鳩山政権誕生へ=民主党政権と自民党政権との違いを深く意識し続けることが出発点

2009-09-16 | 政治
朝日新聞 社説 2009/09/16
鳩山政権誕生へ―歴史的使命を自覚せよ 民主党の鳩山内閣が船出する。
 総選挙での圧勝から2週間余り。党幹事長に小沢一郎氏をあてて党務を任せ、内閣には菅直人副総理・国家戦略局担当相や岡田克也外相らの実力者、政策通を並べる陣容が固まった。
 持てる人材を総動員したところに、この歴史的な政権交代を何としても成功させなければという鳩山由紀夫氏の意気込みがはっきりと感じられる。
 社民党からは福島瑞穂党首が消費者・少子化担当相として入る。国民新党の亀井静香代表は金融・郵政問題担当相に就く。
■惰性や癒着の大掃除を
 この政権の歴史的な使命とは何か。半世紀にわたって自民党が政権をほぼ独占してきた間に、澱(おり)のようにたまった制度疲労や行政の惰性、腐敗や癒着を大掃除すること。そして社会や暮らしの変化に対応した新しい仕組み、透明感のある政治を作り出すことだ。
 政権交代を望んだ有権者の圧倒的な期待がそこにあるのは明白である。なのに本紙の最近の世論調査では、民主党政権が日本の政治を「大きく変えることはできない」と見る人が46%もいる。政権交代で政治が「良い方向に向かう」と見る人は25%に過ぎない。
 この落差を、鳩山新首相と民主党は真剣に考える必要がある。
 自民党が政権党から滑り落ちた大きな理由の一つは、政官業の「鉄の三角形」と呼ばれた利益誘導、利権の政治構造と、それが生み出す税金の巨大な無駄遣いへの批判だった。
 長年の慣行の積み重ねのなかで、省ごと局ごとの予算シェアは固定化し、官製談合、随意契約、官僚天下りの根が深く張り巡らされていった。少子高齢化が象徴するように社会経済構造が劇的に変化しているのに、政策の優先順位の判断、つまり予算配分を大きく変えることができなかった。
■優先順位の判断力磨け
 民主党が本当にこのぶ厚い岩盤を突き崩すことができるのか、穴をうがつことができるのか、国民は疑問に感じているということなのだ。
 心配のタネはすでにいくつも見える。郵便局長会、農協、医師会……。総選挙の指揮をとった小沢氏は、自民党と長く蜜月関係にあった組織を次々と民主党に引き寄せてきた。
 その結果が大勝につながったのは確かだ。だが、郵政民営化の見直しにしても、では見直しの先にどんな郵政事業の未来図を描こうとしているのか。肝心のそこに答えはまだない。拙速は避けて日本経済の大きな視野からそれを示すのが亀井担当相の責任だ。
 貿易・投資の自由化の推進が民主党の主張だ。そのために日米自由貿易協定(FTA)を「締結する」と公約にうたったはずだった。だが、農協などの猛反発に遭うと「交渉を促進する」とあっさりトーンダウンした。
 結局のところ、自民党に代わって、今度は民主党が「業」や「官」となれ合うことになってしまっては、政権交代の意味は大きく損なわれる。
 野党時代であれば、「政官業の癒着を断つ」といったスローガンを唱えていれば安全地帯に身を置くことができた。だが、政権党となれば、それでは済まされない。
 業界や団体、経済界の主張にはもちろん、耳を傾けるべきものはある。大事なことは、その妥当性や公平性、効率を見極め、政策の優先順位を厳しく吟味することなのだ。
 業界益に引きずられるようなら、自民党政権時代と大差あるまい。かといって、道理のある主張をやみくもに退けるだけでは、国民益に反する。
 実情に通じた判断力と広い視野、国民に痛みも伴う政策を納得させるだけの論理性が求められる。政権党として現実に癒着を断つことの難しさ、厳しさを新政権はかみしめてもらいたい。
■「民」との新たな回路を
 国民の政治へのニーズや利害は多様化している。産業界や労働界にしても、かつてのような一枚岩の時代は去った。幅広い民意をどうくみ上げ、受け止めていくかも、自民党にはできなかった新政権の課題だ。
 参加型の民主主義を広げるために、NPOや民間シンクタンクから意見を吸い上げる回路を開きたい。業界や財界といった自民党の伝統的な顧客に背を向ける必要はないが、新しい顧客にウイングを広げることで、優先順位の判断はより説得力と妥当性を増す。
 政権が順調に滑り出せるかどうかは、「官」との間にどんな関係を築けるかにもかかっている。
 新設の行政刷新会議と国家戦略局だけでなく、各省でも大臣と副大臣、政務官の政治家チームが大きな政策判断を仕切るという「脱・官僚依存」の方向性は正しい。民間の人材登用や政治任用の拡大も必要だろう。
 そのうえで大事にせねばならないのは、「官」が持つ専門知識と経験、情報だ。国益を担っているのだという官僚たちの気概と献身は、政権交代を実りあるものにするために欠かせない資産である。変化と継続の巧みな間合いが問われる外交分野でもそうだ。
 政権党の特権、おごりは厳しく戒めなければならない。利害関係者に便宜を図ったり、官僚にむやみに圧力をかけたりといった逸脱は許されない。
 民主党政権と自民党政権との違いは何か。それを深く意識し続けることがすべての出発点である。
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銀行への元本返済猶予制度、亀井氏が導入検討
asahi.com2009年9月15日22時54分
 鳩山新政権で金融・郵政問題担当相に内定した国民新党の亀井静香代表は15日、党本部で記者会見し、業績の悪化した中小企業や個人に対し、銀行からの借金の元本返済を猶予する「支払猶予制度」(モラトリアム)を導入する考えを明らかにした。日本郵政の西川善文社長に自発的な辞任を求める考えも示した。
 支払猶予制度は、金融機関に対し中小企業向け貸し出しや個人向け住宅ローンの返済猶予を促す仕組み。法律上の強制力はないが、金利分を支払えば、元本返済を3年程度猶予することを想定している。中小企業や個人の資金繰りを助ける狙い。亀井氏は会見で「可及的速やかに実施したい」と語った。
 民主、社民、国民新3党による連立政権の政策合意には「貸し渋り・貸しはがし防止法」(仮称)を成立させ、貸し付け条件の変更や返済期限の延長を金融機関に促す方針を盛り込んでいる。「防止法案」のなかに、支払い猶予の仕組みを位置づける方向だ。
 同制度が実現すると、民間の融資契約に国が「後出し」で借り手側に有利な契約変更を迫る異例の措置となる。住宅ローンの借り手らにはメリットがあるが、金融機関側にとっては元本の返済猶予を安易に認めると、収益が悪化するおそれもある。「制度の作り方によっては、経営への影響は大きい」(大手行幹部)と警戒感が広がっている。
 一方、亀井氏は会見で西川氏の進退問題について「生首を切るようなことはしたくない。この際身を引き、新しい経営者に委ねると、ご自身がそう判断された方がいい」と発言。「(郵政民営化の)見直しが既定事実になっているので、社長を続けるのは不可能だろう」と述べた。
 民主党の鳩山代表も新政権発足後、西川社長を解任する意向を改めて示している。
 4分社化を採用している日本郵政グループの形態については、「一つの体をずたずたに切った。そういう体が機能するはずがない」と述べた。新政権発足後、組織の見直し作業を本格化させる方針だ。

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