原発稼働の是非 東京都民投票条例の制定を求める市民グループ 32万人分署名提出

2012-05-11 | 政治

原発是非の住民投票 都に署名提出
NHK NEWS WEB 5月10日 21時2分
 原発の稼働の是非を問う住民投票を東京で行うことを求めている市民グループが、これまでに集めた32万人余りの署名を、10日、東京都に提出し、住民投票を行うための条例の制定を求めました。
これを受けて、住民投票を行うための条例案が、来月、都議会に提出され、採決が行われることになりました。
 署名を提出したのは、市民グループ「みんなで決めよう『原発』国民投票」です。
 この市民グループは、原発の是非を問う住民投票を東京で行うために、去年12月から都内各地で署名活動を行い、住民投票を行うための条例案を提出するのに必要な、有権者の50分の1を上回る、32万3076人分の署名を集めました。
 10日は市民グループのメンバーが、段ボール箱に入った署名を東京都庁に運び込み、都の担当者に署名が集まったことを示す文書を手渡して、条例の制定を求めました。
 これを受けて東京都は、石原知事の意見を付けて、住民投票を行うための条例案を、来月、都議会に提出し、採決が行われることになりました。
 条例の制定について、石原知事はこれまでに「代案も出さずに原発に反対しているかぎり、センチメントの域を出ない。条例を作るつもりはない」と発言し、住民投票の実施に否定的な考えを示しています。
 都議会の各会派は住民投票の実施について、共産党や地域政党の生活者ネットワーク・みらいが賛成の意向を示しているほかは、態度を決めていませんが、石原知事が否定的な考えを示すなか、条例案は否決される公算が高いという見方が出ています。
 同じような条例案は大阪市議会にも提出されましたが、ことし3月、反対多数で否決されています。
 市民グループは、署名を提出したあと記者会見を開き、グループのメンバーで首都大学東京の宮台真司教授は、「今の日本は、関西電力大飯原子力発電所を巡る混乱に象徴されるよう、原発をやめられない社会になっており、住民投票はこうした社会をやめるために不可欠な手段だと思う。今後は、議会で採決を行う議員に対し、住民投票の意義を説明していきたい」と話しています。
 また、グループのメンバーでジャーナリストの今井一さんは、「私たち自身が都議会議員を訪問するなどして、心を尽くして説明すれば、条例案の賛成に向けて動かすことができるのではないかと考えています」と話しています。
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原発都民投票求め 32万人分署名提出 来月都議会審議
中日新聞2012年5月11日 朝刊
 原発稼働の是非を問う東京都民投票条例の制定を求める市民グループ「みんなで決めよう『原発』国民投票」は十日、地方自治法に基づき、条例制定請求に必要な三十二万三千七十六人分の署名簿を添え、石原慎太郎知事に請求書を提出した。石原知事は、グループが作った条例案に自らの意見を添え、都議会に議決を求める。
 石原知事は住民投票に否定的で、条例制定に反対する意見を付けるとみられる。都議会の民主、自民、公明各会派は態度を明確にしておらず、採否は流動的な情勢。来月五日に開会する見通しの都議会定例会で審議される。
 これまで原発に関し住民投票が実現したのは、新潟県刈羽村など原発立地もしくは計画のあった三自治体で、いずれも原発反対派が勝利している。東京で住民投票条例が成立すれば、脱原発派へ追い風となり、柏崎刈羽原発の再稼働を前提に経営再建計画を進める東京電力や政府に見直しを迫ることになる。
 請求代表者には社会学者の宮台真司さんや漫画家のちばてつやさんらが名前を連ねた。昨年十二月十日からの二カ月間で条例制定の請求に必要な二十一万四千二百六筆(有権者の2%)を上回る約三十四万五千筆の署名を集めた。都内の各区市町村選挙管理委員会で審査し、93・5%が有効と認められた。
 グループは大阪市でも、同様に条例制定を求めたが、橋下徹市長は自らが既に脱原発を進めているとして住民投票の必要性を否定。市議会は三月末に反対多数で否決している。
■役人シナリオけん制を 請求代表者の1人・宮台真司さん
 住民投票条例の目的をひと言で言えば、民主主義の本義を貫徹することです。日本では民主主義は多数決だと理解されているが、これは先進国的には標準を逸脱した考え方です。民主主義の本質は参加と自治です。
 そこで住民投票が非常に意味を持つ。住民投票による決定は、いわゆる世論調査で政策を決定することとは違う。住民投票では、半年後とか一年後の投票に向けて、住民たちが公開討論会やワークショップを開き、自治体や企業にさまざまな情報を公開させ、さまざまな立場の専門家から意見を聞き、最後は非専門家である住民が決める仕組みです。
 医療におけるインフォームドコンセント(十分な説明と同意)とセカンドオピニオンの組み合わせとよく似ています。いろんな医者の話を聞き、最後は患者本人が決める。これと同じです。住民はさまざまな専門家の意見を聞いて最後は住民同士で討議し、意識を高め投票に臨む。従って住民意識あるいは民度は上昇します。民度の上昇、それ自体が重要な目的になります。
 日本では、審議会や有識者会議で専門家の意見を聞いているというが、実は茶番。専門家は研究にお金が必要だから、必ず利権構造の中にいます。従って役人がどういう専門家を人選したかでシナリオは決まる。そして、議員が役人のシナリオ通りに議決してしまう。こういう状況をけん制、許さない仕組みが住民投票とワークショップなどの組み合わせなんです。
・宮台真司さん
 社会学者。首都大学東京教授で、専門は社会システム理論。1959年、仙台市生まれ。東京大大学院博士課程修了。著書に「制服少女たちの選択」「14歳からの社会学」など。
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中日春秋
2012年5月11日
 「行政に従うだけの住民、いわば“従民”意識のままなら、地方自治は根付かない」。かつて市町村合併問題を取材していた時に聞いた言葉が今も頭にこびりついている▼歴史的に刻み込まれたDNAなのか、日本人は「お上意識」をなかなか払拭(ふっしょく)できない。敗戦後、新しい憲法に「主権在民」が定められたのに、現実は「主権在官」の強固な牙城をなかなか崩せないでいる▼首都大学東京教授の宮台真司さんは<任せて文句を言う社会>から<引き受けて考える社会へ>と言い続けてきた社会学者だ。福島第一原発の事故の後は、「原発をやめる」ではなく、「原発をやめられない社会をやめよう」と訴えてきた▼その宮台さんも請求代表者の一人である市民団体がきのう、原発稼働の是非を問う住民投票条例の制定を石原慎太郎東京都知事に請求。署名簿の入った百六十三個の段ボール箱が都庁の中に運び込まれた▼三十二万人もの都民が署名、押印したずっしりと重い署名簿だ。石原知事は条例制定に否定的だが、決めるのは議会だ。署名した人は、来年の都議選も見すえ、議員一人ひとりの態度をよく観察するだろう▼大阪市、東京都に続いて、中部電力浜岡原発を抱える静岡県でも、住民投票条例の制定を求める署名活動が十三日からスタートする。<引き受けて考える社会>に向け、意味ある第一歩になるはずだ。
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