加藤敏春ブログ:21世紀の経済評論を語る!

2000年度東洋経済・高橋亀吉最優秀賞等を受賞。地域通貨「エコマネー」提唱者。

「愛・地球博」は歴史に新しいページを残せるか?(その8):「子供たちが語り継ぐ」ようになっているか

2005-08-22 00:02:03 | Weblog
 「愛・地球博」は夏休みに入り、大勢の家族連れでにぎわっている。その中には1970年の大阪万博を訪問した両親や祖父母の世代とともに初めて万博を経験する子供たちも多くいます。期待を胸に訪れる光景は大阪万博と重なるようですが、人気アニメ映画から生まれた「サツキとメイの家」や1万8000年前の冷凍マンモス、ロボットショーなど娯楽性の高いパビリオンばかりに人気が集中し、長蛇の列ではゲーム機に熱中する子供の姿が目立っています。
 私はこのような光景を見るにつけ、大人たちがかつて見たときのような夢や未来を、子供たちは感じているのだろうか、という疑問を持ちます。2003年ノーベル化学賞を受賞した田中耕一さんは少年時代親に連れられて富山市から大阪万博の「月の石」を見て将来への夢を膨らませたといいます。
 確かにみんなが同じ未来を夢見た高度経済成長期とは時代背景も目指す未来像も変わっています。多様性が大事なことは勿論です。基本的には、各自がそれぞれの価値観で意味のあるものを探せばよいと思います。
 ただ、大人にはそのことは容易にできても、子供にはそうたやすいことではありません。「愛・地球博」にはいろいろな体験の仕掛けがあります。夏休み期間中の子供たちにとって会場は巨大な教室であり、パビリオンは生きた教科書でもあります。1日で世界旅行ができたり、過去を行ったり来たりすることもできます。このようなせっかくの機会を活かすには大人の手助けと子供たちとの対話が必要です。
 この意味では、長久手会場では舞台裏を支える最新環境技術を見学する「バックヤードツアー」がお勧めです。ツアーは「循環型システム」と「エネルギー」の2コース。循環型では、万博150年の変遷氏や環境対策の位置づけについて解説を聞いたのち、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の新エネルギープラントや水の浄化施設などを2時間かけて見学します。
 会場内のレストランから出る生ゴミを発酵させて発生するメタンガスを使ったり、ペットボトルや廃木材を粉末にして高温で分解して水素を取り出すなど、燃料電池だけで3種類の発電施設があります。「500ミリリットルのペットボトル1本分の粉末(約25グラム)で、30ワットの蛍光灯が90分間点灯できる」などは、子供たちにとって驚きの情報であるに違いありません。
 小学5年生から中学生が対象の「キッズエコツアー」は、ボランティアスタッフの説明を聞きながら、太陽光発電パネルや火力発電所の石灰灰をリサイクルしたレンガなど、会場内の10施設を約1時間かけて回るものです。
 私は、子供たちに伝え、何かを感じてもらえる場として瀬戸会場がお勧めではないかと思っています。大規模間が集中する長くて会場とは異なり、瀬戸会場は市民中心の運営で。親子での森林探索や工芸教室などを通して、身近な自然の大切さを学ぶことができます。
 瀬戸会場に隣接する森では、森の案内人「インタープリター」と里山を歩くツアーが穴場だと思います。ツアーは、谷筋を散策したり、森の中で遊ぶなど45~75分の5コースあります。そのうち「山の小径コース」は、75分かけて約1頃メートルの山道をゆっくり歩きます。ムササビの食べ散らかした落ち葉やリスの巣を見たり、蜂に出会ったときの対処法、里山で生計を立てた昔の人の生活ぶりなどを学びます。鳥や虫の音に耳を澄まし、間伐材で作った高さ12メートルの塔から会場の森を眺めます。万博の人ごみとは別世界です。
 人気や話題性だけにとらわれず、子供たちが何を感じ、何を発見したいのか。目的と好奇心を持って瀬戸会場を見れば、満足のいく体験ができるはずです。