さて以上で話は終わりなのですが、時計Bタイムでt=3の時の同時刻ラインが時計Aとクロスしている場所での時計Aの時刻は次のようになっています。
1.8=3*sqrt(1-0.8^2)
この時刻の値をもって従来は「時計Bからみれば時計Aの時間は遅れている」としていました。
tB=3>tA=1.8 という訳です。
その状況は図2で確認できます。
図2
y=0,x=0,y=-1.25x,x=-2.4,y=3,y=8.3333,x=-6.6666 プロット -10<x<10, -10<y<10
さてしかしながらこの時に時計Aと時刻の比較しているのは原点で時計Aとすれ違って時刻合わせをした時計Bそのものではありません。
時計Bから左に2.4だけ離れた時計B1なのです。
ちなみにこの時計B1の軌跡は図2では赤の縦棒で示されています。
それでこの時計B1は時計Bの属する慣性系内では時刻合わせが出来ています。
つまり「時計Bにしてみれば時計Bがt=3の時には時計B1もt=3だ」と主張できます。
そうしてそれが時計Bが主張するところの「同時刻ラインの意味」です。
この主張が通るならば「時間のおくれはお互い様」となります。
時計Aタイムt=5の時に時計Aの同時刻ライン上の時計Bタイムはt=3でした。
そうしてまた時計Bタイムt=3の時に時計Bの同時刻ライン上の時計Aタイムはt=1.8です。
そうであれば「ほら、時間のおくれはお互い様になっている」とは通説の主張する所となります。
しかしながらここでアインシュタインが登場するのです。
「時計Bよ、同時刻と言うのは君の慣性系の中でしか通用しない」と。
時計Aからしますと時計Bの慣性系は右にV=0.8Cで動いています。
そうであれば時計Bの位置から左に2.4の位置に在る時計B1の時刻は過去にずれる事になります。
そのずれ量は
0.8*2.4=1.92
従って時計Bが「時計B1の時刻はt=3だ」といった時の時計B1の時刻は実は
3-1.92=1.08
となっているのでした。
従って時刻の比較は時計B1タイム1.08<時計Aタイム1.8 となり
時計Bの属する慣性系の時間は時計Aの慣性系に対して遅れている事が分かります。
その遅れ分は
1.08=1.8*sqrt(1-0.8^2)
であり、やっぱりsqrt(1-0.8^2)の割合で遅れているのです。
以上でアインシュタインの主張とローレンツ変換の結果から「時間の遅れは一方的である」という事が計算で示す事ができました。
さてそうなりますと「時計Bにとっては同時刻ラインと言うのは一体何なのだ?」という事になります。
その答えは「時計Bにとっては世界はそのように見えている」という事になります。
それは時計Bの世界認識の仕方を示しているのです。
しかしながらそれは時計Bの主観的な世界認識を意味しているのであって、客観的な世界認識にはなってはいないのです。
そうして特殊相対論は客観物理学でありますから「時計Bの主観的な認識」については「それは君の主観的な認識にすぎない」と言う事になります。(注1)
注1:時計Bにとっては自分の世界認識の在り方に従って実験計画を立てて測定を行えば、自分が予想した通りの測定結果を得ることになります。
しかしながらその測定結果は「客観的な測定装置を使っているにも関わらず時計Bの主観的な世界認識を表しているにすぎない」のです。