イスラエル、何万枚もの写真から顔認識技術でホロコースト時代の手がかり提供へ
佐藤仁 | 学術研究員
2020/2/15(土) 3:00
(写真:ロイター/アフロ)
1945年1月27日にアウシュビッツ絶滅収容所が解放されて、今年2020年で75周年を迎えた。ナチスドイツが第2次大戦時に約600万人のユダヤ人、ロマ、政治犯らを殺害した、いわゆるホロコースト。戦後75年が経ち、ホロコーストの生存者らは高齢化が進み、年々減少しており、近い将来にゼロになる。
イスラエルのホロコースト研究機関Shem Olamホロコースト記念センターでは2019年7月から「Face to Faceプロジェクト」を開始。FacebookなどSNSでホロコースト当時の写真を提供してもらうように呼びかけた。ナチスドイツの兵士が占領地に行って撮影した写真、東欧での地元住人が撮影した写真、世界中から寄せられた当時撮影した写真がセンターに寄せられた。そして戦時中に東欧などの占領地で撮影された何万枚ものユダヤ人の写真を顔認識技術で照合。生存者や犠牲者がホロコースト当時や戦後にどこに誰といたかなどを判明する手がかりを提供しようとしている。ホロコースト生存者や家族らは無料で照合サービスを受けることができる。
Lieberman兄弟の父親のJoseph氏はホロコーストの生存者で、アウシュビッツ絶滅収容所にもいたこともある。すでに亡くなった父がホロコースト時代にどこにいて、どのような経験をしていたのか、本人は全く語らなかったので子供たちはほとんど知らなかった。だが、戦後になってヨーロッパのどこかで撮影された写真に2人の従兄弟と父親が一緒に写っていたことが「Face to Faceプロジェクト」の顔認識技術で明らかになり、家族らがホロコーストでどのような歴史を歩んできたかを知ることができた。
Shem Olamホロコースト記念センターにはSNSで呼びかけると大量のホロコースト時代の写真が世界中から寄せられた。顔認識技術で何万枚もの写真を照合しているが、当時の写真で本人が一致したケースはまだ少ない。
センターのエグゼクティブ・ダイレクターのAvraham Krieger氏は「更なる顔認識技術の進化とデータベースの拡張によって、ホロコースト時代の手がかりがつかめるようになり、若い世代にホロコーストの記憶を繋いでいくことを期待しています。Face to Faceプロジェクトはホロコーストによって家族や友人と引き裂かれ、混沌とした状態に陥った生存者やその家族が彼らの過去と向かい合うことができる手がかりを提供できます」と語っている。
グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割などに関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらはグローバルガバナンスの中でどのような位置付けにあり、国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。修士(国際政治学)、修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)、「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)、「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。