加藤敏春ブログ:21世紀の経済評論を語る!

2000年度東洋経済・高橋亀吉最優秀賞等を受賞。地域通貨「エコマネー」提唱者。

総括ライブドア対フジテレビ(その3):株主主権原理主義は誤り

2005-08-01 00:01:06 | Weblog
 前回は資本主義が4段階で発展してきているという拙著『安心革命』(2003)のエッセンスをご紹介しましたが、資本主義の第2段階、そして何よりも第3段階においては、会社が生み出す企業価値は株主のものであったといっても過言ではありません。その意味で村上ファンドが主張しているような株主主権原理主義は、理論的にはともかく、実態的にはそれなりの正当性を持っていたのです。
 しかし、今や資本主義は第4段階に移ってきています。企業価値の源泉はマネーからヒト、すなわち「チエとバ」に移ってきているのです。ライブドアの堀江社長は「おカネで買えないモノはない」と言っています。これは、それ自体としては正しい言葉です。しかし、この世の中にはおカネでは買えないものがある。それはヒトです。そのヒトが生み出す「チエとバ」が企業価値の帰趨を決めるようになっているのです。
 われわれが作り出している第4段階の資本主義においては、お金の提供者としての株主が、企業価値の創造者であるヒトに、会社の支配権を譲り渡さなければならなくなった時代なのです。その意味では、株主主権原理主義が、理論上だけではなく実態上も、その正当性を失いつつあるのです。
 買収合戦の途中でライブドアは、明らかに戦略を変えました。その最大のきっかけは、ニッポン放送保有のフジテレビ株のソフトバンク・インベストメントへの貸株でしたが、ライブドアはカネで買えないものはないという株主主権論的な主張をトーンダウンさせ、インターネットという新メディアとテレビやラジオなどの旧メディアの融合という経営構想を強調するようになりました。企業価値の向上という言葉も使うようになりました。