さてそれで「同時性の相対性」という事についての説明にもどります。
現象として分かりやすいアニメーションを再度、参照します。: https://javalab.org/ja/relativity_of_simultaneity_ja/ : https://archive.md/WxWAH :
このアニメーションでは「静止系は車の外」であって「動くのは車」という前提で行われています。
そうして「その2・棒の時間とローレンツ短縮の関係」: https://archive.md/IKlgV :で説明したアインシュタインのローレンツ変換を用いた解決方法もその前提に従ったものでした。(注1)
それはつまり「車の外」という静止系からみた場合に「移動している車の先端と後端に光が届いた静止系時刻を基準にしてそれを車の中の時間に変換する」という作業をしました。
その結果は「動いている車の中の観測では車の先端と後端に光が届くのに1秒かかる」という変換結果になりました。
つまりは「車の全長が2Cでその真ん中から出た光が車の前と後ろに1秒後に同時に届くことを車の中では観測することになる」となったのです。
さてこの結果については車の中の観測者には「当たり前の事」として受け取られます。
というのも「窓のない車の中の実験では車の中の観測者には車の移動が分からないから」ですね。
そうであれば車の中の観測者にとっては「単に静止系での光速の測定実験をしたのだ」となるのです。(注2)
従って距離1Cを光が1秒で走るのは当然ですから「そこには何の問題もない」というのが「車の中の観測者の認識」です。
しかしながら「実は車は0.6Cで車の外の静止系に対して動いていた」のです。
そういう設定で計算をして「車の中では真ん中から出た光が車の前と後ろに1秒後に同時に届いた」となったのです。
さてそれでここで特殊相対論の前提のうちの一つ「相対性原理」に注目します。
「相対性原理」のアインシュタイン流の定義では「すべての慣性系では同じ形の式が成立する」となっています。
それで今の場合に「相対性原理」を適用すると「光の速度を表す式」つまりは「マクスウェル方程式が車の中でも外でも同じように成立している」となります。(注3)
そうであれば「車の外で光の速さを測っても、動いている車の中で光の速さを測ってもその結果は同じ、光速Cとなる」のです。
従って「車の中では真ん中から出た光が車の前と後ろに1秒後に同時に届いた」という測定結果を説明するだけなら「ローレンツ変換はいらない」のです。
ただ単に「相対性原理」が成立していれば「車の中では光は前と後ろに1秒後に同時に届く」のです。
そうしてそこには「静止系という話」はでてきません。
ならば「その方が話は早いのでは?」となりそうです。
それでそのような「相対性原理」のみに注目した場合の計算は「その2・棒の時間とローレンツ短縮の関係」: https://archive.md/IKlgV :の(注2)で行われています。
そこですでに言及している様に最初に示したアニメーションの表示もこのやり方の計算に従っています。
確認のために以下、その計算結果を示します。(これはアニメーションの表示そのものの引用と同じです。)
静止系(=車の外からみれば)真ん中から出た光が
車の後端に届くのは0.63秒後
車の先端に届くのは2.50秒後
このときもちろん車の中(=運動系)では
車の後端に届くのは1・0秒後
車の先端に届くのは1.0秒後
となっています。
さてしかしながらローレンツ変換が支配している我々の宇宙では同じ状況の実験を行いますと次のような結果を得ます。
静止系(=車の外からみれば)真ん中から出た光が
車の後端に届くのは0.50秒後
車の先端に届くのは2.00秒後
となります。
このときもちろん車の中(=運動系)では
車の後端に届くのは1・0秒後
車の先端に届くのは1.0秒後
となります。
両者の結果を比較しますと車の中の測定結果には相違は見られませんが、車の外からの観測結果に違いが出てきています。
そうしてもちろん「我々の宇宙の現実はローレンツ変換に従う」のです。
さて以上の事からわかりますように「同時性の相対性を確認する実験を行う」と「その測定結果を説明する為にはどうしてもローレンツ変換が必要となる」という事になります。
そうして「ローレンツ変換の計算を行うためにはどうしても静止系の設定が必要となる」のでした。(注4)
注1:実際は「棒の時間を使って変換した」のですがこの操作はローレンツ変換を行った場合と同じ結果を与えます。
注2:「窓のない移動中の船の中では、その船が動いているのか止まっているのか判断できない」と言ったのはガリレオでした。
これを後の人は「ガリレオの船」あるいは「ガリレオの相対性原理」と呼びました。
注3:マクスウェル方程式から「電磁波の速度はCである」つまり「光速はCである」が出てきます。
それで「マクスウェル方程式が車の中でも外でも同じ形で成立する」という事はつまりは「車の中でも外でも光速はCである」という事になるのです。
ちなみにポアンカレは「マクスウェル方程式が車の中でも外でも同じ形で成立する」という事を最初に証明し、そこから「光速不変」を導き出しました。
そうしてそのことからアインシュタインより早い段階で「物理現象における相対性原理を提唱した」のです。
注4:さてそうであれば「アインシュタイン流の特殊相対論」では「静止系は必要だがそれと同時に相対性原理も成立していなくては困る」という事になるのです。
従って「その結果は」といいますれば「静止系はローレンツ変換を適用するために選ばれた基準になる慣性系」という扱いになり、ただし「静止系」という名前とは裏腹に「その慣性系は動いていても良い」という事になっているのです。
つまりは「静止系という名前はあげるが、それは単に区別するためにそういう呼び名を与えただけ」であって「実質上は、あるいは物理的には静止系も運動系も同じ慣性系であってそこには何の違もない」としているのです。
さてそのような立場に立っている「アインシュタイン流の特殊相対論」では「静止系は存在する」のですがそれは「リアルなもの」とはとらえらえておらず、言ってみれば「バーチャルな存在」として扱われているのでした。
そうであれば当然 冒頭のアニメーションにおいて車の中の観測者は「車は止まっていて車の外が動いているのだ」と主張することもできるのです。
そうして「アインシュタイン流の特殊相対論」はその場合でも上記で示したのと同じ観測結果を出さなくてはならないのです。
さて本当にそうなっているのでしょうか?
その事についてはページを改めて検討することと致しましょう。
追伸:相対性原理と静止系についての解釈問題
「相対性原理」を通説のわかりやすい解釈「すべての慣性系は平等である」ととらえますとそれは「静止系が存在する」という主張と真っ向からぶつかることになります。
というのも文字通りにとらえるならば「静止系とは動いていない唯一の慣性系」という意味になるからです。
そのように解釈するならば「静止系は特別な存在」となります。
従ってその解釈をとるならば「相対性原理と静止系は論理的には互いに相手を排除する関係にある」と言えます。
さてしかしながら「特殊相対論においてローレンツ変換を適用する為には静止系が必要」なのです。
そうであれば実は「特殊相対論では鋭く対立している2つの主張が共存している」という事ができます。
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