所得税、個人住民税からの「復興増税」⇒被災地とは関係のない原子力ムラや公共工事などに流用

2012-09-20 | 政治

中日新聞【社説】
基準地価 復興予算を正しく使え
2012年9月20日
 国土交通省が発表した基準地価(七月一日時点)は全国的には底入れ感が見えてきた。だが、東日本大震災の被災地では二極化が進む。“流用”が目立つ復興予算をきちんと被災地に向けるべきだ。
 被災三県のうち福島県では、今なお警戒区域などの指定で三十一の基準地で調査を休止した。それを除いても、住宅地、商業地とも下落した地点が前年より増え、地価は引き続き低迷したままだ。
 一方、宮城県や岩手県では、一部の高台や被害が軽かった住宅地で住民の移転需要が集中したことから、上昇した地点が出た。同県陸前高田市の高台住宅地は全国一位の上昇率を示したほどだ。
 しかし、同県全体でみると福島県よりも下落率は大きかった。要するに、安全な場所や都市機能が回復してきた地域と、そうでない地域とで地価の二極化が一段と鮮明になった。見方を変えれば、遅々として進まないがれき処理など「復興事業の遅れ」が、こうした二極化の傾向を強めているのだ。
 政府は震災復興に必要な費用を、当初五年間で少なくとも十九兆円と見積もり、復興増税を決めた。だが、その復興予算は実際には津波で甚大な被害を受けた沿岸被災地へ十分に行き渡っていないばかりか、被災地とはまったく関係のない原子力ムラの独立行政法人・日本原子力研究開発機構に核融合研究費として四十二億円が二〇一二年度予算で流用された。
 ほかにも沖縄県の国道工事などに充てられ、さらに一三年度予算でも計上は認められない方向だが同機構の研究費四十八億円が概算要求に盛り込まれていた。
 復興増税は二十五年間にわたって所得税に上乗せされ、個人住民税にも十年間かかる。国民は当然、被災地の復興に使われると理解しているはずだ。しかし、必要とされる被災地には届かず、遠く離れた公共工事などに流用されていた。被災地や国民に対し、許されない背信行為である。
 野田佳彦首相は年頭の施政方針演説で述べた「一日も早く被災地に復興の槌音(つちおと)を力強く響かせたい」の一節を、よもや忘れてはいるまい。
 住む土地や生計を営む場所の確保は急務だ。復興の遅れには、浸水で土地の境界や所有者が不明などの事情もある。自治体の人手も足りないだろう。土地利用に関して国や県が握る許認可の権限を、市町村に一定期間移管するなど、平時とは違う支援が必要である。
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「復興予算」42億円を日本原子力研究開発機構(原子力機構)の核融合エネルギー研究費に流用 2012-09-18 | 政治

             

復興予算 原子力ムラに もんじゅ運営独法 核融合研究、42億円流用
中日新聞2012年9月16日 朝刊
 政府の二〇一二年度予算の復興特別会計のうち、高速増殖原型炉「もんじゅ」などを運営する独立行政法人・日本原子力研究開発機構(原子力機構)の核融合エネルギー研究費に四十二億円が計上されていたことが分かった。文部科学省は一三年度予算の復興特別会計でも、四十八億円の研究費を概算要求している。東日本大震災の被災地復興のため、国民に新たな負担を求めた復興予算が復興とは直接関係のない「原子力ムラ」の事業に使われた。(中根政人)
 原子力機構に対し、一二年度予算の復興特別会計からは百億円超が支出された。このうち、東京電力福島第一原発事故の収束や除染に関する技術開発費などを除く四十二億円は、日本や欧州連合(EU)、米国、中国など七カ国・地域が核融合エネルギーの実用化を目指して共同で進める国際熱核融合実験炉(ITER)の研究事業に充てられた。ITERは、日本国内では、青森県六ケ所村と茨城県那珂市に研究拠点がある。
 復興とは無関係との指摘について、原子力機構は「被災地の研究拠点を通じて、復興を支える技術革新を促進できる」と強弁。文科省も「被災地の産業振興だけでなく、日本全体の復興につながる」と説明している。
 京都大原子炉実験所・小出裕章助教は「被災地の復興を最優先に考えるならば、むしろ原子力機構の不要不急な研究事業を削減して財源を確保する取り組みが不可欠だ。核融合エネルギーは、実用化のめどが立っておらず一般会計も含めて研究予算を付けること自体が無駄遣いだ」と批判している。
 政府は、東日本大震災の復興財源について、所得税や住民税の増税などで一一年度から五年間で計十九兆円を確保した。だが、津波で甚大な被害を受けた沿岸部の被災地へ十分に回っていないことや、被災地以外の公共事業などに使われていることに疑問の声が上がっており平野達男復興相は実態調査を財務省に要請している。
 原子力機構は原発推進の経済産業省や文科省の幹部らが天下りしOBが再就職した企業・団体と多額の取引を行っていることなどに批判が集まっている。
◆省庁が分捕り合戦
 災害復興予算の問題に詳しい宮入興一・愛知大名誉教授(財政学)の話
 東日本大震災の復興予算は、被災地の復興に加えて「活力ある日本の再生」が編成の目的とされた。そのことで、復興を口実にした各府省の事業予算の分捕り合戦が起こり、復興とは無関係な事業にお金が回る事態に陥っている。
 原子力機構が研究費を復興特別会計から計上したのもその一例で、被災地のためではなく、予算をより多く確保したいという姿勢の表れでしかない。
<国際熱核融合実験炉(ITER)>
 太陽で起きている核融合と同様の状態を人工的につくり出し、発電に使えるかどうかを実験する装置。実験炉の建設地をめぐっては、日本と欧州連合(EU)が誘致合戦を展開したが、2005年にフランス国内への建設が決定した。実験炉の運転開始は20年を予定している。


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