カタスミ

『未来』湊かなえ著

父親を亡くした10歳の章子の元に
未来の自分から手紙が届く話。
以下ネタバレあり。




















最初のあらすじだけ見るとほのぼの系かと思うけど
全然そんな事はなく、手紙を心のよりどころにするが
どんどんと人生がおかしな方向へ進んで行って
最後は殺人まで犯してしまう少女の話。

最初は章子が未来の自分へ近況報告する為に書いた手紙という形で物語が進み、
問題が起こっても次の手紙で事後報告って感じで
解決後の展開を見る事になり、気持ち的にも読みやすいです。
それでも次から次から問題が起こるんだけど。
章子が大好きだった父親が病死し、母親は精神的に不安定で、
章子がしっかりしようとするんだけど、
やはり子供なので周りに振り回されてしまう。
父方の祖母が突然家に来て章子に母親は殺人犯だと吹聴したり、
母親と章子の担任の恋愛問題が起こり、担任の林先生は振られて精神不安定に。
その後母親が職場で知り合った男早坂と親密になり一緒に住む事になるのだが、
こいつがろくでもない男で、こいつのせいで章子は学校でいじめられて不登校になる。
あげく自分の仕事が上手くいかずに章子に暴力を振るい、母親に売春させる。
母親を救う為に章子は殺人を決意するのだが
こうやって見るとだいたい母親のせいだな…

母親も子供の頃から実の親に性的虐待を受けており
そのせいで精神不安定になってるっぽいので可哀想なんだけど。
でもいざという時だけは人をかばったりしているので
芯は強い人なのかなぁ…でもそうじゃない…
早坂の言いなりになるんじゃなくて、章子を守る為に
なんとか別の行動をして欲しかったなぁ…
章子が早坂を殺した後はどう始末をつけたんだろう。

章子の友人亜里沙も父親から暴力を振るわれ、
弟が父親のせいで自殺してしまったのをきかっけに
父親を殺そうとするのだが、
2人ともこうなる前に別の大人に助けを求められなかったのかなぁ?
周りに良い大人がいなかったってのもあったのだろうけど。
まずは警察でもなんでも駆け込んで欲しかったなぁ。
篠宮先生の存在だけが救いなのかもなぁ。
篠宮先生もいろいろあったけど、最後幸せになれそうで良かった。
林先生にも救いを…^^;

なので最後ドリームランドで大声を上げて助けを求めるって言うのは
ある意味救いなのかもしれないけど
何もそんなところで大声上げんでも…と思った。
ただ、公的機関に助けを求めても
大して助けられずに終わってしまうって事もありうるから
どこでもいいから派手に注目浴びて世間の話題になる方が良い場合もあるのかも…
正解は結果論でしか分からんね。

章子にとってはすごく立派な父親でしたが、
実は母親は父親の殺人をかばってたって真相があり、
その真実をわざわざ子供に宛ててフロッピーに残していたんですが
いや、まじでこれは墓場まで持って行ってちょうだい…
子供に残す内容では無いなぁ…

全体的には暗めです。
殺人、いじめ、虐待、売春、などなど…
救いようが無いなぁ…
悪いやつが死んで良い人が生きているのはまだ良かったけど。

最近外れ小説が多かったのですが
この話は結構面白く読めました。
各々の登場人物目線で語られていくうちに
事の真相が見えてきたりして。
ただ手紙の主にしても、母親の犯した殺人にしても、
真相は割と安直な結果だったので、
もうちょいひねりがあっても良かったかなぁと思います。
最後、もう少し先の展開まで知りたかったかなぁ…
いずれは映画化するんじゃないですかね?
星は4つ。
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