加藤敏春ブログ:21世紀の経済評論を語る!

2000年度東洋経済・高橋亀吉最優秀賞等を受賞。地域通貨「エコマネー」提唱者。

電子マネーの普及による硬貨流通量の減少

2006-04-28 00:18:18 | Weblog
 国内で流通している硬貨が初めて前年比で減少しました。日銀のマネタリーベース(市中の現金量)統計によると、今年3月の硬貨の平均残高は4兆4521億円で、前年同月を0.04%下回りました。
 前年実績割れは日銀が公表を始めた71年以来初めて。この間、デフレ期に株や債券などよりも現金で金融資産を保有しようとする「流動性選好」が高まったときにも減少しなかったにもかかわらず、デフレ脱却後に硬貨流通量の減少が起こったことの背景には、間違いなくエディ、スイカなどの電子マネーの普及があります。今後とも、この傾向は強まるでしょう。

「ウェブ2・0」の出現

2006-04-26 00:41:10 | Weblog
 最近「ウェブ2・0」という言葉をよく聞くようになりました。その典型は、素人が書いた記事をボランティアが取捨選択してネット上の辞書を作っていくウェブサイト「ウィキペディア」(Wikipedia)です。すでに200以上の言語で180万項目以上を解説する巨大な「ネット上の百科辞典」となっています。
 今までの「ウェブ1・0」は、企業や専門家が時間とお金をかけてウェブサイトをつくり情報発信する場で、すべての顧客を自分の中に囲い込もうとするビジネスモデルでした。しかし、ここ1,2年の内にウィキペディアのような誰もが参加できるようなサイトが生まれ、こうした状況をアメリカのティム・オライリー氏が04年に「ウェブ2・0」と名づけました。
 「ウェブ2・0」の解釈は広がっていて確定的なものはありませんが、軸となる特徴は以下のとおりです。
①利用者参加
 社会全体を巨大なデータベースと捉え、ネットで集めた素人の知識の集合が専門家を超える可能性を重視。会員が多様な質疑応答をする「人力検索はてな」など。
②細かいニーズに応える
 検索技術の進化でネット上の多様なサイトに容易に到達できるようになりました。これをビジネスとして明確に結びつけたのがアメリカ検索大手のグーグルです。圧倒的な検索技術で世界中運利用者をひきつけ、広告によるビジネスモデルを拡大しています。
 さらに、以前取り上げたことのあるブログやSNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)においても焦点を絞った顧客に広告を打つビジネスが行われています。
③ソフトウェアからサービスへ
 プログラム技術が発達し、たとえばグーグルの検索サービスは、ソフトを介さずに、無料で、誰もが簡単にその技術を自分のサイトに取り込めるようになっています。

人知を超えた「いのち」の不思議:サンムシング・グレイト

2006-04-24 00:27:40 | Weblog
 21世紀のはじめ、ヒトの全遺伝子情報が解読され、今や私たちは、ヒトのゲノム(全遺伝子情報)はA・T・G・Cの4つの塩基で構成され、この塩基のペアが約30億個連なっていることを知っています。
 もしこの塩基の配列が、従来の進化論が説くように、自然淘汰の結果偶然に起こったとしたら、私たち一人一人は、4の30億乗分の1という”奇跡的”な確率で生まれてきたことになります。
 「そのようなことは科学の常識では考えられない」と世界的な遺伝子学の権威である村上和男さん(筑波大学名誉教授)は指摘します。「細胞1個、偶然にできる確率は、1億円の宝くじを100万回連続して当選したのと同じようなものある」と。
 村上さんは、「最初に生物を創ろうとする大自然の意思のようなものがあり、それに沿ってデザインがなされ、さらに一刻の休みもなく働き続けている」としか考えられないとして、それを人知を超えた「サンムシング・グレイト」と呼んでいます。
 「サンムシング・グレイト」は進化論を否定するものではなく、それを超えたものというべきでしょう。今世界中のお金を全部集めても、世界中の科学者を総動員しても、生きた細胞1つ生み出せません。最近の分子生物学の長足の進歩が、科学を超えたものの存在を浮かび上がらせているようです。

投資家保護ルールの整備の進展:金融商品取引法(その2)

2006-04-19 00:35:57 | Weblog
 金融商品取引法の内容は次の通りです。いずれも()は05年に起こった代表的な事件です。今後はこれらのことが規制され、一般投資家の保護が図られるようになります。

ーTOB制度の改善
 -他者がTOBを実施中に株式を買い増す場合は、TOBを義務付け
 (フジテレビがニッポン放送へのTOBを実施中、ライブドアがニッポン放送の  株式を取得・買増し)
 -市場内のみならず市場外の取引を含めて上場企業の発行済み株式の3分の1超  を取得する場合は、TOBを義務付け
 (村上ファンドがTOBを使わずに、市場内取引と市場外の取引を併用して、阪  神電鉄株の3分の1超を取得し、阪神タイガーズの上場を要求)
ー投資事業組合の規制強化
 -個人投資家向けファンドに登録制を導入し、情報開示を義務付け。機関投資家  向けは届出制に
 (平成電々の破綻)
 (ライブドアが投資事業組合を実質支配している事実を公表せず、粉飾決算や偽  計に悪用)
ー大量報告制度の特例見直し
 -機関投資家が上場企業の株式を5%超取得した場合、報告期限を現在の最大3  ヵ月半から最大3週間後に短縮
 (村上ファンドがニッポン放送株やTBS株を取得した際、特例で保有状況が長  期間わからず)
ー罰則強化
 -「懲役5年以下、罰金500万円以下」を「懲役10年以下、罰金1000万  円以下」に引き上げ
 (ライブドアの証取法違反事件)

 施行に関しては、罰則強化はこの夏、TOB制度の改善は06年内に行われ、法律全体は07年下期になる予定です。


投資家保護ルールの整備の進展:金融商品取引法(その1)

2006-04-18 00:10:12 | Weblog
 この国会で金融商品取引法が成立する見込みです。この法律の最大の特色は、05年に起こった平成電々の破綻、ライブドア事件、村上ファンドが絡んだM&Aなどにかんがみ、株式や投資信託、金融先物など、現在は別々の法律になっている金融商品の規制を、一つの法律に集約して投資家保護ルールを整備する点です。
 金融技術の進歩で新しい金融商品が増え、法律の隙間を狙った商品は金融当局すら実態を把握するのが困難なケースが多くありました。新しい法律は、法の”抜け穴”をふさぎ、的確な監督や違反に対する処分を可能にして、投資家保護を強化することを目指しています。
 例えば05年10月に経営破たんした通信ベンチャー「平成電々」の場合は、1万9000人が投資した約490億円が回収困難な状態になっています。これは、現行法では監督対象外の投資事業組合(商法上の匿名組合)が資金の受け皿に使われたため、被害の全体像がつかみにくく、不透明さが被害拡大の原因になったと指摘されています。
 次回は、金融商品取引法の内容についてポイントをご紹介したいと思います。

資本主義は「車の両輪」により発展:イノベーションと経済犯罪防止

2006-04-17 00:15:17 | Weblog
 今回もライブドア事件に触発されたタイトルの話題を取り上げてみたいと思います。
 資本主義がさまざまな矛盾を抱えながらも「イノベーション」によって発展してきたことは、J・シュムペーターの理論やベンチャービジネスの実践を見れば明らかなところですが、もう一つの駆動力があることは忘れられがちです。
 それは、ライブドア事件で起こった粉飾や偽計などが行われれば、証券取引法、商法等によって処罰するという「経済犯罪防止」の仕組みです。というのは、粉飾や偽計に資金が集まれば、イノベーションに資金は回らなくなり経済は発展しなくなるからです。いずれ破綻する方向に資金が流れないようにするのが、資本主義のもう一つの駆動力です。
 「経済犯罪防止」の仕組みが作用するのは、経済犯罪が発生する前に安全装置が作動することです。企業による情報開示やコンプライアンス体制の確立、監視機関による監視などはそのために必要となります。そして何よりも経営者が経営倫理を持ち、人々の信頼関係の上に経済が成り立っていることが資本主義の大前提です。
 ライブドア事件が社会に大きな衝撃を与えたのは、資本主義のもう一つの駆動力としての「経済犯罪防止」の必要性を感じさせたことにあると私は見ています。

ライブドア事件のインパクト:アメリカのエンロン事件との対比

2006-04-14 00:13:23 | Weblog
 昨日ライブドア株式上場廃止となりましたが、改めてそのインパクトを振り返ってみたいと思います。
 ライブドア事件の構成要件としては、別組織を利用した利益の付け替え、本体の粉飾決算などで、01年から02年にかけて破綻したアメリカのエンロンやワールドコムがやりつくした手法と類似しています。
 エンロンやワールドコム事件に関しては、当時日本においても新聞、書籍などで取り上げられましたが、規模においてライブドア事件とは比べ物にならないくらい大規模な不正でした。ライブドアが起訴の対象になった粉飾決算の金額は50億円程度ですが、エンロンの場合は約10億ドル(約1200億円)もの規模です。
 ただライブドア事件については、相対的に規模が小さくても日本の足元で起こったこと、事件が報道された直後東京証券取引所の取引がパンク寸前の状態になったこと、そして「市場の規律」を構築することが急務であることを実感させたという点において、通常の経済犯罪とは一線を画するインパクトのあるものだと言えると思います。
 この点に関して、05年12月金融庁は「日本版SOX法」の制定に向けた土台となる基準案文書を公表しました。SOX法というのは、アメリカのエンロンやワールドコム事件後制定されたサーベンス・オクスリー法のことで、会計不祥事やコンプライアンスの欠如などを防止するために内部のガバナンスの強化、外部監査の義務付けなどを内容としています。若干遅れた感は否めないのですが、「日本版SOX法」の法制化が進もうとしています。

「グリーン経済」に向けた提言

2006-04-13 00:12:56 | Weblog
 NPO「環境文明21」(加藤三郎代表)は、このたび私たち人間の立場から見て望ましい「グリーン経済」のあり方について、「食べる」、「働く」、「買う」という3つの視点とそれを支える「適正な規制と経済的手法」からビジョンを出しました。今回は、それをご紹介したいと思います。
 ー「食べる」
  -食料自給率を高める
  -農業の価値を再認識し、若者が安心して農業に就業できる仕組みを作る
 -「働く」
  -働き方の多様性を認め、労働に対して経済的にも社会的にも正当な評価が与   えられる評価制度の導入
  -男女ともに、次世代の担い手である子供が育てられる働き方をする
 -「買う」
  -地域の個性と伝統文化を大切にし、それを根っこにもつ地域経済を育てる
 -「適正な規制と経済的手法」
  -予防原則(EUなどで採用されている考え方で、必ずしも科学的知見が十分   ではない段階でも、将来のリスクを考えて環境保全のための事前規制をする   という原則)に基づいて適時・適切に規制を行うこと
  -特にCO2については、固定・移動発生源に対する規制を早急に行う

「サステイナビリティ学」の提唱

2006-04-12 00:33:35 | Weblog
 「サステイナビリティ」という言葉は、21世紀に持続可能な社会を構築していく上で基本的な概念になっていますが、今回はそれを実現するために新しい学問、知識の体系=「サステイナビリティ学」が必要となっていることについて、述べてみたいと思います。
 今までの日本の経済発展には目覚しいものがありましたが、温暖化、ヒートアイランド、廃棄物の増加、環境破壊、少子高齢化などのさまざまな課題を21世紀に生み出しました。
 他方、学問分野では知識の細分化が一層進み、学問ごとに使う言葉が異なりコミュニケーションが困難になっています。自然科学でも気象、エネルギー、バイオテクノロジー、環境機器工学などに分かれており、一つの学問ではこれらの課題を解決するための方法論を提示することができなくなっているのが現状です。課題解決のためには、細分化された自然科学の横断的な連携が必要です。
 さらに必要なのは、人間のサイドから見てどのような社会を構築していくのかという哲学をはじめとする人文・社会科学との連携も必要です。「サステイナビリティ学」とは、20世紀の学問では失われた「知の総合化」でもあるのです。

スウェーデンに学ぶ「持続可能な社会」

2006-04-11 00:06:04 | Weblog
 「サステイナビリティ」は21世紀社会のキーワードの一つですが、小澤徳太郎(環境問題スペシャリスト)著『スウェーデンに学ぶ持続可能な社会:安心と安全の国づくりとは何か』(2006)は、スウェーデンをこれからの日本社会が目指すべきモデルとして提示しています。
 著者は、日本が”失われた10年”で目標喪失に陥っていたとき、スウェーデンは20世紀型の「福祉国家」から21世紀型の「緑の福祉国家」(生態学的に持続可能な社会、人間と環境の両方を大切にする社会)へと舵を切ったと指摘しています。その象徴が、05年1月1日に発足した「持続可能な開発省」であり、環境省は環境庁としてその傘下に入ったことです。「持続可能な開発省」は経済政策、地域政策、環境政策を統合して、トータルな視点で政策の企画立案、実行を推進します。
 また著者は、日本の経済学者は資本・労働・土地・技術を投入して経済を拡大する思考にとらわれ、資源エネルギーの有限性や環境問題への考慮が乏しいと批判しています。日本政府が05年に出した「21世紀ビジョン」に対しても、環境問題は経済成長との調和が前提という2次的な視点でしか捉えられていないとして批判の矛先を向けています。ちなみにスウェーデンでは、70年から2000年の30年間にわたりGDPの拡大にもかかわらず最終エネルギー消費は横ばいです。
 最後に著者が提唱しているのは、長期ビジョンが不確かなまま現状追認するという対応から、スウェーデンのように、将来のあるべき姿と想定しそれに向かって行動するという基本姿勢の転換であるとしています。いろいろ考えさせられる好著です。

家計貯蓄率の低下は財政問題も悪化させる

2006-04-10 00:13:08 | Weblog
 前回述べた日本の家計貯蓄率の急速な低下の最大原因は、人口の高齢化です。高齢化の指標である65歳以上人口比率は、85年頃は10%にすぎませんでしたが、05年には20%程度まで上昇しています。これはスウェーデンなどの北欧諸国を抜いて、主要国の中ではイタリアの18.3%をも抜いて最も高齢化した国になっています。
 日本の高齢者は貯蓄の取り崩しもせず、年金をもらい始めても貯蓄を続けると指摘されたこともありましたが、実際には高齢者は貯蓄と取り崩しており、そうした高齢者の人口に占める割合が高まったことが、貯蓄率の長期的低下を引き起こしているのです。さらに、バブル崩壊後の超低金利策によって家計の利子所得が大幅に減少し、受け取り利息よりも支払利息が大きくなったことも(1400兆円の金融資産に比して、マイナス分は10兆円)家計貯蓄率が低下を後押しした要因です。
 現状では、このような家計貯蓄率の急速な低下、膨大な財政赤字にもかかわらず経常収支は黒字ですが、これは企業部門が大幅な資金余剰の状態にあるからです。バブル崩壊後、日本企業は膨大な過剰債務をかかえました。このため設備投資の抑制や賃金引下げなどで大幅な資金余剰を生み出し、債務を削減してきたのです。しかし、企業部門全体で見れば、売上高や利益に対する債務の比率は、すでにバブル期以前の水準に戻っています。過剰債務削減の必要性はなくなり、企業の大幅な資金余剰という状態は遠からず解消されるでしょう。
 家計貯蓄率の急速な低下と企業部門の大幅な資金余剰の解消によって、財政赤字をまかなうことは困難となります。これまでは国内資金が豊富でしたので、大幅な財政赤字にもかかわらず、長期金利は1.5%程度の低水準にとどまってきました。しかし国内の式が不足すれば、国債消化は困難となり、金利が大きく上昇する危険性があります。

「双子の赤字」に陥る日本経済:経常収支も赤字に

2006-04-07 00:52:41 | Weblog
 現在日本経済は膨大な財政赤字をかかえていますが、ここ5年から10年のうちには経常収支も赤字となり、アメリカのように「双子の赤字」状態になることが濃厚です。その原因は、家計貯蓄率の急速な低下と企業部門が抱えている大幅な資金余剰の解消にあります。
 04年度の家計貯蓄率は2.8%で、03年度の4.1%に比してさらに低下傾向にあることが確認されました。かつて日本の家計貯蓄率と言えば10%以上が当然で、70年代には20%を超えたこともあったことからすると、隔世の感があります。ちなみに、1月末に発表されたアメリカの05年の家計貯蓄率はマイナス0.5%で、日本も家計貯蓄率がゼロあるいはマイナスになる事態を覚悟しておかなければなりません。
 国内のIS(貯蓄・投資)バランスと財政収支のバランスは、恒等式により経常収支バランスとイコールとなりますので、財政収支がマイナスの下での国内のISバランスのマイナス化は、必然的に経常収支がマイナスとなることを意味します。
 しかも日本とアメリカの決定的な違いは、円はドルとは違い基軸通貨ではないということです。経常収支がマイナスとなっても海外から資金が流入し対外債務の支払いに不安のないアメリカと、そうではない日本とでは大きな違いがあります。日本では海外からの資金調達が困難となり、金利が急上昇する可能性が高いのです。このことに関しては、従来あまり警鐘は発せられていませんが、十分認識すべき問題です。
 

改正独禁法と談合抑止力

2006-04-06 00:43:54 | Weblog
 本年1月4日から改正独禁法が施行され、談合に対する取締りが強化されています。
 改正の主な内容は、①課徴金の算定率を売上額の原則6%から10%へと引き上げたこと、②刑事告発を積極化させるために、公正取引委員会に犯則調査権限を与えていることです。なお、公正取引委員会の調査開始前に最初に情報提供した企業に対しては、課徴金を全額免除するとともに、刑事告発もしない制度も導入されました。
 これにより、今日では談合は必要悪であるとしてきた時代に終わりを告げ、談合は割に合わないものだという意識が企業の間では高まっています。残る問題は、昨年の道路公団の談合事件、本年の防衛施設庁の談合事件などが象徴するように、官製談合に対する手当てです。

「格差」ではなく「不平等」が問題

2006-04-05 00:01:29 | Weblog
 今まで3回にわたり「格差問題」を取り上げてきましたが、今回はこれに関連した好著として『変化する社会の不平等』(2006)を取り上げてみたいと思います。
 この本で問題としているのは、統計データで図られる実態は、所得格差論争で争われる程度にしか大きくないのに、なぜ人々は過激な不平等化論に相槌を打ち、世の中を負け組みと勝ち組に二分化しようとするのか、というところにあります。
 編者によると、「格差」と「不平等」には違いがあるといいます。格差は経験的、実証的に測定可能なものであるのに対して、不平等は社会正義という規範概念に基づく価値判断を伴います。人々の業績が正当に評価されず、個人の手の届かない不条理な要因によって決まると考えられると、所得の格差は不当で不平等なものとなるというのです。
 まず本書では、このような「不平等の爆発」は戦後型社会の仕組みの喪失、バブル崩壊後の不況とグローバル化に伴う経済や雇用の仕組みの転換など、不安は不信を増大させる政策が合わさって起こっていると指摘しています。そしてこの本が新たに提示している問題は、社会保障との関連に焦点を当て、少子高齢化社会に潜む不平等構造を明らかにしていることです。
 今後、本人の努力ではどうにもならない世代間や地域間、親の所得階層間の格差が拡大し、社会福祉サービスに対するニーズはこれまで以上に高まるのに、それに対する政策的対応がなされていないと指摘しています。