げない地方都市郊外の優良農地は、立地先として最高の標的でした。
 その結果できあがったのは、三原色の無表情に均質化された金太郎飴の郊外大型店です。三浦展著『ファウスト風土化する日本』(2004)では、この均質化された店舗立地が地方都市郊外での犯罪の増加を生み出したいと警告を発しています。そうした「ファウスト風土化は、昔からのコミュニティや町並みを崩壊させ、人々の生活、家族のあり方、人間関係のあり方をことごとく変質させ、ひいては人々の心も変質かさせたのではないか」というのが重大な指摘です。
 大店立地法は「生活環境」をチェックする法律ですが、その「生活環境」は購買行動に伴う利便性に関連したことに限定され、地域社会が本来持つはずのある種の快適空間という視点が欠落しています。「日本型コンパクトシティ」において実現させるべきは、店舗の多様性、町の歴史性、歩ける範囲でのサービスの提供、働くことや居住することとの緊密性などであり、定住に値する「生活環境」です。
 こうした観点から大店立地法の機能に関しても見直しがなされる必要があると思いますが、残念ながら答申の方向は、大店立地法には手をつけないということであるようです。私としては、次善の策として都市計画法の見直しの中で対応される必要があると考えてきましたが、国土交通省の「社会資本整備審議会」の答申はその方向でまとまろうとしています。