カタスミ

『すみせごの贄』澤村伊智著

比嘉姉妹シリーズの最新作短編集です。
以下ネタバレあり。



















今回は前回より面白かった。

■たなわれしょうき
引きこもりの中学生将太が父の知り合いである
野崎昆の取材に同行し、奇妙な体験をする話。
家の前に鍾馗を飾る風習のある土地での取材をするが、
その土地の鍾馗には手が4本あった。
昔、無実の罪で無残に手を裂かれ死んでいった男が
夜な夜な霊となり村人を殺して行く為、それを退ける為に
『たなわれしょうき』を家の門柱に置くようになった
という言い伝えがあった。
その土地で一晩を過ごす事になった将太は
夜中に謎の人物に襲われる事になる。

という感じのお話。
主人公が死ぬパターンではないので良かった。
最後の感じも、ホラー独特の『悪夢は続く』を匂わせているものの
脇役以外は死ぬ事はなく、ほどよくぬるっと気持ち悪く、共感性もあり面白かった。

■戸栗魅姫の仕事
偽物霊媒師の戸栗魅姫はとある旅館の怪異を払う為やってきたが
自らが巻き込まれてしまう。
何人もの人がその旅館で行方不明になっているのだが
自分も旅館の中で迷子になって出られなくなってしまった。
一緒に迷子になっている子供珠美と同じ所をぐるぐると回っていると
鈴木華子と名乗る女性と偶然出会い、一緒に出口を探索する。

琴子姉ちゃんのターン!
密室怪異系大好物です。
ラストもどっちかって言うとハッピーエンドでは?
この戸栗魅姫は今後も出てくるかもなぁ。
面白かった。

■火曜夕方の客
とあるカレー屋に火曜の夕方に必ずやってくる不気味な女性客。
カレー2つを買い帰って行く。
その事をSNSで拡散させた事がばれ、店主は倒れてしまう。
真琴と野崎は事の真相を探る。

現代版子育て幽霊のお話。
現代の問題が色濃く反映されている。
怪異は重くはないが、事件が重いので心苦しくはある。
ラストがパツンと終わっちゃう印象。

■くろがねのわざ
とある映画の特殊メイクを担当した鉄成生氏を褒めると体調を崩す。
その事を知った一人編プロの谷村が詳しく調べ始める。

調べていくうちに事の真相が分かっていくのが面白かったが
鉄氏が命を絶ってまで秘密にしておきたかった内容が
あまりピンと来なかった。
女優さんを好きだったって事なのかな…?
今回も真琴がちらっと関わってきます。

■とこよだけ
野崎と先輩ライターの築井がとある怪異の噂がある島に
潜入調査をしに行く話。

結局怪異、というよりは胞子により幻覚をみせられていた
と言う事なんだろうが、人間の体を崩壊させてしまう辺り
今回の怪異の中で1番怖いんじゃないだろうか?
なぜか琴子姉ちゃんが颯爽と助けに来たのはちょっと違和感あるけど(笑)
ま、琴子さんだしありえそう…w
築井さんは残念でした…

■すみせごの贄
料理家辻村ゆかりが行方不明になった羽仁先生の料理教室で
臨時で講師をする事になり、事の真相を暴いていく。

なぜかちょいちょい登場する辻村ゆかり。
別に好きなキャラでもないんだが、作者のお気に入りなのかな…?
表題作の主役がこの人ってのがちょっと気に入らないんだがw
話自体はまぁ、面白かったし、ホラーっぽい終わり方でした。

以上、今回は比嘉姉妹もそれなりに出てきたし
オチも胸くそばかりでもないし
バランスが良かったのではないだろうか?
どれも面白く読む事が出来た。
でも辻村ゆかりはもういいかな…?^^;
星は4つ。
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