問われる歴代政権の姿勢=信頼回復が急務-密約
2010年3月9日(火)18:03
外務省の有識者委員会は、調査した日米四つの「密約」のうち、三つの存在を事実上認定した。これにより、「密約」を否定してきた歴代政権の姿勢が厳しく問われよう。同時に、真相解明に取り組んだ鳩山政権は、外交に対する信頼回復という責務を負ったと言える。
「うそを含む不正直な説明に終始した」。報告書は、核搭載艦船の寄港を事前協議の対象外とする暗黙の「密約」が存在しながら、事前協議の申し出がないことを理由にこれを否定し続けた歴代政権の対応を厳しく批判した。
確かに、国益がぶつかり合う外交交渉においては、内容をすべてつまびらかにできない事情もある。また、「密約」はすべて、東西冷戦下で交わされたもので、核の傘の下、米国の要求に応ぜざるを得なかった面もあろう。委員の一人は「やむを得ない苦渋の選択だった面もある」と指摘する。
ただ、こうした事情を勘案しても、国民に虚偽の説明をしてきた政権が、責任を免れるものではない。より問題なのは、1989年に冷戦が終わり、安全保障環境が一変した後も、「うそ」をつき続け、日本外交に対する国民の信頼を損ねたことだ。一連の調査を通じて、あるべき会議録が存在しないなど、「密約隠し」と受け取られても仕方がない外務省のずさんな対応も明らかになった。
今回「密約」に切り込めたのは、政権交代の産物であるのは間違いない。鳩山政権は、情報公開が民主主義の根幹であることを意識し、可能な限り外交に関する情報を国民に提供していくことが求められる。それが、信頼回復への一歩であることは言うまでもない。[時事通信社]
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非核と抑止力、どう両立=密約「清算」なお課題
2010年3月9日(火)18:03
軍事行動のフリーハンドを確保したい米国と、平和憲法や非核三原則との矛盾を最小限にとどめたい日本。核兵器持ち込みや沖縄返還をめぐる密約問題の本質は、日本が基地を提供し、米国に防衛を委ねるという同盟関係の中で生じた「ひずみ」だった。過去の密約はひとまず「清算」されたとはいえ、日本が「核の傘」を含む米国の抑止力に頼らざるを得ない状況に当面変わりはなく、「非核」と「抑止力維持」を両立できるかが課題だ。
「核兵器についての日本国民の特殊感情は分かるが、沖縄の核はいつでも使用し得る状態にあることに抑止的効果がある」。ジョンソン駐日米大使は1968年12月、愛知揆一外相との会談で、日本側が沖縄返還交渉で求めた「核抜き・本土並み」に難色を示した。
軍事面の制約を嫌う米側のこうした姿勢は、核搭載艦船の寄港に関する密約問題でも共通していた。鳩山内閣を揺るがす米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設問題にも、同じ構図が見て取れる。
日本は「核兵器を持たず、つくらず、持ち込ませず」とする非核三原則を掲げながらも、東西冷戦という外交・安全保障上の厳しい環境を踏まえ、核搭載艦船の寄港を事実上黙認。「持ち込ませず」との矛盾を覆い隠すため、国民に対しては「事前協議の申し入れがない以上、寄港はない」などと、「うそを含む不正直な説明」(有識者委員会)を続けてきた。
鳩山政権は今後も、非核三原則を堅持する方針だ。米国は冷戦終結後、艦船から核兵器を撤去しており、平時の「持ち込み」はほぼ想定されない。だが、北朝鮮の核・ミサイルや中国の軍事力拡大が懸念材料となる中、「将来の抑止力に空白を設けることは危険だ」(外務省筋)として、核の陸上配備は認めないが、核搭載船の一時的な寄港を認める「非核2・5原則」への転換を検討すべきだとの意見もある。[時事通信社]
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◆沖縄密約国賠訴訟
◆核機密 「肝心の書類がなく、誰が破棄したのかも問われていない。全容は今も闇の中だ」=西山太吉さん