光市の母子殺害、検察再び「極刑」主張…差し戻し控訴審
山口県光市で1999年に起きた母子殺人事件で、殺人や強姦(ごうかん)致死などの罪に問われた当時18歳の元会社員(26)に対する差し戻し控訴審の初公判が24日、広島高裁(楢崎康英裁判長)であった。
最高裁は2審・広島高裁の無期懲役を量刑不当として破棄しており、死刑が適用できる「18歳」を1か月超えた被告への死刑選択の是非が焦点になる。検察側は改めて「極刑をもって臨む以外に選択の余地はない」と主張。弁護側は、元会社員に殺意はなく、犯行は傷害致死罪にとどまると主張し、更生の可能性を訴えた。
少年法は18歳未満の少年に対する死刑を禁じている。
公判で、検察側は死刑適用の判断について、「年齢や反省などに重きを置く判断方法は、国民の法感情に反する」と指摘。「犯罪行為の悪質性や重大性を重視すべきで、更生の可能性を検討する必要性は全くない」とした。また、しゅん烈な遺族感情や社会への影響にも触れ、死刑の相当性を訴えた。
これに対し、弁護側は「著しい精神的な未発達がもたらした偶発的な事件」と主張。強姦目的や殺意を否定し、「傷害致死罪にとどまる」と述べ、犯行時の精神年齢を12歳程度だったとした独自の鑑定結果を示して、更生は可能と指摘し、「一生かけて償うチャンスを与えられるべき」とした。
元会社員は半袖シャツにズボン姿で出廷。裁判長の人定質問には、か細い声で答えた。退廷する際には、傍聴席に向かって深く一礼したが、妻と長女の遺影を両手で抱えた遺族の本村洋さん(31)と視線を合わすことはなかった。
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閉廷後、本村さんは広島市内で記者会見。2審判決以来、約5年ぶりに法廷で見た元会社員の印象を、「表情や態度は事件当時とあまり変わらない。反省しているようには見えない」と述べた。弁護側の主張については、「真実かどうか私が言うことではないが、にわかに信じがたい。(元会社員は)真実を語り、心から妻と娘に謝罪して、この国の最高刑をもって罪をつぐなってもらいたい」とした。
(2007年5月24日23時18分 読売新聞)
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被告は「最高刑」で償って=「家族3人で見届けたい」-遺族の本村さん・広島
(時事通信社 - 05月24日 21:10)
「人を殺(あや)めた罪を、生きて償うとはどうすることなのか、分からない」-。山口県光市の母子殺害事件の遺族、本村洋さん(31)は差し戻し控訴審が始まった24日、広島市内で記者会見した。「この国の最高刑で被告は償ってもらいたい。その最高刑が、わたしの考えている命をもって償うということと合致している」と述べ、これまで通り極刑を求める考えを強調した。
亡くなった2人の遺影を胸に公判に臨んだが、ためらいもあったという。「(弁護団に)とんでもないことを主張されるだろうと思っていた。聞かせたくないという気持ちもあったが、家族3人で最後まで見届けたいと思った」と振り返った。
弁護団は被告の犯行を「仮想現実に逃げ込んだままごと遊び」と表現した。本村さんは「法廷を混乱させようと奇々怪々なことを言っている」と批判。「被告を救うことは手段で、目的は死刑制度の廃止を訴えること。遺族だけでなく、被告さえ利用している」と厳しい表情で語った。
被告から封筒張りの作業償与金や手紙が郵送されるようになった。本村さんは「弁護士に言われて書いていると思うが、刑が確定した後も手紙を書き続けるなら真の反省であり、私も受け入れなければならない」とした。しかし、被告側が事実関係を争う姿勢を示していることに触れ、「(現状では)受け入れることは到底できない。(今まで来た手紙も)開封していない」と述べた。 [時事通信社]
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