「日本一新運動」の原点―112
日本一新の会・代表 平野貞夫妙観
小川敏夫法相は罷免されたのと同じ
〈前段 略〉
小川前法相の見識と野田首相の不見識
小川敏夫前法相の記者会見については、ネットで「称賛」の声とともに「そんなシンプルな話ではない」などと、小川前法相はこの問題で「やる気がなかった」と手厳しい市民グループもいる。それに、小川前法相にとって低級なマスコミからのゴシップ報道もあり、政治家・小川敏夫氏の実像はあまり知られていない。
実は、私は小川敏夫という政治家をよく知っている、というより親しい友人といえる。立教大卒で、司法試験に合格して検事・裁判官を経験して弁護士となり、平成7年の参議院選挙で国政に参加した。私は3年早く参議院議員になっていたが、物事をバランスよくとらえて公平に判断できる人物で、初対面から気が合う仲間となった。司法試験合格者といえば、立場にこだわりと癖があるが、小川氏にはまったくこれがなく、セントポールという学風のせいかと感心していた。
小川氏が法務副大臣に就任する前には、しばしば会う機会があった。私のところに市民から持ち込まれた問題の相談に気軽に乗ってくれた。事件の実態を正確に捉えて論理的に解決するという、きわめて常識を大事にする人物である。法務副大臣になってから、私は小沢氏の陸山会事件もあり、誤解を受けてはいけないと思い、距離を置いていた。まして、法務大臣となるとそれなりの制約があり、小川氏の持ち味がどれだけ生かされるか、権力の中枢での悩みも多くなり、小川氏の人間性がどんな変化や成長をするか観察していた。
小川氏のことだから機会を見て、何かの動きをするだろうと期待をしていた。それが退任にあたっての記者会見だったのだ。しかし、彼の良心を呼び起こしたのは、多くの無名の市民たちのアピールであったと思う。所謂小沢問題をめぐって、全国にわたって自然発生した市民運動の輪が、小川法相をして「検察正常化のための指揮権発動の決意」を促したことは間違いない。
それに比べ、小川法相の決意を無視・拒否した野田首相の対応は、不見識そのものといえる。野田首相は検察正常化の唯一のチャンスを逃したといえる。小沢一郎という政治家の立場は別にして、検察の正常化は現在のわが国の統治機構において急務の課題である。
情報によれば、現在、検察の内部では正常な検察を確立しようとするグループと、旧体制を続けようとするグループが激突して、壮烈な争いが続いているとのこと。捜査報告書を偽造したとされる田代検事の処分をめぐっての問題である。
小川法相の指揮権発動の決意が、検察の正常化のスタートになることである。野田首相の判断は検察を旧体制のままにしておくことになる。検察をこのままにしておくことが、国民のため国家社会のためになるのか、常識のある人ならわかることだ。野田首相には猛省してもらわなくてはならない。
小川法相の指揮権発動の決意を生かそう
小川前法相の決意を生かすため、私たちがなすべきことは沢山ある。まず、真っ先に行うべきことは、新法務大臣の滝実氏に、小川前法務大臣の決意を理解してもらうことである。滝法務大臣は東大法学部から自治省に入り、消防庁長官や奈良県副知事などの経歴でわかるように、官僚中の官僚である。小川氏とはひと味もふた味も違う。個人を説得して理解を求めることは困難である。
〈以下略〉
2012年06月08日
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◆ 「指揮権発動について再び首相と会う前日に更迭された」「小沢裁判の虚偽報告書問題・・・」小川敏夫前法相 2012-06-07
「指揮権発動について再び首相と会う前日に更迭された」、「小沢裁判の虚偽報告書問題は『検事の勘違い』などではない!!」小川敏夫前法務大臣に真相を聞いた
現代ビジネス「ニュースの深層」2012年06月07日(木)長谷川 幸洋
検事による虚偽の捜査報告書作成問題に関して、小川敏夫前法相が退任会見で検事総長に対する指揮権発動を考えていたことをあきらかにした。法相の指揮権発動とは穏やかでないが、いったい背景に何があったのか。当事者である小川前法相に6日午後、議員会館でインタビューした。
すると、問題の田代政弘検事に対する捜査・処分をめぐって、法相と法務省・検察事務当局の間で生々しい「暗闘」が繰り広げられていた実態が浮き彫りになった。
小川は5月11日に野田佳彦首相に面会して、検事総長に指揮権を発動する考えを伝えた。そこでは首相の了解が得られないまま、二度目の面会が開かれる直前、内閣改造で突然、事実上の更迭となった。更迭の理由は「国会で携帯の競馬サイトを見ていた」とか「弁護士活動でトラブルがあった」などと一部で報じられたが、小川はまったく納得していない。
小川は「捜査報告書は検事の記憶違いではない。ほぼ全部が架空なんです」「(指揮権を発動する考えを)総理につぶされたとは思っていません。でも、あっという間にクビになっちゃった」などと語った。以下、インタビューでのやりとりを紹介する。
■それ以外も全部が架空なんです
長谷川: 指揮権発動はいつごろから考えていたのか。
小川: この問題はそもそも裁判所で指摘されているわけですよ。(小沢一郎の裁判で秘書の)石川さんの供述調書が証拠として排除されましたね。田代検事が数日かけて作成したという捜査報告書も「(検察の)組織的関与が疑われる」と猛省を促している。これは事実を的確に表していると思う。
ぼくはインターネットに流出した捜査資料を読んでみました。捜査報告書については、法務大臣に就任してから非常に重大な関心をもって「国民の理解を得られる対応をしなければいけない」とあらゆる機会に言ってきた。
長谷川: なるほど。
小川: それで裁判で証拠の排除があって、捜査報告書を読んでみると、これは田代検事の記憶違いじゃない。とうてい言えない。マスコミも検察にうまく乗せられているような気がします。つまり「(石川が田代から11万人以上の選挙民から支持されて国会議員になったと言われた)一部分が架空だった」というように書いているけど、実際の報告書を読むとそうじゃない。ほぼ全部が架空なんです。架空の一つの例として「11万人」が挙がっているだけ。それ以外も全部が架空なんです。(石川がしていた秘密の)録音の中には一言も出てこない。
長谷川: その点を省内で指摘された。事務方はなんと言ったのか。
小川: 「(田代の)勘違いだから」と言っていた。そこら辺は大臣としての省内のやりとりだから(詳しくは)勘弁してもらいたいけど、ようするに田代検事の勘違いというのは、とうてい考えられない。
■検察は無罪になる証拠しか集めていない
長谷川: それが納得できなかった?
小川: だれも納得しないでしょ。裁判所が言っているとおりですよ。
長谷川: それで指揮権という話になったのか。
小川: ぼくは何度も言っているとおりで、国民の理解が得られる対応をしなくちゃいかんと。つまり田代個人の記憶違いということで終わらせるな。それではなんの反省にもなりませんから、と言い続けたわけ。でも馬耳東風で聞き流されて、新聞にどんどんリークして。(田代の)記憶違いという弁解を破れないだなんて言って、ちょろっと人事で相談なんて言ってるから。一般的に言っても聞かないんだから、じゃあどうするかっていう話になる。
長谷川: そこで指揮権発動を考えた。
小川: うん。それしかないでしょ。たとえば今朝(6月6日)の朝日新聞の社説でね、検察審査会で判断すればいいだなんて言ってるけど、まったくトンチンカンですね。
長谷川: どうして?
小川: 検事は無罪になる証拠しか集めてないんですよ。田代の記憶違いだと。それを破る証拠を集めてないんですよ。それが検察審査会にいって、どうなります?
長谷川: それはムリですね、素人がみても。
小川: 証拠がないんだから。田代の弁護人が捜査してるみたいなもんですよ。だから検審にいくっていう意味がない。有罪の証拠を集めずに無罪の証拠を集めている。そういう風につくっているんだから。捜査記録は見ていませんから、断定的に事実関係を言えないけど、記憶違いとしか言ってないんだから、集めてないんです。
長谷川: 捜査報告書をみればあきらかだと。
小川: 私、こんな録音記録ね(ファイルを見せながら)読みましよ。こんな長たらしいの。流出資料ですよ。こんな細かいの。(ここには)ないんです。さっき言った(捜査報告書に書かれた)やりとりが。全部ないですよ。私が「ないじゃないか」と言ったら、法務省は「ない」と認めました。
で、さっきも言ったけど、マスコミは11万人の部分だけを、あたかも全体の中の一部のように言うけど、それは当局の誤った情報に誘導されているんじゃないかと思う。中身、ぜんぶ嘘なんだから。
6月5日に総理にもう一度会うことになっていた
長谷川: それで「指揮権を発動する」と言ったんですね。
小川: 「それだけの覚悟は持ってんだぞ」ということは言った。「発動する」って言ったら発動になっちゃう。
長谷川: それはそうですね。対応は。
小川: 向こうの? まあ、ぜんぜんでしたね。やらないんだから。記憶違いで済ませてね。それでは国民の理解が得られず、検察の信頼が失われる。それなら法務大臣の職責としてね、こういうケースでこそ指揮権を発動すると。会見で述べたとおりです。
長谷川: それはいつごろ決心したのか。
小川: 5月11日に野田総理に会いました。その直前です。
長谷川: 総理には考えをそのまま述べられた?
小川: 時間がないから、そんなに詳しい説明はできないですよ。ただ検察の信頼を立て直すためには、指揮権も発動するということの理解を得たいと。マスコミには、ぼくがやるのを「総理が止めた」みたいな書き方もあるけど、それは違います。総理はつぶすとか、そんな意図はなかったですよ。
正しく言えば、その場ではOKということにならなかっただけで、総理につぶされたとは思ってませんよ。その場ではOKくれないから、とりあえず継続して、また出直そうと思ったわけ。それで出直そうと思っていたら、あっという間にクビになっちゃったわけ。
長谷川: 5月11日の面会からしばらく時間がありましたね。
小川: 指揮権発動なんてしなくても、やることをきちんとやればいいんですけどね。馬耳東風でマスコミにはリークするし。じゃあっていうんで、あらためて時間を申し入れて、6月5日に決まっていたんですよ。きのうです。たまたまかもしれないけど(注・前日の4日に内閣改造になった)。
長谷川: 大臣を辞める理由について「国会で携帯の競馬サイトを見ていた」とか言われましたね。あれはどういう話か。
小川: 委員会が始まる14分前だってこと。委員会中じゃない。
長谷川: え、委員会の開会前なんですか。
小川: 早く行き過ぎちゃったんですよ。テレビで流してたでしょ。でも、ぼくの周りにだれもいないでしょ。こっちは14分くらい早く着きすぎちゃった。で、30秒くらい見てた。それをあたかも審議中みたいに誤解されてるわけ。
長谷川: いつの話ですか。
小川: 党首討論のあった日。2月29日です。そんなの問責になるわけない。
長谷川: それは、そもそもどこから出てきた話なんですか。
小川: 知らない。
長谷川: 総理はなんと言ってました?
小川: 辞めなきゃならない理由は何も聞いてない。こっちも聞かなかったから。人事権者が(交代を)言ってるんで。
■「指揮権発動=悪」というメディアの思考停止
長谷川: そういう経緯があって、退任会見で話をあきらかにしたのはなぜですか。
小川: やっぱり、これ重大だしね。このままだと記憶違いでやっちゃうでしょ。国民は納得しませんよ。だから、ぼくは検察を敵に回してね、検察が憎いんじゃないの。検察の事務方が仕事ができないどころか、さらに検察の信頼が地に堕ちちゃう。それじゃいけないだろっていう危機感ですね。それで問題提起を含めて、あえて言ったわけ。
長谷川: マスコミには造船疑獄以来「政治介入はいけない」という論調が支配的です。
小川: これは政治の事件じゃないですから。政治家の捜査をストップするって話じゃない。検察の中の事件です。それがなんかフニャフニャして、国民の目から見てもね、あきらかに納得してないような消極的なことをやってんなら、それはだれが検察にさせるかって話ですよ。
それを朝日新聞は検審がやれって言ってんですけど、有罪にできないような捜査やってんのに検審に言ったってしょうがないでしょ。こういう事件こそ、指揮権を躊躇なく発動すべきだと思いましたね。
長谷川: 小川さんの政治的立場を聞きたい。
小川: 結果的に小沢さんのグループは喜んでるよね。でも、ぼくは小沢派じゃないですから。ぼくは菅(直人)グループでしたけど、そこをやめて一匹狼です。無派閥。小沢派じゃない。会ったこともないし、カネをもらったこともない。
ただ、一人の法曹として、あるいは検察OBとして、この陸山会の捜査はやりすぎだっていう考えはもっていましたよ。だけど、小沢さんに味方するわけじゃありません。純粋に捜査のあり方として、いくらなんでも、と。
だから、ぼくは意図はないんです。検察に対する国民の理解、非常に厳しいところにきていて(この処理で)さらに決定づけちゃう。ぼくは検察OBとして検察を信頼しているところ、期待はしている。あるいは立ち直ってほしいと期待しているわけ。でも、これじゃあ、検察の信頼を損なってしまう。
■もし起訴しても無罪になる
長谷川: 報道があって反響はいかがですか。
小川: 激励の電話、ファックスが多いですよ、普通の国民から。批判はほとんどありません。ツイッター、見ると面白いですよ。
あとひとつだけ。朝日が「指揮権発動して起訴してどうすんだ」と。起訴を命じるかのような前提でぼくを批判しているんだけど、そういう「起訴しろ」なんて指揮権を発動するわけないですよ。だって、もしも起訴すれば無罪になっちゃうじゃないですか。だって、有罪の証拠を集めてないんですから。人権問題になる。ぼくは責任とって政治家をやめなきゃならない。そんなバカなこと、考えませんよ。
長谷川: じゃ、どういう指揮権を。
小川: なにをもって指揮権かというと、具体的な事件を指摘して指示すれば指揮権なんですよ。具体的な事件を指摘しないで、たとえば「政府のために職務に精励しろ」だったら、単なる訓示なんです。指揮権と訓示の区別は具体的な事件を特定して、なんらかの指示をすることが指揮権なんです。
だから「この事件について厳正にやれ」と言ったって、それは指揮権なんです。つまり指揮権の範囲は非常に広いわけ。それをあたかも「指揮権というのは起訴命令だ」という前提での議論と批判はまったく当たらない。
長谷川: では「厳正にやれ」という指揮権発動を考えていた?
小川: 「厳正にやれ」って言ったって聞かないんだから。そこで、人権問題にならないように、しかし効果をあらしめるための指揮をどういう風にやるか、っていうことをね。考え抜いたわけだよ。それは申し訳ないけど、発動しなかったんだから言わない。
長谷川: 中身については(言わない)。
小川: うん。「起訴しろ」なんて、そんな単純な、あとあと人権問題になるような指揮権発動なんてまったく考えてない。それでは、こっちがクビになりますよ。「厳正にやれ」でも効果はあると思いますよ。でも効果をあらしめる方法も考えました。苦労して考え抜いた。
以上である。
■「日本はどうなってしまうのか」
小川が野田首相に会った後、小川の周辺では「土地取引に関して、法相はいずれ刑事告訴される」といった噂が流れていた。5月下旬ごろだ。その点を問うと、小川は「(やましいところは)まったくない。土地取引そのものがない」と否定した。
噂の真偽はともかく、そういう話が飛び交うと、消費税引き上げ問題がヤマ場にさしかかった重大な局面で、問題になりそうな大臣は「予防的に更迭したほうがいい」という話が出てもおかしくない。永田町・霞が関はそういう世界である。
小川はインタビューの最後に「日本はどうなってしまうのか」と真顔で心配した。そして「これからは一議員なので、この問題は国会でこれからも追及する」と言葉に力を込めた。
(文中敬称略)
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◆ 捜査報告書捏造問題 「指揮権発動」発言の真相 小川敏夫前法相直撃インタビュー 『日刊ゲンダイ』6月6日 2012-06-06
「指揮権発動」発言の真相 小川敏夫前法相直撃インタビュー
日刊ゲンダイ2012年6月6日 掲載
「記憶が混同」の言い訳は通用しません
<地に落ちた検察の信頼はこのままでは回復しない>
東京地検特捜部による小沢事件の捜査報告書捏造問題。小川敏夫前法相が4日の退任会見で、突如「指揮権発動」を検討していたことを明らかにし、大騒ぎだ。小沢嫌いの大新聞は「政治介入」と批判的な論調一色だが、「ちょっと待て」だ。このままでは、検察は“捏造検事”を「不起訴処分」にし、組織的犯罪にほおかむりして幕引きを図るつもりなのは間違いない。そうさせないために法的根拠にのっとった“強権発動”は、検察改革に役立つのなら結構なことだ。小川前法相を直撃し、真意を聞いた。
捜査報告書を捏造した田代政弘検事は、「逮捕中のやりとりなどと記憶が混同した」と故意を否定し、検察当局もそれを「合理性がある」と認めようとしている。しかし、小川前法相はそこに疑念があると言う。
「捜査報告書の“架空”部分を見れば、『記憶違い』などあり得ないことは明らかです。石川議員が録音したやりとりと照らし合わせて確認しましたが、まず、捜査報告書では『石川議員が調書を取ることを拒否しているため説得した』としています。が、実際は石川議員は調書を取ることに『分かりました』と答えている。さらに、『検事から“ウソをつくようなことをしたら、選挙民を裏切ることになる”と言われたことが効いた』という実際になかったやりとりは報道でも有名ですが、架空部分はこの一節だけではない。この部分に関わる報告書2ページ以上にわたるやりとりが全て作り話でした。『記憶違い』というのは、どう弁解しようとも通用しません」
この捏造問題については、小沢裁判の1審判決で裁判所も、検察の体質を厳しく批判し、作成経過や理由についての徹底調査を求めている。
「裁判所は(検察)組織の問題だと言ったのです。検察はそれを無視している。そもそも『記憶違い』という前提で捜査を進めること自体が間違い。田代検事が意図的に捏造したという前提でどこまで捜査をやったのか。裁判所の指摘を認めてしまうと大変なことになると、検察は逃げた。これでは地に落ちた検察の信頼は回復せず、国民にソッポを向かれてしまいます」
裁判官、検察官、弁護士の経歴を持つ小川前法相が野田首相に「指揮権発動」を相談したのは5月11日とみられる。その日は了承を得られなかったが、継続して首相を説得するつもりだったという。
「検察が内部の問題で何かかばっていたり、躊躇(ちゅうちょ)しているようであれば、それをやらせるのが法務大臣の役割であり責任です。『指揮権発動』は法相の専権事項。総理の了承がなければ、自分の判断で政治生命をかけてでもヤル気でした。退任会見で明らかにしたのは、問題提起が必要だと思ったからです」
検察は先月中に、田代検事を不起訴にし、「戒告」など行政処分だけでお茶を濁そうとしていた。この問題を少しでも早く闇に葬りたいのだろうが、なかなか処分が決定しないのには小川前法相の存在も関係していたようだ。
「捜査は検察の専権ですが、人事上の処分は法務大臣の権限です。(不起訴と行政処分を)同時にやろうとすれば、僕がOKしなければできなかった。マスコミのリーク情報で『処分は5月末』としていましたが、5月中には出ないワケですよ。今後は、法務委員会で追及していきます。捜査については聞けなくとも、人事上の処分については、どういう不祥事があったのか国会で質問できますからね」
前法相がここまでハッキリ問題を指摘しているのだから、検察は“無傷”で生き延びられるはずがない。新任の滝実法相は、重大に受け止めるべきだ。大臣が交代して、すぐ大甘処分が出たとしたら、滝新法相は完全にナメられていることになる。
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指揮権発言 軽視せずに公正捜査を
中日新聞 社説 2012年6月6日
検事の虚偽捜査報告書の作成問題で、小川敏夫前法相は検事総長への指揮権発動を考えたと公言した。検察は「身内に甘い」との指摘もあり、発言は軽視できない。公正な徹底捜査に務めるべきだ。
検察庁法一四条に定めた法相の指揮権は、検察を民主的に統制する手段である。検察が独断に走り、ファッショ化した場合、それを止めることができない。そのため、国民に選ばれ、信任された内閣の法相にチェックする機能を持たせていると解釈されている。
指揮権は検事総長に対してのみ発動されるが、その法相判断は正当でなければならず、国民が支持しない場合、内閣は命取りになる。実際に指揮権が振るわれたのは、一九五四年の造船疑獄のときだけとされ、内閣は総辞職に追い込まれた。
小川氏が法相退任の会見で問題にしたのは、検事が作成した陸山会事件の虚偽捜査報告書だ。「適当に幕引きすれば、国民の信頼を得られないのではないかと心配した」「指揮権発動を考えたが、野田佳彦首相の了承を得られず、残念だ」などと述べた。
検察捜査は公平公正で、政治に左右されてはならないのは当然だ。法相が捜査の現場を直接指揮できない仕組みになっているのは、政治の側からの不当な圧力を排除するためだ。
それゆえ、法相の指揮権発動は軽々しいものであってはならない。今回、捜査の報告も受けておらず、証拠を見たわけでもない小川氏が、「指揮権」を口にしたのは不適当といえる。不当な圧力に当たりかねないからだ。
ただし、このケースは、虚偽の捜査報告書を作成した検事の刑事処分について、検察当局が捜査中の事件である。身内が身内を調べている。「検察が内部のことについて消極的な場合に、積極的にさせるのは法務大臣の本来の姿ではないか」という小川氏の言葉は、検察組織に対する不信感を表している。自分の発言が、国民の支持を得られるとの政治的発言だろう。検察は常に公正でないと、政治からの介入の口実を与えてしまう。
裁判官や検察官、弁護士の経験を持つ人物の計算した発言としても、検察当局は自らへの戒めとすべきだ。検事や幹部らへの徹底捜査は当然のことだ。「処分が身内に甘い」と国民が受け止めれば、検察審査会で厳しい判定が下されるシステムにもなっている。
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◆ 小川敏夫前法相 検事への捜査徹底のため指揮権検討したものの、首相了承せず/「虚偽」捜査報告で 2012-06-05