法務省、2人の死刑執行 久間三千年死刑囚と高塩正裕死刑囚 森英介法相 2008(平成20)/10/28

2008-10-29 | 死刑/重刑/生命犯

法務大臣臨時記者会見の概要
平成20年10月28日(火)
本日,久間三千年,塩正裕,2名の死刑を執行いたしました。この2名に関する犯罪事実の内容等については,別途お配りした資料のとおりです。簡潔に申し上げますと,まず,久間三千年については,小学校に登校中の女児2名を車に乗せて,略取または誘拐し,絞殺した上,遺体を山中に投げ捨てた略取誘拐殺人死体遺棄の事件です。次に,塩正裕については,面識がある資産家宅に押し入り,家にいた妻と娘を切り出しナイフで何回も突き刺すなどして殺害し,現金を強取した強盗殺人の事件です。このように,いずれの事件を見ても,非道な動機に基づき,被害者の尊い人命を奪った事案で,それぞれの被害者や遺族の方々にとって痛恨極まりない事件であると思います。以上のような事実を踏まえ,慎重な検討を加えた上で,死刑の執行を命令した次第です。
【死刑執行に関する質疑】
Q:大臣御就任になられて初めての死刑執行ということなのですが,今の思いはいかがでしょうか。
A:法の求めるところに従って,粛々と自らの職責を果たしました。
Q:前回,保岡大臣時代の死刑執行は9月11日ですが,執行から1ヶ月半での執行ということで,この間隔についてはいかがですか。
A:十分慎重かつ適正な検討を加えた上で,執行を命令したもので,時期とか間隔については一切意識にありません。
Q:これで,死刑確定囚というのは,何人になったのでしょうか。
A:101人です。
Q:それぞれの死刑の確定から執行までの年月を教えていただけますか。
A:久間三千年が確定から約2年。塩正裕が約1年10ヶ月であります。
Q:再審請求が出ているかどうかという状況は。
A:その件につきましては,公表いたしますと,死刑を執行された者の遺族や被害者の遺族等の心情の安定をも損ねることになりかねませんので,お答えは差し控えさせていただきたいと存じます。
Q:鳩山大臣時代の執行は2ヶ月に1回ということで,かなり早まったと言われたのですが,保岡さんの時から1ヶ月あるいは1ヶ月半,就任から1ヶ月ぐらいのペースでということになると,今後もこのようなペースが妥当と考えるのか,残りが100人を超えているという状況も踏まえて,その辺の考えはいかがでしょうか。
A:先ほども申し上げたとおり,そういった間隔とか人数とかということにつきましては,一切意識をしていません。慎重かつ適正に検討を踏まえた上で,行いたいと考えています。(以 上)
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2人の死刑執行=森法相就任後初-女児誘拐殺人の久間死刑囚ら・法務省
10月28日11時15分配信 時事通信
 法務省は28日、福岡県で女児2人を殺害した久間三千年死刑囚(70)=福岡拘置所=と、福島県2女性殺害の高塩正裕死刑囚(55)=仙台拘置支所=の刑を執行したと発表した。9月に就任した森英介法相の下では初。執行は同月11日以来で、47日の間隔は、執行を法務省が公表するようになった1998年以降で最短。
 鳩山邦夫元法相、保岡興治前法相に続き、死刑囚の氏名と犯罪事実、執行場所を公表した。執行は今年になって計15人で、未執行の死刑確定囚は101人となった。
 執行後に記者会見した森法相は「慎重な検討を加えた上で、法の求めに従って粛々と執行した。間隔や人数は意識していない」と述べた。
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<法務省>2人の死刑を執行、森法相の下で初めて
(毎日新聞 - 10月28日 11:31)
 法務省は28日、2人の死刑を執行したと発表した。執行されたのは久間三千年(70)=福岡拘置所収容▽高塩正裕(55)=仙台拘置支所収容=の2死刑囚。執行は9月11日以来で今年に入り5回目。森英介法相の命令は9月の就任以来初めて。
 死刑執行は法相の命令が出なかったことによる約3年4カ月の中断後、93年3月に再開され、以後75人が執行された。現在の確定死刑囚は101人。
 確定判決などによると、久間死刑囚は92年2月、福岡県飯塚市の路上で小学1年の女児2人(いずれも当時7歳)をわいせつ目的でワゴン車に乗せ、絞殺した。高塩死刑囚は04年3月、福島県いわき市の無職女性(当時83歳)方に押し入り、女性と次女(当時55歳)を刺殺し現金を奪った。久間死刑囚は06年9月に最高裁で死刑確定。高塩死刑囚は06年12月に上告を取り下げて確定した。高塩死刑囚は事件から4年7カ月、確定から1年10カ月での執行だった。
 今年に入っての死刑執行は鳩山邦夫元法相下で3回(2、4、6月)、保岡興治前法相下で1回(9月)。ほぼ2カ月に1回執行され、大臣が相次いで変わった後の今回もペースが維持された。【石川淳一】
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飯塚女児殺害事件の久間死刑囚、福岡拘置所で死刑執行
 法務省は28日、女児2人を殺害したとして殺人罪などに問われ、死刑が確定した久間(くま)三千年(みちとし)死刑囚(70)ら2人の刑を、同日午前に福岡拘置所と仙台拘置支所で執行したと発表した。
 死刑執行は、9月11日に3人が執行されて以来で、今年に入って計15人。森法相の就任後は初めてとなる。同省によると、この日の執行で死刑確定者は103人から101人になった。
 死刑が執行されたのは、久間死刑囚(福岡拘置所)と、強盗殺人罪が確定した高塩正裕死刑囚(55)(仙台拘置支所)。
 確定判決によると、久間死刑囚は1992年2月、福岡県飯塚市の小学校の通学路で、登校中の小学1年の女児2人(いずれも当時7歳)をわいせつ目的でワゴン車に誘い込み、2人の首を絞めて殺害。遺体を同県甘木市(現・朝倉市)の山中に遺棄した。
 久間死刑囚は捜査段階から一貫して無罪を主張。犯行を直接裏付ける物証や自白がなく、裁判は遺体周辺から採取された血痕のDNA鑑定や、目撃証言などの状況証拠の評価が争点になった。
 1、2審とも鑑定の信用性を認めて死刑とし、最高裁は06年9月、「性的欲望を遂げようとした卑劣な犯行。女児の首を締め付けて窒息死させた態様も冷酷かつ非情」と判断。被告側の上告を棄却し、確定した。(2008年10月28日  読売新聞・九州発)
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動機や状況「真相」封印 久間死刑囚刑執行
2008年10月29日 08:55 カテゴリー:社会 九州・山口 > 福岡
 これですべてが終わった。久間三千年死刑囚(70)の刑が執行された。最高裁が上告を棄却した2006年9月、私は「久間被告が口をつぐんだまま死刑となれば、明らかにされるべきいくつもの真相が、永遠に封印されてしまう」と書いた。その真相が、ついに封印されてしまった。
 この事件は犯行場所も殺害状況も動機も、正確には何も真相が分かっていない。久間死刑囚は逮捕された1994年9月から最後の日まで、一貫して無実を主張した。
 「冤罪(えんざい)」の訴えを無視するつもりはない。だが、司法が下した判断に従い久間死刑囚が真犯人という前提に立てば、死に際し、自らの胸に閉じ込めた真相とともにこの世を去る、その胸中はいかなるものだったのか。
 事件にかかわった複数の捜査関係者は「彼は家族を守るために否認を貫いた」と言う。犯行を認めれば自分の家族が崩壊する、冤罪のまま死ねば救われる‐と。
 もしそれが真実なら、久間死刑囚の心境をどう理解すればいいのか。久間死刑囚が奪った女児2人の命と家族の苦しみの重さと、必死で守り通した自らの家族への思いを。
 久間死刑囚には、語らなければならないことがたくさんあった。語らずに、この世を去った。もう少し時がたてば、あるいはその日が来たかもしれないという思いもぬぐえない。判決確定からわずか2年での執行には疑問が残る。
 発生から事件を追い続けた。いくつもの「なぜ」を残し、16年8カ月後の3人目の死をもって幕を閉じた。心は、晴れない。 (宮崎昌治)
=2008/10/29付 西日本新聞朝刊=
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死刑廃止議連が執行を批判 「暴走」「国連無視だ」
 福岡県飯塚市の2女児殺害事件の久間三千年死刑囚(70)ら2人に刑が執行されたことに対し、超党派の「死刑廃止を推進する議員連盟」(亀井静香会長)の保坂展人事務局長(社民)が28日午後、国会内で記者会見し「森英介法相は法務委員会で所信表明していないまま執行を命じた。議員にチェックさせない状況での執行は法務行政の暴走」と抗議した。
 また日本の死刑制度については、国連の自由権規約委員会が今月15、16日の対日審査で、委員から批判が集中。厳しい意見を盛り込んだ最終見解が近く採択される予定で、議連メンバーの福島瑞穂社民党党首は「今回の執行は国連から何を言われようが、関係ないという日本政府の姿勢の表明だ」と批判した。
 保坂事務局長は会見に先立ち、法務省の大野恒太郎刑事局長と会い「今後ますます死刑執行が加速するのではないか」と懸念を示し、執行を停止するよう申し入れた。2008/10/28 18:06   【共同通信】
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〈来栖のつぶやき〉
 溜まるゆゑ掃除をせねばならぬとぞ塵芥(ちり)に変わらぬ死囚の命
 衝撃は一瞬にしてその後は忘れ去らるる刑死者あはれ
 春に次ぐ秋の処刑に取るものも取り敢えず母は面会に来り
 上記3首は、連合赤軍元被告(*)坂口弘氏の歌である。私は処刑の報道に接するたびに、この3首をつぶやいてきた。“衝撃は・・・忘れ去らるる・・・”は、身に沁みて哀れである。
 しかし最近の社会の風潮を見るなら、“衝撃”が“一瞬”すらも持続していないように私には感じられる。いや、衝撃にすらなっていないのではないか。死刑はすっかり常態化したように思える。「常態化」も、立て続けに執行する法務省の企図だったようだ。命に貴賎はないはずだが、自然死でもなく、国(つまり国民)が関与した死について斯くも平然としていられる人の心とは、どういうものだろう。
*連合赤軍元被告坂口弘氏・・・
 坂口弘氏の歌に“ありがたし元被告なる呼称にて吾を報じて呉るる新聞”とある。“死刑囚”ではなく“元被告”と呼称されたことが「ありがたい」というのである。よく解る。その心情のほどが、よく解る。私も、勝田被告から勝田死刑囚へと報道の呼称が変わったとき、名状しがたい息苦しさに襲われた。確定力のもたらす恐怖感だ。「被告」のほうが、有難い。
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「森英介法相による3度目の死刑執行に抗議する」
http://www.jca.apc.org/cpr/2009/090728execution.pdf#search='死刑執行 久間三千年'
2009 年7月28日 監獄人権センター
 麻生内閣の森英介法相は本日(7月28日)、山地悠紀夫さん(大阪拘置所)、前上博さん(大阪拘置所)、陳徳通さん(東京拘置所)の3人に対して死刑を執行した。私たち監獄人権センターは、本日の死刑執行に強く抗議する。
 今回の死刑執行は森英介法相による3 度目の執行である。すでに衆議院が解散され、8月30日の総選挙後に総辞職が予定されている内閣の法相が、しかも、政権交代さえとりざたされているこの時期にあえて執行に踏み切ったことは、政治的にも無責任で許し難い暴挙である。
 2007年12月の鳩山邦夫法相(当時)による執行以来、ほぼ2~3カ月に1度のペースで行われてきた死刑執行を、森英介法相は今年1月29日の4名の死刑執行以降、半年近くにわたって行って来なかった。その背景には、昨年10月28日に森法相が飯塚事件の久間三千年さんに対して行った死刑執行が,無実の人に対する執行であった疑いが、足利事件の菅家利和さんの再審開始によって一段と高まったという事情があったと思われる。
 足利事件とほぼ同時期の飯塚事件において、久間三千年さんの有罪認定の決め手となったDNA鑑定は足利事件と同じ「MCT118」式の検査法で、しかも、久間三千年さんのDNA型は菅家利和さんのDNA型と同じ「16-26型」とされていた。菅家さんに対するこのDNA鑑定が誤りであったことが明らかになった今、久間さんの冤罪の可能性は一段と高まったと言わねばならない。
 久間さんは一貫して無罪を主張し、死刑執行の直前まで弁護団を通じて再審を準備していた。また、森法相が久間さんの死刑を執行した昨年10月28日までには、東京高裁が足利事件のDNA 再鑑定に踏み切る可能性がすでに高まっていた。森英介法相はこれらの事情を精査しないまま、あるいは知りながら、あえて久間三千年さんの死刑を執行することによって、決してあってはならない「冤罪執行」に手を染めた可能性が高いのである。
 足利事件の無実が誰の目にも明らかになったこの春以降、森英介法相も自ら犯した「冤罪執行」の可能性を意識し、死刑執行を躊躇してきたに違いない。ならば、なぜ今、新たな死刑執行に踏み切ったのか。森英介法相はこの点について、説明責任を果たすべきである。
 さらに、今回執行された山地悠紀夫さんと前上博さんは、ともに控訴を取り下げ、一審判決限りで死刑が確定した。しかも、ともに確定して2年余りでの執行であり、陳徳通さんも確定後3年余りしかたっていない。
 この間、死刑執行のペースを上げるために、今回と同様上訴を取り下げて自ら判決を確定させた死刑確定者を狙って早期に執行するケースが目立つ。しかし、これは昨年10月に行われた国際人権(自由権)規約委員会の「死刑事件における必要的上訴制度」の勧告にも反し、それこそ「冤罪執行」の危険性を高めるものである。
 今年に入ってからも、東アフリカのブルンジやアメリカのニューメキシコ州が死刑を廃止するなど、世界は「死刑のない世界」に向かって着実に前進している。日本でも裁判員制度が実施され、市民が死刑か否かの判断に直面することが現実のものとなり、死刑制度に対する関心もかつてなく高まっている。
 このような状況の中で、民主党もその政策集「index2009」の中で、「死刑存廃の国民的議論を行う」「当面の執行停止や死刑の告知、執行方法なども含めて国会内外で幅広く議論を継続してい」くと明記するなど、死刑存廃問題に具体的に言及する政党も増えてきた。
 「冤罪執行」の危険や必要的上訴制度の問題を含めて今回の執行が突き付けている問題点を、政府、各政党、各議員そして私たち市民は真剣に議論し、「死刑のない社会」に向かって今こそ舵を切るべきである。
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足利事件と同じDNA鑑定 飯塚事件久間三千年元死刑囚弁護団再審請求へ DNA新証拠提出目指す 2009-06-18 
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