光市事件「床への叩きつけ行為の不存在, 両手による扼頚の不存在」 最高裁弁論要旨【1】より

2007-06-04 | 光市母子殺害事件

最高裁弁論要旨より

2 事案の真相その2・・・MUちゃんについて
 (1)床への叩きつけ行為の不存在
  次に、MUちゃんについて、検察官は、被告人が泣きやまないUちゃんに激昂して、同児の殺害を決意し、同女を頭の上の高さに持ち上げ、その後頭部から居間の床に思い切り叩き付けたと主張する。
 しかし、もしそうであるとすると、Uちゃんの後頭部には打撲傷、皮下出血、硬膜上下腔血腫ないしクモ膜下出血、ひいては頭蓋骨骨折、頚椎損傷等の重大な損傷がなければならない。しかし、これに該当する損傷はまったく存在しないのである(資料26)。
 Uちゃんの頭部にある損傷は、わずかに左側頭部にある3ヶ所の皮下出血だけである。確かに左側頸部の後部にある皮下出血は、直径5cmと大きいが、その部位及び程度からして上記の「叩きつけ」によって生じたものでないことは明らかである。
 ちなみに、この点について、被告人は、逮捕の当日である4月18日には、
 「紐で赤ちゃんの首を絞め、結んだんです。(乙1号証)
としか供述しておらず、「叩きつけ」をしたことは全く供述していなかったのである。ところが、ここでも、検察官による事実のねつ造が行われており、その6日後である4月24日の検察官の取調べでは、被告人は、
 「僕はあまりにも激しく泣くばかりで全く泣きやまないUちゃんに対してものすごくイライラし、腹が立ってしかたなくなりました。それで、僕は、押入れの上の段からUちゃんを出すと、(泣きやますために)そのままコタツの脇のカーペットの上にUちゃんを叩きつけました。」(乙17号証)
とやってもいないことを言わされ、さらに、5月5日の取調べでは、
 「僕は腹が立つ余り、『こんなやつはぶっ殺してやる』と思い、(略)両手でUちゃんの脇の下を持って抱き上げ、そのままコタツの脇のカーペットの上にUちゃんを後頭部から仰向けに思い切り叩き付けました。」(乙25号証)
と殺人目的で「叩きつけた」と言わされ、その結果、被告人の行為は、
 「戦慄を覚えさせる非道なもの」
とされたのであり、つまるところ、検察官は、Uちゃんに対する「床に叩きつける」という殺害行為をねつ造したのである。
 ところで、被告人は、逮捕後2週間経過した5月2日、警察官に指示されて光警察署の武道館でダミーの人形を使用して犯行を再現させられている。しかし、その場面で、被告人は、
 「被害児の脇の下を持ち、床に左膝を着き、中腰の格好で被害児を背中から床に叩きつけた」(甲214号の実況見分調書。資料27、28)
と犯行を再現している。しかし、これは、検察官が被告人に言わせた前述の「頭上から床に後頭部を思い切り叩きつけた」とも完全に矛盾している。このことは、警察、検察それぞれが思い思いに事実をねつ造していたことを物語っているのである。
 (2)両手による扼頚の不存在
 さらに、検察官は、
 「被告人の意に反して同児が絶命せず、かえって激しく泣き出したため、同児の首を締め付けて殺害しようと考え、両手で同児の頸部をつかむようにして絞め付けた」
と主張する。しかし、もしそうであるとすると、被害児の頸部には扼頚の痕跡がなければならない。しかし、そのようなものは全く存在しないのである(資料29、30)。被害児の頸部に存在するのは紐による絞頸だけであって扼頚は存在しないのである。もちろん、被告人も前述のとおり、逮捕当日は扼頚をしたなどとは全く供述していなかった。しかし、これにあっても、逮捕後6日目の4月24日に検察官の取調べで、突如として、
 「僕は、Uちゃんを黙らせるには殺すしかないと思いました。そして、Uちゃんを殺すためにUちゃんの首を両手で絞めたのですが、(略)うまくUちゃんの首を絞めることができませんでした。」(乙17号証)
と新たな殺害行為を言わされたのである。


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