国内の自動車メーカーが海外生産の拡大にアクセルを踏んでいる

2010-06-21 | 社会

海外に逃げる自動車の生産
日本経済新聞 社説2010/6/21
 国内の自動車メーカーが海外生産の拡大にアクセルを踏んでいる。トヨタ自動車が2008年のリーマン・ショックで凍結していたブラジル、中国での工場建設を再開するほか、スズキやホンダもインド、中国での生産能力を大幅に増やす。
 投資先は経済成長の勢いを反映し、ほとんどが新興国だ。そうした国々では欧米や現地のメーカーとの競争が激しくなっている。市場の近くに拠点を広げ、生産コストや為替変動の影響を小さくしていくのは合理的な判断といえる。
 ただ、日本国内への影響は小さくない。例えばトヨタ自動車は海外生産の拡大と並行し、年間で390万台程度ある国内の生産能力を約1割減らしていく。
 日産は今年、タイ、インド、メキシコで小型車「マーチ」の生産を始める。日本での生産はやめ、国内で売るマーチもタイから輸入する。神奈川県にある工場は電気自動車の生産拠点に位置づけていくが、当初から海外移転で生じた穴を埋めるだけの台数は期待しにくいという。
 自動車大手は過去にも円高に振れると海外生産を増やし、円安だと国内に戻すなど揺れてきた。だが、今回はそれだけではないようだ。
 高い法人税率、労働者派遣法見直しの動き、二酸化炭素の25%削減。日本自動車工業会は、自動車メーカーが海外移転を進める背景にはこうした問題もあると指摘している。
 政府は新成長戦略に法人税率の引き下げを明記し、これまでの路線を修正する動きも出てきた。しかし経営者の間では「リスクを抱えたまま国内で生産能力を増やすのは難しい」との見方がなお根強い。
 生産の海外流出がこのまま続くと影響は大きい。日本企業が1年間に生産する自動車は約2000万台と世界全体の約3分の1を占める。そのうち半分を日本で造っており、かりに国内生産が1割減ればマツダとスズキの売上高を合わせた規模に匹敵する影響が出る。
 菅直人首相は先週末、日本経団連など経済3団体のトップと会談した。こうした政府と産業界の対話は今後も続けるべきだ。工場の流出に歯止めがかかるよう、互いの信頼関係を基に解決策を探る努力が要る。
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待遇改善課題に 中国進出企業に重く
【自動車産業ニュース】2010年6月19日
 トヨタ自動車グループの自動車部品メーカー、豊田合成(愛知県清須市)の中国・天津市にある生産拠点で起きた賃上げ要求ストライキは、トヨタ本体の現地工場の生産停止に影響が広がった。中国で散発する日系企業のストは今後も発生が予想され、安価な人件費などに頼ってきた進出企業は中国での「待遇改善」が経営課題になりつつある。
 関係者によると、豊田合成の現地生産拠点のストは17日から発生。天津市では15日にも同社の別工場でストがあったが、翌日には収束したためトヨタの天津工場への影響はなかった。豊田合成は週明けの操業再開に向け、19日も従業員側との交渉を続ける。トヨタの天津工場は19、20日はもともと休業日となっている。
 トヨタは中国に4拠点を持ち、2009年の生産実績は計約60万台。うち天津工場は約6割の38万台で、主力セダン「カローラ」やスポーツタイプ多目的車(SUV)「RAV4」などの人気車種を生産する主力工場の位置付けだ。
 トヨタは現時点で他の生産拠点については仕入れ先などのストの情報を把握していないが、「世界の工場」に成長した中国では製造業を中心に賃上げ要求が高まっているとみられ、進出企業にとっては予断を許さない状況が続いている。
 中国に進出しているほかのトヨタ系部品メーカーも「今のところストの予兆はないが、楽観視できない」として、情報収集を進めている。
 中部地方からの中国進出企業では、ブラザー工業(名古屋市)でも今月3日に賃上げ要求のストがあり、工業用ミシンの製造が操業日で5日間停止した。(小野谷公宏)


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