天下り団体が独占受注 原発立地の電気料金割引業務
中日新聞2011年9月7日 08時50分
原発が立地する地域への電気料金の割引事業をめぐり、経済産業省OBが4代続けて理事長を務める財団法人が、割引分の現金を各世帯などに給付する業務を事実上、独占的に受注していることが分かった。経産省などが通達や給付金の運用規則で財団に半ばお墨付きを与えていた。地域振興を名目に国から交付された原発マネーが、特定の天下り団体に流れ込んでいる。
この財団法人は電源地域振興センター(東京都)。自治体から業務を受注した後、実際の業務は電力会社に丸投げし、2010年度には、計約3800万円(決算額)を得ていた。
割引制度は、国が地方自治体に給付金を交付した後、自治体がセンターに補助金として支出する。10年度は、北海道や福井、静岡、滋賀など原発が立地したり隣接する15道県に計約210億円が交付され、センターが住民への支払い業務のすべてを受注。給付金の計算や住民らへの現金振り込みなどの実務は、電力会社が行っていた。
経産省などは04年に定めた運用規則で、給付業務の主体を原発設置の円滑化に資する事業を行う公益法人などに限定。それ以前も、センター設立直後の1990年から、原則としてセンターを活用するよう各自治体に通達を出していた。通達は2005年に廃止されたが、同様の業務を行う公益法人は他になく、事実上の独占が続いている。
経産省資源エネルギー庁電源地域整備室は「今はどの団体を選ぶかは各自治体の裁量に任せている」と説明する。しかし、原発立地県の担当者からは「慣例としてお願いせざるをえない」との声が出ている。
センター理事長で、元中小企業庁長官の新(あたらし)欣樹(きんじゅ)氏は「電力会社がちゃんとやっているかどうかをみたりしている。(業務の)丸投げじゃない」と説明している。
■電気料金の割引制度 正式名称は「原子力立地給付金交付事業」で、地域振興を名目に自治体に対して行う立地対策の一つ。国が原発の設備能力などに応じて、周辺地域の住民や企業に給付金を支払い、電気料金の一部を肩代わりする。2010年度は105万世帯の家庭と企業が割引対象となった。東京電力柏崎刈羽原発が立地する新潟県では、原発周辺の住民に年間約9500~1万9000円が給付される。
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◆国が原発周辺住民に電気料金を一部肩代わりする「電源地域振興センター」 職員の半数、電力会社から出向2011-09-08 | 地震/原発
職員の半数、電力会社から出向 原発立地振興の財団法人
中日新聞2011年9月8日 09時02分
原発が立地する周辺地域に電気代の一部を給付する業務を財団法人「電源地域振興センター」(東京都)が独占してきた問題で、同センターの職員の約半数は、電力会社からの出向者で占められていることが分かった。出向者の給与も電力各社が負担していた。公益法人でありながら、電力業界寄りともいえるセンターの体質が浮かび上がった。
電源地域振興センターは、本紙の取材に対し、37人の職員(2011年3月現在)のうち、18人が東京電力や中部電力など電力会社11社からの出向者ということを明らかにした。
直接雇用されているのは全職員の半分以下の16人で、残る3人は立地自治体からの出向者。センターは「どこの自治体から出向しているかは答えられない」と話した。
3人いる常勤役員のうち一人は、関西電力からの出向者で、報酬は同社が負担。他の2人はともに経済産業省OBで、理事長は元中小企業庁長官の新(あたらし)欣樹(きんじゅ)氏、理事は元中部経済産業局電力・ガス事業北陸支局長の笠原彰氏。年間報酬の規定上限は、理事長が1900万円、理事が1550万円となっている。
人件費のほか、電力各社はセンターに年会費も納めている。東芝や日立など原子炉メーカーなども支払っており、年会費の合計は1億1478万円(10年度)とセンターの重要な収入源になっている。
本紙の取材に、東電は「出向目的は立地対策や地域振興のノウハウを得るためで、給与の契約はコメントできない」と話している。
職員も収入も電力会社頼みの状況にセンターは「人件費をかけない分、立地自治体に提供するサービスを充実できる。電力業界寄りの仕事は一切していない」と強調している。
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