【消えない戦慄 地下鉄サリン20年(5)】決別の一方、再審請求に執着 浮かぶ二面性 小池泰男死刑囚

2015-03-20 | オウム真理教事件

 産経ニュース 2015.3.20 13:00更新
【消えない戦慄 地下鉄サリン20年(5)】「決別」の一方、再審請求に執着 死刑囚から三女への手紙 浮かぶ二面性
 「今はただの大ばか者だと思っている。私自身も同じ穴のムジナ。ただのくそばか野郎だ」
 3月10日、東京地裁の104号法廷。過去にオウム真理教教祖の死刑囚、麻原彰晃(60)=本名・松本智津夫=の1審も行われた地裁最大の法廷で、教団元幹部の死刑囚、小池(旧姓・林)泰男(57)は、かつての師を切って捨てた。地下鉄サリン事件で送迎役を務めた元信者、高橋克也(56)の裁判員裁判に証人として出廷したときのことだった。
 小池は事件で、他の散布役よりも1袋多い3袋のサリンを日比谷線にまいた。死者は最多の8人。「殺人マシン」とまで呼ばれるようになった。凶行に駆り立てたのは、麻原や教団の指示に逆らうことへの恐怖、あるいは信仰心の強さだったのか。
 それでも逮捕後は、平成10年4月の麻原の公判で「事件を起こしたのは、あのようなけがれたものを信じていたからだ」と批判するなど、教祖からの“決別”を感じさせた。麻原の公判から17年を経て、東京地裁で続く高橋の公判でも、その思いはぶれていないようにも聞こえる。
 ただ、その表情はついたてに遮られ、98の傍聴席からは、うかがい知ることはできない。どんな目をして、どんなそぶりで…。正面から見据える裁判員にはどう映っているのだろう。
■法廷とは別の一面
 女の子受けしそうな象のキャラクターの封筒。便箋には横書きのきちょうめんな文字が並び、末尾には湯飲みの絵をあしらう。署名は「yasu」。つづったのは、小池だ。
 宛先は麻原の三女(31)。小池らとの面会許可を取り消された三女が国に許可を求めた訴訟で、小池らの手紙が証拠提出された。閲覧すると、法廷の姿とは別の一面が浮かんだ。
 麻原の再審請求について、小池が25年5月にしたためた一通にはこうある。
 「お父さんの『2次請求』が棄却されたことが今日の新聞に出てました。あらまあー。弁護団は次の請求書をすぐに提出したのかな? 大丈夫だよね」「5、6次の計画も立てていかないとね。できるなら10次請求ぐらいまで考えておかないとあかんでしょう」
 再審請求を促す小池。別の手紙では書面について「内容なんかへ理屈でいいんだから。ただし、新証拠として誰かの『陳述書』だけは新たに付け加えないと」と助言した。再審請求中の死刑囚は、執行を回避される傾向にある。それを狙うよう、背中を押しているかのようだ。
 小池はなぜ、麻原の再審にこだわるのか。決別は偽りだったのか、死刑執行で父を失うことになる娘への慈愛なのか-。
■「考えちゃうよね」
 23年12月12日付の最高裁決定で1、2審で死刑判決を受け、上告を棄却されていた教団元幹部、遠藤誠一(54)の死刑が確定した。これで特別手配され逃亡中の3人を除き、教団による一連の事件の裁判はすべて終結した。死刑確定者は麻原をはじめ13人。共犯者の裁判中に死刑の執行を見送る慣例があるが、その理由がなくなり、執行が現実味を帯びた。
 その年の大みそかのことだ。特別手配されていた教団元幹部の平田信(49)が警視庁に出頭した。平田は昨年の1審で、逃亡生活に見切りをつけた理由を「麻原以外の者たちの死刑は勘弁していただけないでしょうかという気持ちだった」と語った。
 三女は訴訟での陳述書に、死刑囚として執行への恐怖心にさいなまれる教団元幹部の姿をこう記している。
 「別の死刑囚の死刑執行があった次の日、(元幹部が)顔面蒼白(そうはく)で面会室に現れ『昨日またあった』と教えてくれる」
 小池が25年1月に発送した手紙には、こんな一節があった。
 「日本の自殺者が3万人を割ったそうだが、それでも毎日70人が自殺する。たったの2日で死刑囚全員を超えてしまう数。なんか考えちゃうよね」
 生と死のはざまでつづられる死刑囚の思い。
 東京地裁で続く高橋の裁判員裁判は、教団の一連の事件を裁く最後の1審裁判だ。同時に、犯行に走った死刑囚の肉声を直接耳にする最後の機会でもあった。
 地下鉄サリン事件はきょう20日で20年。関与した死刑囚の胸に、どんな思いが去来するのか。(呼称略)
■死刑執行時期
 刑事訴訟法は「法相は確定から6カ月以内に命令を出さなければならない」と規定。ただ、法相には拘束力がない「訓示規定」とされているため、宗教観などを理由に執行を命じなかったケースもあり、いつ執行されるか決まっていない。また、再審請求中や共犯者が公判中の場合に慣例として死刑の執行が見送られることが多い。40年以上執行されなかった死刑囚がいる一方、死刑確定から1年以内に執行されたケースもある。法務省によると、18日現在で130人の確定死刑囚がいる。
 =おわり
 連載は池田証志、中村昌史、中村翔樹、太田明広、宇都宮想が担当しました。
 
 ◎上記事は[産経新聞]からの転載・引用です
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