死刑判決の破棄 裁判員制度の趣旨揺らぐ

2013-10-17 | 裁判員裁判/被害者参加/強制起訴

【主張】死刑判決の破棄 裁判員制度の趣旨揺らぐ
 産経ニュース2013.10.16 03:14
 裁判員制度は、国民の司法参加により、その日常感覚や常識を判決に反映させることなどを目的に導入された。
 そこには、従来の判決と国民の常識との間に乖離(かいり)があるとの反省がこめられていたはずだ。
 今月、東京高裁は、千葉地裁の裁判員裁判で死刑とされた被告の控訴審で、1審判決を破棄し、無期懲役を言い渡した。
 殺人の被害者が1人で、先例と比べて「死刑の選択がやむをえないとはいえない」という判断だった。今年6月にも東京高裁の同じ裁判長が、同様の死刑破棄判決を出した。「先例重視」の傾向が過剰になれば、裁判員制度の意義は失われるのではないか。
 今回の被告は平成21年、千葉県松戸市で、千葉大4年の女子大学生を殺害し、強盗殺人罪などに問われた。1審判決は、被告が14年に強盗致傷事件で服役し、出所から3カ月足らずで強盗致傷や強盗強姦(ごうかん)事件を繰り返したことなどを重視し、死刑を選択した。
 東京高裁は「殺害された被害者が1人で、計画性がない場合には死刑は選択されないという先例の傾向がある」と指摘し、1審判決を「合理的かつ説得力を示したものとはいえない」と判断した。
 背景には昨年7月、最高裁司法研修所が公表した研究報告があるとされる。報告書は、過去30年間の裁判官裁判による死刑・無期懲役が確定した殺人・強盗殺人事件を調査し、被害者の人数別に先例の傾向を分析した。国際的には死刑廃止の動きが広がっていることも紹介した。
 東京高裁が裁判員裁判の判断を覆した2件の死刑破棄判決は、報告書の内容を踏まえて先例重視の判断を示したものとみられる。
 だが先例の公式に当てはめるだけなら、裁判員の苦渋の判断は必要としない。
 裁判員裁判は6人の裁判員と3人の裁判官が合議し、多数決で量刑などを決める。最低1人の裁判官の賛成も必要とする。合議の過程で、先例についての説明も十分になされたはずだ。そのうえで下された極めて重い判断である。
 三審制の意義は否定しない。下級審に誤りがあれば、躊躇(ちゅうちょ)なく判決を覆すべきだ。だが、その理由が先例重視というのはどうなのか。先例に問題があったからこそ導入された制度でもあったはずだ。その趣旨が揺らいでいる。
 *上記事の著作権は[産経新聞]に帰属します
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