金沢発 あれやこれや

-ヒントをくれる存在に感謝しつつ物語をすすめます-

混乱の増すグリーン調達事情8

2011-08-07 12:16:52 | グリーン調達
<調達時と完成時の成分は別もの>

資材部・調達部門は製品に使う部資材の世の中の法律との適合
性に加え自主規制も含めた確認目的の他に、取扱い作業者のた
めに労働安全衛生法、毒劇物取締り法律、MSDS制度の遵守
および遂行のために譲渡または提供される化学物質の諸情報を
収集します。

製品含有物質調査業務は完成した製品が調査対象ですので、
グリーン調達と製品含有物質調査は時間軸が異なります。

もうひとつ大きな差は管轄部門が異なる事です。
部資材が譲渡または提供される時点の管理責任部門は資材部門
ですが、完成製品の品質責任はほとんどの会社で品質管理部門
にあります。
そのため、得意先から製品含有物質調査を求められた担当者が
資材部を通して完成品を構成する”パーツ”成分を調べようと
依頼すると、資材部に その種の情報は品質管理部の管轄で
うちではない と言われ断られる可能性が高いです。

さてここで質問です。 
あなたの会社は資材部が資材調達時に得た成分データで
得意先に提出する製品含有物質調査回答をしてませんか?

別の言い方をすると、

得意先に提出する製品成分表は本当に完成品の成分ですか?
部資材調達時のグリーン度調査で得たデータを無理やり並べた
真実とは遠い内容ではありませんか?

もしそうなってたら見直しが必要かもしれません。

具体的な例を引用して違いを説明してみます。

調達時の情報で製品成分表を作成していた場合、その中身は
ちょうど料理本のレシピのようになってるはずです。

お好み焼きで例えると、水分は調理中に蒸発してしまう分も含
めた量になってたり、完成したお好み焼きに見られるコゲ成分
を示す成分がどこにも無い という状態。

加工前後でがらり変わりやすい工程をピックアップすると、

(1)めっき
 めっき主成分だけ載せてめっき液よりめっき層に残留する
 成分を省略してませんか
(2)接着剤
 反応前の接着剤成分を載せたままではありませんか
(3)はんだ
 加工前の状態ではありませんか

品質管理部門の責任範囲からいって、その7で紹介した
「パーツ」成分情報をベンダー各社に調査手配し収集管理でき
ている事が望まれますが、世間全般的にその取組みはまだまだ
緒に就いたばかりという感じです。
品質管理部門が「パーツ」状態時の組成をグリーン調達で得た
データを元にこれまでの経験から想像できる訳もなく、まず
設計部門に丸ごと振るでしょうが、設計部門も同様に想像など
できません。かといって全成分の分析を試みようとしたら軽く
100万円はかかり、事実上その選択は無理です。
JAMPは化学物質は情報伝達した末端でパーツになった時点
の組成を想像して変換すればいいと言いますが、細かい数値を
川上から延々とやりとりした末が現場設計者の想像まかせとは
ふざけてます。同じ技術者として本当に真剣に考えた結果とは
到底思えず、苦しいつじつま合わせに映ります。
「パーツ」の成分は保証までは求めない前提でその化学物質ベ
ンダーにもう一度尋ねるしかないと考えます。
グリーン調達時に「パーツ」まで加工した時の成分で作成した
AISをついでに手配しておくのもいいでしょう。

製品含有物質管理という新しい要素の仕事があまり理解されな
いまま、資材部門と品質管理部門が機能分担完了することを待
たないままどんどん先に進んだため体制が追い使かず、
例えば、はんだは加工前成分で規制法抵触判断し、加工前成分
を製品成分表にも載せています。これは加工後にパーツとなっ
た状態を分析して調べる事そのものが部資材価格に見合う低価
格で分析することが技術的に不可能でとても割りにあわない事
実が手伝ってます。これははんだの他に接着剤やめっき膜にも
言えることです。

納入先から分析要求され負担する費用はとても高額なのでどの
あたりまで調べたらよしとするのか、今の技術と相談して無理
のないところで線を引くことと、パーツとなった状態の成分を
伝達するしくみの整備が必要です。
資材部門はルーチン作業主体で部資材の種類によってどんな
分析が最適かなんていちいち担当者が考えず、要領中に分析
必須とあれば対象がなんであろうと分析要求してくる傾向が
ありますのでこれを急いでしてほしいものです。
部資材メーカーは分析費用負担で利益が削られてしまい経営者
は事業継続、社員は給料下げ要因でやる気が下がっておりサプ
ライチェーンの川中部分がやせ細るばかりです。


感のするどい方はピンときたと思いますが、資材部がグリーン
調達時にがんばって手配した分析データは完成品分析データ
としては使えないものがでてきます。
そのあたり次回以降説明します。
コメント
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