弁護士108人はオウム死刑執行をどう見た?76人が「妥当」と回答
2018年7月29日 6時50分 デイリー新潮
7月6日に行われた麻原彰晃(本名・松本智津夫)を含む7名と26日に行われた6名のオウム真理教元幹部の死刑執行によって、死刑制度の是非を問う議論は改めて熱を帯びてきている。上川陽子法相に“英断”の声が上がれば、人権団体はこれを非難。法律のプロたちはどう見たのか。
法律にまつわるポータルサイト「弁護士ドットコム」は、最初の7名の死刑が執行された6日から14日にわたり、弁護士108名にアンケートを行った。回答は匿名だが、匿名ゆえに “ホンネ”もちらほらと……。その一部をご紹介しよう(誤字脱字は修正のうえ掲載)。
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最初に設けられた問いはズバリ、〈麻原彰晃はじめオウム真理教幹部の死刑執行について、どのようにお考えですか?〉というもの。妥当か否か、用意された選択肢に微妙な差異はあるものの、半数以上となる76名が「妥当」と答えている。【表1】
〈全員分の捜査が済み、えん罪の有無についても十分に争われたといえるから〉
〈彼らの犯罪はやむにやまれぬものでもなければ、理解不能な目的でもない(中略)これで執行されなければ自分たちに都合の良い社会を作るために、他人の命を賭け金にする組織・個人が増える〉
などが併せての回答だが、一方で「麻原彰晃元死刑囚と幹部とで“差”をつけるべき」という回答もあるのに注目したい。
〈組織のトップであった麻原と幹部は責任の重さが異なる。例えば、井上嘉浩は第2審は無期懲役になった者であり、死刑か無期かは際どい者だった〉※正しくは1審で無期懲役
〈麻原以外は、麻原にコントロールされていたもので、コントロールから抜ければ、普通の人(中略)麻原の執行後、コントロールから抜けてからで良かったのではないか〉
【表1】「麻原彰晃はじめオウム真理教幹部の死刑執行について」
〈死刑執行を政治利用〉
もちろん、今回の執行に反対、または死刑制度そのものを問う意見もある。
〈宗教団体の教祖という特殊性から、殉教者が出たり、過度の神格化により後継団体の宗教活動が活発化・過激化するなど、死刑執行に伴う弊害が生じる可能性があると考えているため〉
〈死刑執行を政治利用していると考えられる〉
そして、
〈いまだ解明されていない事実も多い。神格化されたままの死刑は、信者の信仰心を強めてしまう〉
上が【表2】「オウム真理教が起こしたとされる一連の事件について」、下が【表3】「“解明された”と答えた弁護士が多いが、『すべて』ではない、と答えた内容について」
こうした“死刑によって事件の解明機会が失われる”という意見は、今回に限らず、死刑反対の立場からいわれる根拠のひとつだ。
それについての問いが【表2】である。“解明された”と答えた弁護士が多いが、「すべて」ではない、と答えた内容が【表3】。事件の再発を危惧する観点からは、以下の回答があった。
〈最も解明できていないことは、既存の仏教などの宗教が、麻原以外の若者たちの不満などの受け皿になれなかった理由は何かということである。この点が解明できていないので、有効且つ適切な再発防止策を講ずることは事実上不可能(中略)既存の宗教界の指導者を自認する人たちに、受け皿になれなかった理由を聞きたい〉
〈何万人もの信者がオウム真理教とその教祖「麻原彰晃」に帰依し、その一部が暴走して大量殺人をはじめとする違法行為もいとわない犯罪者集団と化したのは、どういう心理的メカニズムによるものか(中略)全く解明されていないと思います〉
13人同時でも…
最後に、自由記述として設けられた欄から、いくつか紹介して本稿を終えたい。
〈死刑制度反対論の真剣さが試される〉
〈世界の歴史を見てもインパクトの大きいテロ事件がこれで一つの節目を迎えることは、国家の正義が果たされる瞬間だと思い、高く評価したい〉
〈ワールドカップや台風など世間の関心が別のことに向きがちなときに執行するのはあまり良くなかったと思うが、根本的にはいずれすべきことであったわけなのでむしろ遅すぎたほどと思う〉
〈一連の事件では弁護士一家が襲われ殺害されている事件もあり、きちんと法の裁きを受けてもらいたいとの思いはより強くあったように思います〉
〈なぜ7人同時だったのか(どうせ同時に行うなら13人同時で良かったのではないか)は疑問〉
〈現職総理大臣の不信任案提出が取り沙汰されているなかでの執行であり、素直に言って、政権浮揚、政権批判封じの思惑を強く感じます(中略)マスコミは執行を事前に知っていたという話もありますが、死刑囚の家族には知らせたのでしょうか?〉
オウム事件、そして死刑制度を考える上で、ひとつの参考となる見解である。
週刊新潮WEB取材班 2018年7月29日 掲載 デイリー新潮
◎上記事は[livedoor NEWS]からの転載・引用です
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