核軍縮条約 INF=中距離核ミサイルの全廃条約…破棄で米ロの対立一層深まる…“冷戦後最悪” 2019/2/2

2019-02-03 | 国際

“冷戦後最悪” INF全廃条約破棄で米ロの対立一層深まる
 NHK NEWS WEB 2019年2月3日 5時24分INF全廃条約
 大国間のせめぎ合いが激しさを増しています。核軍縮条約、INF=中距離核ミサイルの全廃条約の破棄を通告したアメリカに対し、ロシアは対抗措置として条約で禁じられてきたミサイルの開発を始める方針を明らかにし、冷戦後最悪とも言われる両国の対立が一層深まっています。
 アメリカのトランプ政権は、ロシアがINF=中距離核ミサイルの全廃条約に違反しているとして、2日、条約の義務の履行を停止し、ロシアに条約破棄を正式に通告しました。
 これに対してロシアのプーチン大統領は2日、「われわれは鏡のように同じ態度でのぞむ。アメリカが条約への参加を停止すると言うならロシアも停止する」と述べ、ロシアも条約の義務の履行を停止すると表明しました。
 さらに対抗措置としてアメリカのミサイル防衛システムを突破できるとされる「極超音速兵器」を改良するなどして、条約で禁止されてきた地上発射型の中距離ミサイルの開発を始める方針を明らかにしました。
 地上発射型の中距離ミサイルをめぐっては、アメリカも開発に着手する構えをみせていて、冷戦後最悪とも言われる両国の対立は軍事の分野でも一層深まっています。
 新たな軍拡競争への懸念が高まるなか、中国は1日、外務省の報道官がコメントを出し、米ロ両国に歩み寄りを求める考えを示しました。一方で条約をめぐって米ロ両国が中国を念頭に言及する核軍縮の新たな枠組みには否定的な立場を示し、大国間のせめぎ合いが激しさを増しています。
*欧州各国から歩み寄り求める声
 深刻化するアメリカとロシアの対立に、米ロ関係に大きな影響を受けるヨーロッパの国々などからは双方の歩み寄りを求める声も上がっています。
 このうち核保有国のフランスは、ロシアの条約違反を指摘する一方、アメリカの破棄の決定については「残念だ」として条約の存続をのぞむ姿勢をにじませました。そしてフランスとしてもロシアに対応を働きかける姿勢を示しました。
 またドイツのメルケル首相は「対話を進展させるためにあらゆる努力を払う」と述べ、米ロ両国に対話を促す考えを示しています。
 また冷戦時代に旧ソビエトに民主化運動を弾圧されたハンガリーのシーヤールトー外相は「東と西が対立した時、私たち中央ヨーロッパはいつも敗者となる。両国の協力を祈りたい」と述べ、緊張の高まりに懸念を示しました。
 国連のデュジャリック報道官は「当事者が対話を通じて溝を埋めることを望む」と述べて、条約の存続に向けて打開策を見いだすよう米ロ両国に歩み寄りを求めています。

INF全廃条約破棄 プーチン大統領 ミサイル開発着手の方針
 NHK NEWS WEB 2019年2月2日 21時00分INF全廃条約
 アメリカがINF=中距離核ミサイルの全廃条約の破棄を決定したことを受け、ロシアのプーチン大統領は対抗措置としてロシアも条約の義務の履行を停止し、条約で禁止されてきたミサイルの開発に着手する方針を明らかにしました。
*「鏡のように同じ態度で臨む」
 アメリカのトランプ政権は、ロシアがINF=中距離核ミサイルの全廃条約に違反しているとして、2日、条約の義務の履行を停止し、ロシアに条約破棄を正式に通告するとしています。
 これを受けてロシアのプーチン大統領は2日、大統領府でラブロフ外相とショイグ国防相と協議しました。
 この中でプーチン大統領は「われわれは鏡のように同じ態度で臨む。アメリカが条約への参加を停止すると言うならロシアも停止する」と述べて、対抗措置としてロシアも条約の義務の履行を停止する考えを示しました。
 そのうえでショイグ国防相に対して「地上発射型で極超音速の中距離ミサイルの開発を認める」と指示し、条約で禁止されてきた地上発射型の中距離巡航ミサイルの開発に着手する方針を明らかにしました。
 一方で、プーチン大統領は「軍拡競争のために多大な浪費をすることがあってはならない」と述べ、懸念される軍事費の増大を抑え、持続可能な形でアメリカに対抗していく構えを見せています。

米 INF全廃条約破棄へ 大統領 “核軍縮の新たな枠組みを“
 NHK NEWS WEB 2019年2月2日 12時13分INF全廃条約
 アメリカのトランプ大統領はINF=中距離核ミサイルの全廃条約の破棄を決定する一方、「新たな条約ができればよい」と述べて中国などほかの核保有国も含めた核軍縮の新たな枠組みづくりが必要だという考えを示しました。しかし実現のめどはたっておらず、核軍縮の先行きは不透明さを増しています。
 アメリカのポンペイオ国務長官は1日、記者会見し、ロシアがINF=中距離核ミサイルの全廃条約に違反しているとして条約の義務の履行を停止し、条約の破棄をロシアに正式に通告すると発表しました。
 トランプ大統領も1日、ホワイトハウスで記者団に対し、「われわれは条約を守ってきたが、もう一方が守ってこなかった」と述べ、ロシアに責任があると非難しました。
 その一方で「みなが関わってもっとよい新たな条約にしたい」として中国などほかの核保有国も含めた核軍縮の新たな枠組みづくりが必要だという考えを示しました。
 新たな枠組みについてはロシアのプーチン大統領も去年、条約の策定を呼びかけています。
 しかし核戦力を急速に増強する中国はミサイルをアジア太平洋でアメリカの影響力を排除する戦力の要に位置づけているとみられ、米ロ中の3か国を含む新たな核軍縮の枠組みが実現するめどはたっていません。
 またアメリカとロシアのもう一つの核軍縮条約「新START」の期限が再来年に迫っていますが、延長に向けた協議は進んでいないとみられています。
 大国間の軍拡競争への懸念が強まる中、「新START」の存続を危ぶむ声も出ていて、核軍縮の先行きは不透明さを増しています。
*トランプ政権国際的枠組みから次々と脱退・離脱
 国際的な枠組みからアメリカが脱退・離脱する動きは、トランプ政権が発足して以降、相次いでいます。
 まず、政権が発足したおととし1月、アメリカは、日本など12か国で署名したTPP=環太平洋パートナーシップ協定から離脱しました。同じ年の6月には、地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」からの脱退を表明。
 去年5月には、イランが核開発を大幅に制限する見返りに経済制裁を解除するとした「イラン核合意」について、「今の核合意のもとではイランの核保有を止められない」として離脱しました。
 このほか、ユネスコ=国連教育科学文化機関や、世界各地の人権問題に取り組む国連人権理事会からも脱退。アメリカ第一主義を掲げ、国際協調よりも自国の利益を優先するトランプ政権の姿勢が鮮明になっています。
*専門家「中国含む核軍縮の枠組み進む可能性」
 保守系のシンクタンク、ヘリテージ財団のジェームズ・カラファノ副所長は1日、NHKの取材に対し、トランプ大統領が中国を念頭に他の核保有国も参加する新たな枠組みづくりに意欲を示したことについて、「中国からみれば、ロシアが中距離核戦力を増強すればアメリカ以上の明白な脅威になる。一方でロシアからみれば、アメリカが核戦力を強化し始めればこれまでの優位が保てなくなる。直ちにではないとしても、数年以内には中国もロシアも軍備管理の枠組みへの参加に関心を持つことになると思う」と述べ、今後、中国やロシアを含む多国間の核軍縮の枠組みづくりが進む可能性があるという見方を示しました。
*「日本は軍拡歯止めの具体策を」
 アメリカがINF=中距離核ミサイルの全廃条約の破棄を決めたことについて、軍備管理・軍縮に詳しい一橋大学大学院の秋山信将教授は「ロシアや中国の姿勢を後ろ向きにさせるだけでなく、フランスやイギリスなどヨーロッパの核保有国も核軍縮を進めなくなると思う。世界的な核軍縮の機運はかなりしぼむだろう」と述べ、オバマ前大統領が提唱した「核なき世界」へ向けた動きに大きな影響を与えると指摘しました。
 また、日本への影響については、「中国の軍拡に歯止めをかけるというのがアメリカの理屈だが、アメリカが中国と軍縮交渉を始めるとも思えず、日本にとってはメリットがない」と述べたうえで、日本も軍拡競争に巻き込まれかねず、安全保障上、問題が生じると懸念を示しました。
 そのうえで、日本の役割については、「東アジアにおける核兵器の役割を減らし、中国や北朝鮮の軍拡に歯止めをかけるための枠組みを設ける必要がある。日本政府は、どうすれば核兵器の役割を減らしていけるのか、被爆国として訴えるだけでなく、具体的なアイデアを提唱していくべきだ」と述べました。


 ◎上記事は[NHK NEWS WEB]からの転載・引用です

---------------------------------


コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。