今日の秋櫻写

こちら新宿都庁前 秋櫻舎

団七!

2012年09月20日 20時51分00秒 | きもの
3連休中はにわか雷雨がたびたびあった東京。
ワタシはうまい具合にすり抜けていたのだけど、
みなさまはどうでしたか。

「KOSMOS」がそろそろお手元に届いた頃かと思いますが。
発送後に受け取ったアンケート葉書で
今後の講読を希望しないと書かれた方に関しては
次号から対応させていただきますのでご了承くださいませ。

さて今日はまず文楽を



この胸元、たまらない。


我々が行ったのは
9月10日(月)の第一部。

伝統芸能を愛するワタシには
それぞれヒーローがおりまして。

歌舞伎のヒーローは助六、
落語のヒーローは佐平次(居残り佐平次)、
そして文楽のヒーローは団七なのでございます!


よって。
今回のお目当ては
この団七が主役の「夏祭浪花鑑」。

いえーい!


数年前に一度上演されているので鑑賞は二度目。
歌舞伎でも人気の演目ではあるけれど、
やはり上方を舞台とする「夏祭浪花鑑」は
上方発祥の文楽で演じるほうがはるかに雰囲気がでる。

どういうわけか
今回は席が前から二列目のセンター。
ほとんどかぶりつき・・・。

「両脇の字幕が見えないよ!」

と戸惑ったのは最初だけで。
舞台がすすむにつれ、そんなことはどうでもよくなっていた。
いんや、見えなくったって全然平気だった。
なぜなら、とにかく熱い舞台だったから。
あの「気」を感じればそんなのは要らなかったよ。

今回の「夏祭」は間違いなく大当たりの舞台だったと思う!

演者の気迫と技量のバランスがすばらしく
(熱いだけでもダメで、空周り風のヘンな舞台になるから難しい)、
観客を呑み込んで物語の世界にひきこんで
放さなくなってしまうそれだった。

実際みんな終わったあと
「ぷはーっ」って感じになっちゃったもの。
ワタシなんかも手にしてた扇子を握りつぶしそうになって、
途中で帯にしまったくらいだ。
演者の熱気ってうつるから。


「夏祭」は猛々しい若き侠客、団七九郎兵衛が、
夏祭りの晩に舅を殺す、親殺しの物語である。

もうね、団七がかっこよすぎだ!
衣装すべてがかっこよかった!
もちろん芸もすばらしかった!

ところで。
以前に見たのは勘十郎さんが団七を遣ったが、
今芝居では玉女さんだった。

本来ならば若頭のツインタワーとして
勘十郎さんと玉女さんが今の文楽界をリードしていく
ポジションにあるのだけど、
この数年はどうも勘十郎さんのほうが随分先に
いってしまっている感が否めず、
例えばふたりが舞台に立っていても、
目が勘十郎さんのほうにばかりいくのは止められなかった。
しかし。

感激。
今回の玉女さんの団七のすばらしいこと。

大らかで、華があり、そして少し不器用な団七は
じつに魅力だったし、動きもよく決まっていた。
後半の韋駄天走りなんて躍動感にあふれていてぞくぞくだった。

やはり勘十郎さんと拮抗しまくる舞台のほうが
見る側はどれほど楽しいか。
山場の団七(玉女)と舅の義平次(勘十郎)との絡みなんかは
まさに息をもつかせぬ芸のせめぎ合いだ。
勘十郎さんもイヤーーな義父のイヤらしさを存分に出していて、
お互いが芸の領域で楽しんでいるのがまた快感だった。


そう、そして衣装。

団七の衣装は3種類あったのだけど、
どれもこれもイカしてるのだ。

ざっくりと大柄な浴衣を着崩して、
袖口やからげた裾からは雲流の刺青で
あざやかに彩られた腕と脚がにょきっと出ており、
さらに赤いふんどしのかっこよさといったら・・・!

ああ、姐さんに見せたい、とすぐに思った。








有名な「団七格子」などあんなに
洗練されたものだったかと改めて見入る。

ネイビー×白のふとーい縞の浴衣も
すごーくすきだったなあ。


で、簑助師匠。

師匠は怪物でした。
ひとりだけ異次元だった。

出から空間を支配していた。

浅葱色の傘をさして下手から現れるのだけど、
その形のすばらしさ。
本当にこの方は何なんだろう?と思った。


簔助師匠は「色気のありすぎる」侠気な人妻の役を遣った。

旦那の親友に

「かくまってほしい男がいるのだが、あなたは色気がありすぎるから、
 何かあったらあなたの亭主に申し訳ない」

といわれるほどの人妻である。

そしたら

「預けてくれなければ、私の顔も亭主の顔も立たない。
 私に色気がありすぎるというのなら・・・」

と火鉢に刺さっていた焼き箸を抜き取り、
その美しい顔に当てて、焼き痕をつけるほどの人妻である。

くねくねしたり、しなを作ったりしていないのに、色気全開の女。
ちょっとした首のしぐさとか目線、間で現出させていく。

黒っぽい夏絣の地味な拵えに、
ブルーの玉かんざしが美しいお辰。

酔いしれた。


そしてそして。
仲入りで楽屋お見舞にうかがった!!



これから遣うお辰を目の前で。

ちなみに簑助師匠のこの楽屋着は
比佐子さんからの贈りもの。
師匠はこれを着ているところを見せたくって
比佐子さんを楽屋に呼ばれたそうだ。

いつものように簑助師匠はかわいらしくて、
ほんわかした空気でいっぱいだった。




全員で。




9月上旬なので、3人ともまだ夏の素材。
高橋さんは縞の紋紗というような凝った織りのきものに、
紗のトンボ柄の帯。
比佐子さんは夏白鷹お召に、金糸銀糸で月と雲を
刺繍した麻の帯。
ワタシは大小あられの絽のきものに、桔梗の絽綴れ。

共通点は透けない素材のきものであることと、
秋のモティーフを取り入れているところ、かな。


そんなこんなで
大当たり&大感激の9月文楽東京公演でありました。


さいごに。

あさって9月22日(土)は「比佐子つれづれ」です。

「比佐子つれづれ」13:30~16:00

 会場:秋櫻舎
 会費:3150円

一か月って早いですね(笑)

皆さまのお越しをお待ちしておりまーす。







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