介護職 コロナ禍でも求人安定
介護職 注目度アップ
中日新聞朝刊 2020年11月11日 水曜日
新型コロナウイルス感染拡大の影響で仕事を失ったり、収入が減ったりする人が増える中、介護職に注目が集まっている。コロナ禍でも安定した求人があるためで、資格取得の講座も人気だ。人手不足に悩む現場は期待を寄せる。就職後の定着や待遇改善など課題も多い。
神奈川県藤沢市の有料老人ホームで四月から働いている岩渕成穂(しげほ)さん(55)は、クラウン(道化師)が本業だ。国内外のイベントなどで活躍していたが、感染拡大により仕事が途絶え、知人の紹介で未経験だった介護の世界に飛び込んだ。
二十五歳でプロになってからクラウン一筋でやってきた。芸能の世界で生きてきた自分から見ると、介護は「究極の裏方」。縁遠いと思っていたが、働いてみて印象が一変した。「すごく大切な仕事。自分も成長できた」
大変な面もある。一日中動きっぱなしで心理的負担も大きい仕事だが、無資格で非常勤の岩渕さんはこのまま働いても将来的に賃金は伸びない見通しだ。「この金額で続けるのは難しい」と感じる。最近は本業の仕事も戻り始め、両立に悩んでいる。
介護業界では深刻な人手不足が続く。厚生労働省の調査では、二〇一九年の介護関係職種の有効求人倍率は4・20倍に上り、全体の1・45倍を大きく上回った。
岩渕さんが働く施設を運営する「伸こう福祉会」は、コロナ禍失業した異業種の人を短期採用したり、事業縮小中の異業種他社から出向を受け入れたりしている。感染防止策の徹底などで業務量が増え、人材確保は喫緊の課題だ。
希望すればそのまま就職も可能で、他社から出向していた3人が転職を決めた。同会の勘里絵利奈・品質推進室長は「経験してから就職するので、ミスマッチによる離職が防げる」と期待する。
介護資格への注目も高い。介護人材の育成を手掛けるトライトキャリア(大阪市)では3月以降、入浴介助などを行うのに必要な「介護職員初任者研修」の申し込みが急増。クラス数を倍増して対応した。
女高生には飲食業や製造業など他業種の人も目立つ。兵庫県西宮市の女性(58)は旅行会社で添乗員をしていた。コロナ禍で休業になり、関心があった介護を学び始めた。終了後は介護の仕事を探すつもりだ。
人手不足 現場への定着課題
介護大手のニチイ学館でも、4~8月の研修受講性が前年同期比で約1・5倍に増えた。だが会社員が多く、同社の担当者は「失業時の『保険』と捉える人が多いのではないか」と分析する。転職後の定着も課題で「事前に介護の注意点を伝え、就職後もフォローすることが大切だ」と話した。
◎上記事は[中日新聞]からの書き写し(=来栖) 画像は省略