<少年と罪>第3部 塀の中へ再び[3] 「三度目」もあるのか 「5%の確立で、事件を起こすかもしれない」(中日新聞2017/8/19)

2017-08-20 | 少年 社会

<少年と罪>第3部  塀の中へ再び [3] 
2017/8/19 Sat 朝刊 変わるため、支え必要

    
  「西尾ストーカー殺人事件」の加害男性が30歳で起こした「通り魔傷害事件」の現場。若い女性に包丁を突き付けた=愛知県蒲郡市で

 六冊のノートは細かい文字でびっしりと埋め尽くされていた。被害者のイニシャルに続けて「幸せになるのは許さない」「殺したくてたまらない」-。
 愛知県西尾市で1999年、17歳の少年が起こした「ストーカー殺人事件」。逮捕後に押収された日記には、被害少女=当時(16)=への一方的な行為が、恨みと殺意へ変わっていく過程がつづられていた。
 捜査現場を指揮した元刑事(73)は42年の警察人生のほとんどを、事件解決のために費やしてきた。それでも「これほど異常な証拠を見たことは、後にも先にもなかった」。
 捜査の一環で、加害者を乗せて現場へ向かった車の後部座席。元刑事は隣に座った彼に、少女を狙った理由を尋ねた。得意げに「彼女が好き。彼女も僕が好きなはずだ」。社会に「ストーカー」という言葉が認知され始めた時代だった。
 ゆがんだ愛情に、別の思い込みが拍車をかけていた。取り調べでは、2年前に「神戸連続児童殺傷事件」を起こした犯人を「あそこまで悪いことができて、すごい。尊敬している」と語った。
 元刑事は、どんな犯人でも更生を願って、取り調べの最後に必ず励ましの言葉を掛けてきた。少年にも「まだ若いから真面目に物事を考えろ」と伝えたが、返事はない。普通なら捜査を終えると刑事としての達成感があるが、この時は「不安だけが残った。『また、やるかも』って」。思い込みは未成年者にありがちだが、その激しさが際立っており「変わること」は容易ではないと感じたからだ。
 13年後。服役を終えて30歳になった加害男性は、同県蒲郡市の路上で女性=当時(23)=に包丁を突き付けて倒し、けがを負わせる「通り魔傷害事件」を起こした。
 県警の別の元捜査員(63)はすぐに犯歴を調べ、少年時代の前科を知った。「心の中の残り火が再燃したと思った」
 車で偶然、通り掛かった男性が止めに入り、被害者は刺されなかった。だが刃物を握り、路上で若い女性を狙う手口は同じ。ストーカー殺人ではナイフを2本、用意したが、抵抗されて1本を奪われていた。その「教訓」なのか、今度は包丁を、利き手の左手にビニールひもで何重にも縛り付けていた。犯行予告と取れる日記も再び見つかった。
 だから、元捜査員は今も「彼には『最後までやる決意』があった」とみる。「一歩、間違えば命が危なかった。ストーカー殺人の時から、何も変わっていなかった」
 かつて日記に「マスコミで僕の殺人が報じられるところが見たい」と記した加害男性。通り魔事件の公判でも「大事件を起こして注目されたかった」と語った。
 それなら「三度目」もあるのか。検事に問われ、自信なさそうに答えた。
 「5%の確立で、事件を起こすかもしれない」
 通り魔事件でも有罪判決を受け、その刑期を既に終えた。自身が語った「5%」の可能性を現実化させないために、彼と対峙した2人の元刑事は「周りで強く支える人の存在が必要。絶対に」と口をそろえる。「彼が変わるには、それ以外にない」
 
 *上記事は中日新聞からの書き写し(=来栖) 
――――――――――――――――――――――――
<少年と罪>第3部 塀の中へ再び[2]「僕にとって刑務所の教育は、意味がなかった」(中日新聞2017/8/18)
...........


コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。