吉田茂氏国葬 1967年閣議決定時 佐藤栄作首相、野党説得を指示 衆院副議長が秘密裏交渉

2022-09-04 | 政治

佐藤栄作首相、野党説得を指示 吉田茂氏国葬 1967年閣議決定時 衆院副議長が秘密裏交渉
 2022年9月4日(日曜日) 中日新聞

  
  1967年10月31日、吉田茂元首相の国葬で弔辞を述べる佐藤栄作首相=東京・日本武道館 

 佐藤栄作首相(当時)が1967年に吉田茂元首相の国葬を閣議決定する際、法的根拠がないとして野党第1党の社会党を説得するよう自民党の園田直衆院副議長に指示していたことが分かった。園田氏は秘密裏に社会党幹部と交渉し内諾を得た。衆院職員として園田氏の秘書を務めた平野貞夫元参院議員(86)が3日までの共同通信社の取材に対し、当時の経緯を明らかにした。
 岸田文雄首相は安倍晋三元首相の銃撃事件から6日後の7月14日、国葬実施を表明した。野党からは、国会への説明がないまま国葬実施の判断に踏み切ったことに反発が出ており、実施決定の手続きが妥当だったかも焦点となりそうだ。
 平野氏によると、佐藤氏は67年10月20日に吉田氏死去の連絡を受けた数時間後、訪問先のフィリピンから衆院副議長室にいた園田氏に電話で、吉田氏の葬儀を国葬として執り行う方針を伝え、社会党への説得工作を指示した。
 佐藤氏は園田氏に「国葬の制度がないことは知っているが、超法規的措置で実施するには野党の了解が必要だ。今夜中に社会党を説得しろ」と命じた。電話中の園田氏のそばにいた平野氏には、佐藤首相が興奮し、一方的にまくし立てる大声が漏れてきたという。
 園田氏は、同日中に平野氏を伴い、社会党の山本幸一書記長と副議長公邸で、柳田秀一国対委員長と議員会館で相次ぎ面会した。山本、柳田両氏と国会対策でつながりが深いこともあり、理解を得られた。園田氏は自民党の福田赳夫幹事長に結果を報告した。
 その後、「内諾情報」が報道され、社会党内で反発が出たが、社会党執行部は国葬に関する意思表示をしないと表明。今回の件を前例とせず、今後国葬があった場合は国会の議院運営委員会で協議すべきだとの方針を示した。
 政府は67年10月23日の臨時閣議で国葬実施を決定。政府作成の「故吉田茂国葬儀記録」によると、社会党は河野密中央執行委員長代理が同31日の国葬に出席した。

📝国葬 政府が費用を全額負担して執り行う葬儀。戦前は勅令の「国葬令」が法的根拠だった。皇族以外の対象は、「国家に偉勲ある者」とされ、西園寺公望など首相経験者のほか、東郷平八郎、山本五十六ら旧日本軍の軍人も対象となった。現行憲法施行に伴い失効。安倍晋三元首相の国葬について、政府は「国の儀式」を内閣府の所掌とする内閣府設置法と、実施日を定めた閣議決定が根拠と説明する。岸田文雄首相は「内閣法制局とも調整して判断した」と表明した。

  ◎上記事は[中日新聞]からの転載・引用、及び書き写し(=来栖)


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